大谷猶子さんインタビュー前編 大谷猶子さんインタビュー前編
離れたからこそ、日本の良さにも悪さにも気づくことができました
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ヘアスタイリストとして活躍しながら、完全予約制のヘアサロンを営む大谷猶子さん。
キャリアを重ねる中で、視野を広げる転機となったニューヨークでの経験。
それは、今日の活動にも大きな影響を及ぼしているといいます。

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大谷猶子さんのサロン

一歩足を踏み入れると、そこが、いわゆる「美容院」に抱く印象とはだいぶ様子が違うことに気がつく。明るく広々とした空間に、カットのための椅子と鏡が2セット。シャンプーチェアも2客がゆったりと肩を並べる。音楽が静かに流れ、またたく間に外の喧騒が遠のいていく。
「ここにいる間だけでも、非日常の時間を過ごしていただけたら」サロンの主である大谷猶子さんは言う。

外の世界を見てみたくて
ニューヨークへ

インタビュー中の大谷猶子さん

実家は、祖父母の代から続く町の理容室。忙しく立ち働く祖父母や両親の姿を間近で見ながら、「なんら迷うことなく」同じ道を志したという。都内の理容室や美容院に勤務した後、目指したのはニューヨーク。20代半ば、メイクアップアーティストであるご主人と結婚したタイミングでの渡米だった。
「目指したというより、なんとなく(笑)はっきりとした理由があったわけではないんです。強いていえば、日本を飛び出して外の世界を見てみたかった、それと、いろいろな髪質を知りたかったからでしょうか」
日本にいれば、触れるのは黒髪、ストレートが基本だけれど、人種の坩堝といわれるニューヨークとなれば、髪の色も質も千差万別。知識を深め、経験を積むには、もってこいの選択だった。とはいえ、伝手も何もなく「とにかく行ってみよう」と二人で移り住んだ彼の地で、大谷さんは、縁あって知己を得たヘアサロンの経営者のもと働くこととなる。

驚きや発見に満ちた
刺激的な日々

美容師のハサミ

「いちばん衝撃を受けたのは、カラーリングです。2000年代初頭でしたから、日本でカラーといえば色みの幅も狭く、白髪をカバーするためくらいの認識でしかなかったと思います。ところがニューヨークでは、そもそも髪の色や肌の色が本当にさまざまで、白髪にしても隠すのではなく生かすという感覚が当たり前。カルチャーショックでした」

日本人とニューヨーカーの髪型に対する意識の違いも新鮮だった。
「雑誌の切り抜きなどをもってくる人はまずいなくて、私が働いていたサロンに来るほとんどの人が『自分らしくやってくれればいいから』というスタンス。私が提案して、話し合いながらつくっていく。ヘアスタイリストとしてリスペクトしてくれるので、やりがいやおもしろさはありましたがハードルは高かったですね」

シャワーの様子

一方で、日本人がいかに細やかさや清潔感を大切にしているかを再認識することも。
「『こんなにちゃんと丁寧に髪を洗ってもらったのは初めて!』と喜んでもらえたり。普通に日本のやり方で洗っているだけですよ。相手をまず思いやる日本人の細やかな仕事を評価してもらえたことがうれしくて、自信にもなりました」

日本の大人の女性は
元気がない?

サロンの様子

3年間ニューヨークで過ごした後、帰国。久しぶりの日本で目にする光景は、何もかもが以前とは違っていたという。
「強く感じたのは、大人の女性が若い人の陰に隠れてしまって元気がないな、ということ。白髪や体型やシワといったマイナスポイントを気にかけるあまり、足りないものを隠したり、埋めたりしようとする意識が強いことにもあらためて驚きました。ニューヨークで私がすごくうれしかったのは、年配の方がとにかく元気で、人生を楽しんでいることだったんですね。髪に関しても『私は私』という感じで極めてポジティブ。最近になってようやく日本でも白髪が素敵なアイコン的な方が増えてきたので、意識が変わりつつあるのかなと感じています。同時に、私たちヘアスタイリストが積極的に提案していくことも必要なんじゃないかと思います」

一度離れたからこその気づき。原点としての日本を見つめ直し、ニューヨークで蓄えた経験を携えて、大谷さんは再び日本で活動を始めた。

撮影/名和真紀子 取材・文/河合映江 
取材日/2018年8月30日

大谷猶子さんインタビュー後編

ヘアスタイリスト

大谷猶子さん
インタビュー後編

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大谷猶子さんプロフィール
PROFILE

大谷猶子(おおたに なおこ)

ヘアスタイリスト、毛髪診断士。都内の理容室、美容院勤務を経て渡米。ニューヨークのヘアサロンで経験を積む。帰国後、雑誌や広告で活躍。現在は「無印良品」のスキンケア、ヘアケアのアドバイザーやワークショップなどを手がけながら、完全予約制のヘアサロン「Hair Orutane」を経営。管理理容師免許、欧米コスメトロジーライセンス、アーユルヴェーダディプロマを取得。日本毛髪科学協会会員。

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