こだわり尽くす暮らしコラム

キッチン空間の
照明計画について考える

2020年03月24日 キッチン空間の照明計画について考える

新築やリフォームをする際、照明についての打ち合わせが行われるのは、工事がずいぶん進んでからということが多いようです。カタログのなかからなんとなくデザインが気に入ったものを選んでしまいがちですが、どんなものを選べばよいのか迷ったという人もいるのではないでしょうか。「照明を選ぶことは空間をデザインすること。また照明は、その空間で過ごす人の気持ちにも影響しているんです」と言うコイズミ照明株式会社あかりエバンジェリストの小篭(こかご)彩子さんに、キッチンの照明の選び方について教えていただきました。

キッチンの照明。
ただ明るければいい
というわけではないんです

少し前までは、日本の住宅照明の役割のほとんどは部屋を明るくすることでした。明るくしたければ照明を付ける、暗くしたければ消す。そのどちらかだったというわけです。ところが最近では、場所によって光を使い分けるという考え方が一般的になっています。例えば、仕事場では物がよく見えて作業がしやすいような照明、レストランでは食事が美味しく見えるような照明、リラクゼーションの場ではゆったりと落ち着いた気分になれるような照明など、住宅以外の照明で当たり前だった、空間や人に合わせた照明を考えることが求められているのです。

これをキッチンに置き換えてみると、キッチンがその家庭のなかでどんな存在かによって必要な照明は変わってきます。例えば、育ち盛りのお子さんがいるなど、料理をテキパキ作るという家庭なら、明るく影の出にくい作業がしやすい照明が優先されるでしょう。共働きのご夫婦で、平日の夜はお酒を飲みながらカウンターでちょっと軽いものをつまむという家庭なら、ゆったりとした気分になれる温かみのある照明のほうが適しているかもしれません。家庭によって、キッチンにどんな照明を選べばいいかはそれぞれだということです。

また、間取りによっても照明の選び方は異なります。最近ではLDKをひとつの空間として設けることが多く、独立型のキッチンはあまり見なくなりました。こうした間取りでは、キッチンからはリビングの照明が、リビングからはキッチンの照明が目に入ります。これまでのように作業がしやすければいいという視点だけで選ぶのではなく、LDKの照明をデザイン的にトータルコーディネートしたいというニーズが増えてきたのです。

キッチンの照明を選ぶ際には、まず、LDKのインテリアをどんなテイストにしたいか、家族がそこでどんな過ごし方をするかを考えてみるところから始めてみましょう。

空間の雰囲気を演出する照明。理想の生活シーンを思い浮かべてみましょう。コイズミ照明株式会社提供。
照明はその空間の雰囲気を演出するひとつの方法です。使いやすいキッチン、過ごしやすいダイニングにするために、理想の生活シーンを思い浮かべてみましょう。
写真提供/コイズミ照明株式会社

キッチンに適した照明器具はこの4つ

照明器具にはさまざまなタイプがありますが、なかでもキッチンに設置するのに適したものを紹介しましょう。このうちのいずれか、もしくはいくつかを組み合わせることで、キッチンを使いやすく、快適な空間にすることができます。

ダウンライト

天井に埋め込んで使うタイプの照明器具で、最近では多くの住宅で用いられています。天井に出っ張りが無くなるため、すっきりとした印象となり、ほこりが溜まりにくいため掃除の手間がかかりません。また、少ない個数で限られた場所だけを浮き上がらせるように照らしたり、個数を増やして広い部屋を明るく照らしたりなど、空間の明るさを自由に設計できます。キッチンには特に眩しさを抑えたダウンライトがおすすめです。

コイズミ照明のコンフォートダウンライト

ダウンライト:天井に埋め込む照明器具でほこりが溜まりにくく空間の明るさを自由に設計できキッチンにもおすすめ。

スポットライト

灯具を動かし必要なところに必要な光を当てることができる照明器具です。最近では、スポットライトを取付けるためのダクトレールがあらかじめ設置されたマンションなどもあるようです。手元をピンポイントで照らす、壁に光を当てて間接照明のように照らす、などの使い方もできます。

スポットライト:手元をピンポイントで照らす、壁に光を当て間接照明のように照らす、など使い方さまざま。

ペンダントライト

コードやチェーンなどで天井から吊り下げるタイプの照明器具です。テーブルペンダントの場合、光源と照らす部分との距離が近いためテーブル面を効果的に照らすことができます。ペンダントライトは最近増えてきたイメージがありますが、昔の和風建築には必ずあった、四角い傘のついたあかりも、ペンダントライトの一種です。

ペンダントライト:天井から吊り下げるタイプ。光源と照らす部分との距離が近くテーブル面を効果的に照らす。
写真提供/コイズミ照明株式会社

キッチンライト

シンク上の天井や壁、またはキッチンの吊戸棚に取り付ける照明器具で、手元をしっかりと照らすのはもちろん、高い位置から広範囲に光がまわり、空間を明るくします。以前は蛍光灯がほとんどでしたが、最近ではLEDタイプのものが増えています。

キッチンライト:シンク上の天井や壁、吊戸棚に取り付ける照明器具。最近ではLEDタイプも。
写真提供/コイズミ照明株式会社

調理スペースでは
手元に影ができないように
灯を配置するのがポイント

では具体的に、どういった照明をどのように配置すれば良いのか、基本的な考え方をご紹介します。

例えば調理スペースで最も大切なのは、手元の明るさを充分確保することです。材料を切ったり、火を使ったりする際に手元が見えづらければケガをする危険性があります。また、食材が傷んでいないかを確かめたり、調味料が適量かなどを見極める必要もあります。そのため、ダウンライトやキッチンライトなどのベースとなる照明のほかに、手元に影を作らないようにスポットライトやペンダントライトなどを追加するのがおすすめです。壁付けのキッチンであれば、壁か吊戸棚の下などにキッチンライトをつけるといいでしょう。

また、調理の作業性を重視するなら、昼白色などの白っぽい色の照明がおすすめです。素材の色が正確に見え、細かい作業がしやすくなります。

ダイニングスペースは、
家族がリラックスできる雰囲気を演出

一方、ダイニングスペースでは、ゆったりと食事や会話を楽しめるような雰囲気づくりが求められます。人気があるのは、やわらかい光が広がるペンダントライト。4人掛け程度の大きさのダイニングテーブルなら中央の天井に大きなものを一つ吊るせば充分明るさはまかなえますが、ダイニングテーブルが広い場合や、照明をインテリアのひとつとして活用したい場合には小さめのペンダントライトをいくつか吊るしてみてはいかがでしょうか。

ひとつ注意したいのが、ペンダントライトのコードの長さ。必ずダイニングテーブルに座って、光源が直接目に入らない位置を確認してから設置するようにしましょう。高く吊ったほうが眩しくないだろうと考える方も多いのですが、照明器具によっては実は高く吊りすぎて眩しいということもあります。

照明の色は温かみのあるオレンジ色っぽい電球色がおすすめです。料理が美味しそうに見えるだけでなく、リラックスできる空間になります。

あらかじめさまざまなシーンを
想定することで、もっと快適な照明に

調理中は確かに明るくしておきたい調理スペースですが、食事中も明々と灯っている必要はありません。例えば、LDKの照明を場所ごとにオン・オフのスイッチを分けておき、必要がない部分はこまめに消せるようにすると、いつでもちょうどいい明るさに調整できます。

また、ダイニングスペースは食事以外に使われることもあります。小さなお子さんがいらっしゃるご家庭なら、宿題をしたりお絵かきや工作をするスペースとしても活用されるのではないでしょうか。そんな時は自然光に近い光で手元を明るく照らしてあげたいものです。調光・調色機能のついたLED照明なら、明るさや色を変えることができるので、子どもが宿題をする時には昼光色や昼白色で、食事をする時には電球色で、と同じスペースを用途に適した環境にすることができます。朝食を食べる際には昼白色でシャキッと目を覚まし、夕食を食べる際には電球色でくつろぎを演出、といったように時間に応じた環境を作ることもできますよ。

最近では、スマートフォンやスマートスピーカーなどを使って、照明のオン・オフや明るさ、色などを調節できるシステムも登場しています。リフォームの際などに検討してみてはいかがでしょうか。

明るさや色を変えられる調光・調色機能のついたLED照明なら、どんな時間も快適に過ごせる空間に。
明るさや色を変えられる調光・調色機能のついたLED照明なら、どんな時間も快適に過ごせる空間になります

もっと自由に!
我が家の個性を出す照明プランを
考えてみましょう

照明をちょっと工夫することで、より我が家らしいキッチンを演出することもできます。

ペンダントライトをおしゃれに“魅せる”多灯使い。

複数のペンダントライトを設置する際、あえて形や色の違うものを組み合わせるのが、最近のトレンドです。デザインは揃えて色違いでコーディネートする、もしくは素材を揃えて形にバリエーションを出すなど、どこかに統一感を持たせると洗練された印象になります。逆に思い切り冒険したいなら、まったく違うテイストのものを自由に吊るしてもOK。世界でひとつだけのユニークな演出になります。

ライフスタイルとインテリアに合わせたスタイリング(コイズミ照明)

多灯使いの基本はどこかひとつ共通項をつくるとまとまりやすい。写真提供/コイズミ照明株式会社
多灯使いの基本はどこかひとつ共通項をつくるとまとまりやすくなりますが、あえて “はずし”て、自由に組み合わせるのも面白いものです。
写真提供/コイズミ照明株式会社

間接照明を活かして
キッチン〜リビングの空間に奥行きを

日本ではまだあまり設置されることが多くない間接照明ですが、上手に利用すると空間に奥行きが出て部屋が広く見えます。例えば、対面キッチンからダイニング、リビングが一続きになった直線型LDKの場合、キッチンの一番遠いリビングの壁の床近くに、間接照明があるのが理想的。天井や壁に組み込む方式の照明は新築時やリフォーム時でないと難しいのですが、スタンドやクリップライトなら手軽に設置できます。テレビボードなど、家具の後ろに隠すように設置すれば、作り付けの間接照明のような雰囲気を出すことも可能です。


照明によって表情が変わる、
リシェルSIの新色
「ラパートトープ」

照明を家具や什器との相性で選ぶという考え方もあります。例えば、キッチンのワークトップを引き立てる照明を選ぶのはいかがでしょう。

リシェルSIのセラミックトップの新色「ラパートトープ」は、シャンパンの泡を彷彿させる上質でエレガントな輝きが特長です。透明釉を載せてできた凹凸の一部を磨くことで、研磨面による正反射した光と傾斜部による乱反射した光の両立を実現。照明の光がラパートトープのセラミックトップに当たると、キラキラと美しく光ります。キッチンに立っている時はもちろん、リビングから見ても角度や光のニュアンスによって煌めきが変化し、さまざまな表情を楽しむことができます。

この煌めきをより引き出してくれるのは、ダウンライトやスポットライトのように、一定の範囲をダイレクトに照らしてくれる照明。オープンキッチンならペンダントライトを加えてもいいでしょう。拡散されたやわらかな光がセラミックトップに降り注ぎ、一瞬ごとに移ろう光は、キッチンで過ごす時間を心豊かなものにしてくれます。

コイズミ照明ペンダントAP47557Lの柔らかな光が、セラミックトップ「ラパートトープ」に反射しキラキラと煌めく。
コイズミ照明ペンダントAP47557Lの柔らかな光が、セラミックトップ「ラパートトープ」に反射してキラキラと煌めきます。
Human Fit technology
Living Fit design