CASE 04子育てファミリー向け賃貸住宅「エスタシオン犬山」愛知県犬山市 思い出になる家 EIGHT DESIGN

RICHELLE PLAT システムキッチン|リシェル

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0 - 6歳までの
子育てをここで

国宝「犬山城」の城下町として、昔ながらの風情ある街並みがのこる名古屋鉄道犬山駅。ここに名古屋に縁のある3つの地元企業が協力し、個性的なリノベーション賃貸住宅「SUMU INUYAMA」を完成させたのは2017年の3月のことでした。リノベーションの舞台となったのは、犬山駅直結のビル。この空間を名古屋のリノベーションデザイン集団「EIGHT DESIGN」が大胆にリノベーションし、明確な住み手のイメージのもとに、他に類をみない賃貸住宅へと生まれ変わらせました。今回取材で訪れたのは3階部分の「0 to 6」というフロア。名前の通り、0歳から6歳までのお子さんをもつファミリー向けの物件です。名古屋から電車で30分ほどの犬山市は、週末には観光客が訪れ賑わいを見せる反面、実は統計的に若い人たちが年々減っている場所。EIGHT DESIGNの伊藤さんは、駅の真上に若い人々にとって住みごたえのある家をつくることで、駅を中心とした新しいコミュニティが生まれるのではと期待しています。

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キッチンから
見えるのは

「0歳から6歳の子育てファミリーのための家」を依頼されたEIGHT DESIGN。まず耳を傾けたのは、最も家にいる時間が長いお母さん達の声でした。地元の子育て雑誌「teniteo」の読者にアンケートを行い、リアルなお母さん達の声を探りながら3つのプランを作成。例えば、好奇心旺盛な子供たちは動きも自由で、片時も目を離せないもの。そこで0歳から幼児を持つファミリー向けの「ハイハイグラウンドのあるおうち」には、小さな子どもを安心して遊ばせておける柵のついたプレイスペースを、また少し成長した兄弟向けの部屋には73m²ほどの住居に「芝生マウンテン」や「すべり台ハウス」など、アスレチック気分の立体的で楽しいキッズスペースを設けました。このように、お母さんたちの意見が多かった「キッチンから子供の遊びスペースが見えると安心」という要望を叶え、ちょうどキッチンのワークトップの対面に遊び場を設けることで、子どもを見守りながら、キッチンで料理をしたり、後片付けができる間取りが生まれました。

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賃貸だから
思いきり

「実は、賃貸住宅はいい意味で気楽なんですよ。ずっと住む場所であれば躊躇してしまうような斬新なプランでも、限られた時間に住む場所だからこそ、思い切って楽しめるはずなんです」。とEIGHT DESIGNの伊藤さん。犬山市がある愛知県に暮らす家族は、子どもが小さなうちは賃貸住宅や実家で過ごし、小学校に入学するタイミングで家を持つことが多いのだとか。小さな子ども達にとって家は世界のすべて。「住んで遊んで楽しかった、という記憶に残る家」というコンセプトを頭の片隅に置きながら、長く住む家では実現できないような今までにないプランから考えていきました。家に入ると目に飛び込んでくるのは、普通の家ではまず目にすることのない、緑色の人口芝の絨毯や、大きな山。たくさん遊んで成長したら次の子どもたちにバトンタッチして、その子どもたちもそこでひとときを過ごす。親と子どもが一番長くいっしょにいられる限られた時間だからこそ、鮮やかな記憶を残してあげたいという思いが随所に感じられます。

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お母さんの目線で
動いてみる

プレイスペース以外にも、EIGHT DESIGNの目配りは光ります。例えば玄関ドアの外にある小指ほどの小さなフック。傘をかける場所にも、新聞を置く場所にも見えますが、実はお子さんをだっこしながら鍵をあけるときに、手に持っている荷物をちょっと掛けておく場所なのだとか。お母さんは何かと荷物が多いもの。右手で子どもをだっこして、左手で買い物袋をもって、鍵を探して、開けなければならない。そんな時にフックがひとつあれば、動きがぐんと楽になります。「それから全室に共通させたのは、大きな土間があることですね。ベビーカーや三輪車を置けるようなスペースになっています。ちょっと腰掛けるようなベンチ収納も玄関についていることで、子供に靴をはかせたり、荷物を置いたりすることもできます」。収納にも独特の気配りが。小さな子どもがコード類を触って事故にならないように、テレビの下についていることが多いAVラックを子どもの手の届かないテレビの上部につけました。空間を壁ではなく厚手のカーテンで仕切っているのにも、理由があります。「子どもが小さいうちは開放的な空間で家族がひとつになって暮らしたいという方が多いんです。一般的な間仕切りを立てていくと、ここまで開放的にはならないと思います」。まるで迷路のような間取りも、動線を多くすることで、子どもたちがのびのび暮らせるようにした配慮です。

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実は、あれが
必要でした

もともと学習塾だった建物。3.5mの高い天井が開放的ですが構造上、ベランダをつくることができませんでした。その代わりに各部屋に設けたのが広々としたインナーバルコニー。近年、花粉やPM2.5が気になり、外で洗濯を干さない人が逆に増えているとのこと。インナーバルコニーは、浴室や収納に行き来しやすい場所に配置しています。そしてもう一つ特徴的な配慮が。「子育て家庭の声を聞くと、子どもが小さなうちはベッドではなく、ふとんをしいて家族で川の字になって寝るという声が多いんです」。各室に布団が簡単にしまえる、奥行きの広い収納をつくったのはこういった理由から。「昔の日本の家では、普通に押入がありましたが、いまの日本の家はベッド生活になっているのでウォークインクローゼットやクローゼットはあっても、奥行きの深い収納というのがなかなかなかったんです。みなさんふとんを三つ折りにしたり、ベッドの下を使ったりと工夫をされているようですが、こちらでは自然にふとんをしまえる収納をつけることになりました」。

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部品としても
機能十分

「SUMU INUYAMA」は、名古屋近郊に縁のある地元企業が力をあわせて犬山を盛り上げよう、という思いがこもったプロジェクトです。ちなみにLIXILの前身の一つであるINAXは、愛知の伝統工芸・常滑焼の陶工からスタートしている会社。そういったご縁もあり「0 to 6」では、7室でLIXILのキッチン「リシェルPLAT」を使用することになりました。「せっかく地元企業とコラボレーションするので、EIGHT DESIGNが考えるかたちで工夫させてもらいました」と伊藤さん。ある部屋ではキッチンに子どもの進入禁止柵を取りつけたり、ある部屋では板をつけて小さなカウンターをつくるなど、一手間を加えることで空間によりなじむ形に進化させています。「これはリシェルPLATのよい部分だと思うのですが、可動式のテーブルと組み合わせても木材との親和性があるからしっくりくるんです」。EIGHT DESIGNでは業務用のキッチンや、施主の要望に合わせてキッチンをデザインすることも多いのだとか。「そういった意味でも、リシェルPLATは使いやすかったですね。木の面があるので、ああいう空間にもなじむのかもしれません。ラフな感じが、インダストリアルな空間に合っています」。何より大切にされているという使い勝手の面でも「使いやすいです。天板も引き出しも、機能もなかなかよいと思います」とお話くださいました。

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年月は味わいになる

「5年たって、10年たったときに、この家に住んでよかったなあと思える家が一番いい家」というのがEIGHT DESIGNの考え。今回は賃貸住宅ということもあり、今後いろいろな人が住み継いだ時に大きなメンテナンスが必要ない人工木材を使用しました。「とてもメンテナンス性がよくて、汚れても気にならないし、むしろ床は土足でも大丈夫。お子さんって壁を汚しますよね。当たり前のように汚れて、それでいいんです。気にならないような自然の材料を採用していますし、それも含めて味というか。普通の家だと汚れが取りたくなるんです。でもうちの素材は取りたくならない」とのこと。伊藤さんいわく、日本の8割以上の家では5年、10年と経ち壁に汚れが出てくると、張り替えないといけないという感覚になるのだといいます。「新品の建材をつかわれる家がほとんどだと思うのですが、僕たちは経年変化を楽しんだり、汚れも含めて、使えばつかうほどよくなる家を目指しています」。

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10年後の
お楽しみ

大人が手を広げても余るほど広々とした廊下の中央部分には、子供たちを遊ばせられるプレイスペースが。そこにはなんと電車の運転席が再現されています。もちろん部品は本物。名古屋鉄道らしい贅沢な遊び場です。「ワンフロア7世帯のお母さんたちが、靴箱の収納に座って井戸端会議ができるようにしました。賃貸住宅だと一人で子育てする方や、子供の足音や鳴き声を遠慮するのが普通なんですが、ここは、もともとお互い様というのが前提です」。同じような家族構成の世帯を集めることで、コミュニティをつくれれば根本的に「子育てしやすい家」になるのでは、という発想から考えたプランでした。お母さんだけでなく、子供の気持ちも日々研究しているEIGHT DESIGN。実は家の中の遊戯も自分たちで運営しているカフェのキッズスペースを参考にしています。「子どもってせまいところとか、高いところとか、こもれるところが大好きなんですよね」。ここで育つ子どもたちには、どんな感性や感覚が育まれるのでしょうか。この家が、この先いくつもの家族の鮮やかな記憶となり、子育ての楽しい思い出が育まれることを期待してやみません。

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TYPE 1

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TYPE 3

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TYPE 2
伊藤 太一
伊藤 太一(いとう たいち)
チーフディレクター/常務取締役
 
エイトデザイン株式会社
2010年に設立。リノベーションを専門とする名古屋のデザイン事務所。本社を鶴舞に置く。名古屋、尾張、西三河を中心に活動。住宅およびオフィス、商業空間など幅広い活動を行っている。
豊富なアイデアとや高い企画力に定評がある。カフェやインテリアショップなど、ライフスタイル提案を様々な活動から行う。住宅の不動産購入から設計、現場監理までを一貫して行い、他にもグラフィック&ウェブデザイン、インテリアコーディネートまで自前のスタッフで構成。得意分野の違うスタッフがチームを組み、「楽しい」をテーマに住まいづくりを行っている。
 
http://eightdesign.jp/

RICHELLE PLATが
2016年度グッドデザイン賞を受賞しました。

『キッチンを単なる「調理の機械」ではなく「空間」としてとらえた新しい住まいのプラットフォーム』というコンセプト、それを実現する丁寧なディティール、周到な素材選択、優しい表情や手触りなどが高く評価され、受賞につながりました。また、キッチンと素材やモジュールが統一されたリビング収納など、LDK全体をトータルに構成できる仕組みも認められています。

グッドデザイン賞受賞概要はこちら