CASE 01H邸 東京都杉並区 変化の家 建築家 永山祐子

RICHELLE SI システムキッチン|リシェル

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未来に備えた一室空間

ご主人(50代): 会社員
奥様(40代): 会社員

このマンションに一目惚れだった、というHさん。都心とは思えない広い空間と眺望、そして開放的な屋上テラスに惹かれ、フルリノベーションを決めました。もともとはマンションのオーナーの住戸として使われていた築43年、180㎡の広いメゾネット住居。リノベーションする際には、自宅でも仕事ができるようにと1階をワーキングスペースと将来の主寝室に、2階(120㎡)をフラットな自宅にしました。子どもが小さいうちは2階で家族4人が一緒に寝るのだといいます。仕切りを極力無くし、子どもの成長と未来の暮らしの変化に対応しやすいように備えた家です。

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素材と色がつくるもの

繊細な色と素材の組み合わせが印象的なH邸。「白い色は好きですが、家の素材としては眩しすぎるので明度を落としたグレー系の色にしたかったんです」とHさん。壁や柱はモルタル仕上げ、天井は木毛セメント板をモルタルの色に合わせて着色し、一部の壁は解体時の仕上げをそのまま残しました。天井をすっきりとした面として見せたかったので、天井面には凹凸となる照明はできるだけ付けず、代わりに梁にアッパーの照明や配線ダクトを取り付けました。色と同時に、素材感にも目を配ったのだといいます。10.3mの長い窓際のカウンターと床はタモ材。ダイニングテーブルにはオーク材。そして中でも目を惹くのが、リビングと寝室の仕切りの建具に使われた木。北海道産のシナ材の淡い木目を斜めに貼りあわせた素材で、無機質な空間にふんわりと柔らかな風合いを与えています。モノトーンのやさしい光の一室に、少しずつ色や木目の違いの樹種を貼り合わせていくことで、すっきりしていながらどこか手触りのある住まいになりました。部屋の真ん中に悠々と置かれた大きなソファは、スペインのSANCAL(サンカル)のもの。グレーのファブリックは、デンマークのテキスタイルメーカーKVADRAT(クヴァドラ)で選びました。摩耗をあしらった古い布地模様は、イタリアで活躍するインテリアデザイナー、パトリシア・ウルキオラのデザイン。ソファなどのファブリックは、子どもが小さいうちは汚しても目立たないような色が前提。それを満たしながら、この存在感と質感がとても心地よく、購入を決めました。

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すくない時間を、
どう楽しむか。

ご自身もフルタイムで仕事をしているHさんの奥様。1回の食事にかけられる時間は30分から40分だといいます。調理に集中できるように、シンクとコンロは壁側に。逆に配膳カウンターには準備をしながら家族と会話ができるよう、アイランド型を選びました。効率と家族とのコミュニケーションを同時に叶える配置を考え、このかたちにたどり着いたのだといいます。
収納は、キッチンキャビネットの他には壁に1枚の棚があるだけ。主に調理器具や食器はキッチン本体の中に収められています。それでも「収納量は十分」と奥様。「シンク下の収納は本当に使い勝手がいいんです。パッと取り出せパッとしまえるこの収納のおかげでキッチンの整理整頓は簡単です」とのこと。もう一つのお気に入りは、黒いセラミックのカウンタートップ。多少手荒く使っても傷がつかない硬い素材で、熱い鍋やフライパンもそのまま置くことができます。マットな黒色がH邸の雰囲気によく合っており、扉の面材にレオを使用することで、他の仕上げとのコントラストが生まれていました。キッチン自体の使い勝手もよいようで「自動で火加減や時間を調整してくれるコンロや、セットするだけで揚げ物が簡単にできるフライヤーに助けられています。短時間で作らなければならないので、最新電気調理機器も駆使して効率よく、手早くができることがうれしいんです」とお話しくださいました。

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つながって、隠れて

H邸では贅沢といえるほど大きな空間を、仕切りをつくらずに使っています。それには忙しいご夫妻ならではの考えが。「子どもが大きくなるまでは、寝室も家族一緒の一室空間にするつもりです。子どもたちには、いつもお母さんの気配を感じて安心して遊んだり眠ったりしてほしいんです。いっしょにいられる時間が少ないからこそ、家族と過ごす貴重な時間をなるべくお互いの気配を感じていられたらいいですね」。キッチンにはさらに目配りが。一室空間のH邸は、部屋中が一目で見渡せるものの、キッチンの前だけには大きな柱があり、そこに冷蔵庫や収納スペースがうまく隠されています。設計者の永山さんは、キッチンはオープンでも、ダイニングやリビングから作業をしている場所が見えるのでは落ち着かないと言います。作業スペースを小分けにして存在感を消しながらも開放的なキッチンを作るように心がけたそうです。

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「はじまりかた」と
「終わりかた」

住宅から大きな建物までたくさんの設計を手がける永山さん。いつもはじめの出会いと終わりの引き渡しを大切にしているといいます。「はじまり」とは単に要望を聞くのでなく、クライアントの暮らしぶりをよく聞き、何を作りたいかを一緒に考えていくというプロセスを大事にすること。プロジェクトごとにテーマを見出し解決していきます。引き渡しで終わるのではなく、引き渡した後も有効に使われるように、住宅以外ではその運営方法や活用の仕方を提案することもあります。住宅では住み始めてからの間取りの変更やリノベーションにも対応できるようなクライアントとの関係性をつくるように、「終わりかた」を大事にしています。今回のH邸は、クライアントの要望を実現しながらも空間の要素を極力単純にし、そして素材を丁寧に施主と一緒に選んでいきました。特徴的な長い水平窓と長いカウンター、そこから見える大パノラマ、クライアントが一目で気にいったこの場所がより魅力を増すように演出されています。子供が育ち、ライフステージの変化のたびに永山さんの手が加えられる日がくることでしょう。暮らしは変わっていくもの。その変化に対応していくために出来るだけシンプルに作ることを心がけています。

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1F 2F

1F
50.0m²
9.4m × 8.0m
2F
約110.0m²
14.0m × 8.6m
新築
設計:永山祐子
永山祐子photo: miki chishaki
永山祐子
1975 東京都生まれ
1998 昭和女子大学生活科学部生活環境学科卒業
2002 青木淳建築計画事務所退職
2002 永山祐子建築設計設立
2006 東京理科大学非常勤講師
2007 京都精華大学非常勤講師
2008 昭和女子大学非常勤講師
2009 お茶の水女子大学非常勤講師
2010 名古屋工業大学非常勤講師
受賞
2004 中之島新線駅企画デザインコンペ優秀賞
2005 つくば田園都市コンセプト住宅コンペ2位
2005 JCD デザイン賞 2005奨励賞「ルイ・ヴィトン京都大丸」
2005 ロレアル 色と科学と芸術賞 奨励賞「Kaleidoscope Real」
2006 AR Awards Highly commended賞「a hill on a house」
2007 ベスト デビュタント賞(MFU)建築部門受賞
2012 Architectural Record Design Vanguard Architects 2012
2014 日本建築家協会 JIA新人賞受賞