CASE 02藩邸 東京都渋谷区 自然体の家 建築家 海野健三

RICHELLE SI システムキッチン|リシェル

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その名も
「ノンブローハウス」。

ご主人(40代): ヘアースタイリスト
奥様(40代): 専業主婦

この家の名前は「ノンブローハウス」。施主である藩さんの話から連想し、建築家の海野さんが名付けました。藩さんの職業はヘアースタイリスト。お客さんが美容室から帰ってからも、ブローをしなくてもかたちが自然に決まるように、むしろ時間が経ってからの方がより良くなっていくようにと考えながら、髪を預かっています。建築家の海野さんは、そんな藩さんの姿勢に共感。またこの家もそういう存在でありたいと願い「ノンブローハウス」と名前を付けました。
海野さんは、図面を引くだけでなく、自らが施工まで手がける建築家として知られています。今では年齢も上がり、自ら施工をすることは少なくなりましたが、気心の知れた工務店や大工さんとチームを組んで現場を仕上げるなど、ものづくりの姿勢は変わってはいません。藩さんと海野さんがお互いの仕事の仕方に共感し、家づくりが始まりました。

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素のままの素材を
使いたい。

ヘアースタイリストと建築家。活躍する分野は違いますが、「素材」に対する姿勢は一致しているという二人。髪型を考える上では、お客さんの顔のかたち、髪の質や状態を生かすことが何より大切だという藩さん。一方建築家の海野さんは、建築を進める時には木、石、鉄それぞれの持ち味を生かし、できるだけ素の状態で使うこと、さらには時間がたつほどに深みを増していけるように細かく気を配るといいます。コンクリート打ち放しの床、塗装しない鉄の壁や手すり、木肌そのままの壁などを使用するのはそうした考えから。また今回は、外壁の仕上げに一つ楽しみを込めました。藩家の外壁は、通常の外壁の上に隙間をあけ、ステンレスの網をはり、その間に砂利を埋める構造。壁全体をほどよく湿らせコケを生やそうという計画です。時を経るごとに味わいが深くなっていくように、住み始めてからがより美しくなっていくことを考えた海野さんの工夫です。すでに何度か実験している手法とのことですが、緑と砂利で遮熱効果を高める狙いも。下記の写真はまだコケがない状態ですが、時間とともにこの家が緑のコケに覆われていく様子を藩さんご一家も今から楽しみにしています。

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仕切りのない家。

特徴的な3層のフロアからなる「ノンブローハウス」。玄関があり、それ以外がピロティーになっている1階。2階には、大きなリビング、ダイニング、子供用のリビング、そして小さな子供の寝室が2つ設けられています。子供たちの寝室を最小限の大きさにとどめたのは、普段は広い空間の中で自分の居場所を見つけ、目の届く場所で過ごしてもらいたいから。3階のお風呂の前には、濡れても使える素材の畳が6枚敷かれた広いスペースを設け、寝転んだり、くつろいだり、またお風呂の中から眺めるだけでも気持ちが豊かになる空間をつくりました。1階から3階は、ゆるやかにつながっています。

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家の真ん中に
キッチンを置く。

「ノンブローハウス」の中心はキッチン。料理好きの奥様はキッチンにいる時間が長く、外のテラスが眺められる一番良い場所にキッチンを設えました。料理をしていても家族の様子が見渡せる配置は、子供達が部屋から出てそれぞれが好きな場所にいながらも、お互いの気配を感じて暮らせるようにするため。奥様は整理整頓上手で、リシェル SIのシンク下の収納システムに見事に調理道具が収まっています。

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リシェル SIを
見てみると。

できるだけ現場でものをつくりたいという海野さん。普段、既製品の部材はできるだけ使わないと決めています。しかし今回は「キッチンは機能性を最優先したい」という藩さんの奥様のご希望もあり、リシェル SIを採用することになりました。キッチンを家具のようにプロダクトとして捉え、空間の中に対峙させてみたかったのだとか。「リシェル SIのセラミックトップは、いかにも工業製品という風合いではなく、素材感のあるテクスチャー」という海野さん。セラミックにはステンレスや人工大理石のような工業製品とは少し違う「焼き物」の手触りがあり、「素」の素材でつくられた力強い空間に、リシェル SIはうまく対峙しています。機能面、空間面から奥様からは大変好評を得られています。

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次のある家。

この家はどこもまだ完成していないようにも見え、それが次の何かにつながる余地を感じさせます。すべてが完結するのでなく、空間も素材も、そして間取りも、時代とともに移ろいでいくための余白。時間が経ってこの家がどのように変化していくのか、今からとても楽しみです。

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素直でありたい。

海野さんは家を考える時、敷地の条件になるべく素直に建築を作っていきたいといいます。光や風、外の景色などを配慮し、無理をしないで、自然と浮き上がっていく形を探していくのだそうです。「素直な建築」、「飾らない建築」、「おおらかな建築」。建築の形態や空間を劇的なものにしていくのでなく、あくまでも素直に、素材の特徴を生かし、自然体のかたちを模索していきます。しかし自然体とは「容易な」とは違います。その自然体の建築を実現するために、空間の使われ方はもちろん、素材選びやディテールの追及には時間を惜しみません。海野さんは「建築は自分の生き方の投影である」といいます。自分がそうであるように便利なものを求めない、機能的であることを追及しすぎず、現場でつくっていくことに注力するのです。「機能的なことは必要、でもそこを重視しすぎては元々の『らしさ』がなくなってしまう」。また完成されすぎないことで得られる、大らかさ、気持ちよさを大切にしています。

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1F 2F

1F 11.5m²
2F 85.4m²
3F 48.52m²
合計 145.42m²
敷地面積 147.8m²
設計:海野健三

3F

海野健三photo: miki chishaki
海野健三( うんの けんぞう )
1949年生まれ
東京都出身
東京理科大学 工学部 建築学科卒
1980年 海建築家工房設立
著書
ローコスト住宅のつくり方 彰国社刊