Chap1 《箱の家》をつくり続けて

1995年に都内に建てた個人邸を皮切りに、150戸を越える《箱の家》を設計してきました。当初はシリーズ化などは全く考えず、最初の《箱の家001》も厳しい予算内でクライアントの要望をかなえるために導き出した特殊解でした。初めて模型を見せたときは半ば唖然とされたものです。それが、竣工して雑誌に掲載されると、立て続けに「我が家も《箱の家》で」という依頼が相次ぎ、今日まで続く住宅シリーズになったのです。

《箱の家》

《箱の家153》外観。
向かって左の西側から、子供部屋、書斎、リビング・ダイニング・キッチン、寝室が並ぶ。
《箱の家》の特長である奥行き約1.8mのひさしは、夏の日差しを遮り、冬は光と熱を室内の奥まで届ける。

家族構成や敷地条件によって形状は異なりますが、高性能、省エネルギー、メンテナンスフリー、フレシキブルに使える一室空間といったコンセプトは一貫して変わりません。南に大きく開口部をとってひさしが深いのも特徴です。構造や断熱を見直したり、最新の技術や工業製品を取り入れながら進化を続け、幼稚園や工場といった大きな「箱」にもこのコンセプトを応用しています。

昨年の暮れに竣工した《箱の家153》は、500m2強の敷地の北半分を占める横長の平屋です。南を向いた4部屋は書斎を除いて扉を取り付けていません。効率的かつ各室平等に室温を管理できるかがカギとなりました。

Chap2 自然のエネルギーを利用して暮らす”

h=2430の特注引違い窓の上端から逆算した天井高となっている。

夏はできるだけクーラーを使わずに過ごしたいというクライアントからの希望もあり、リビング・ダイニング北側の高所に自然通風用の窓を設けています。南側の開口部とあわせて開ければ、暖気が自然に抜けていくという、《箱の家》でよく使っている断面です。水の熱容量を利用したアクアレイヤーによる冷暖房も《箱の家020》から採用しています。

アクアレイヤーとは、根太の間に水道水を充てんしたパック(袋)を敷き込み、中の水に蓄冷・蓄熱することで床下から家全体を空調するシステムです。水1gを1℃上げるために必要な熱量は1カロリーですが、これはコンクリートの約3倍という数値です。比熱が大きい水は自然に対流して熱を分散させるので、理想的な蓄熱・蓄冷材になるのです。《箱の家153》では子供部屋からリビングを横断して寝室まで、最長で18mのパックを敷き込みました。総貯水量は4.2t、非常時は飲み水としても使えます。

Chap3 最新の床下空調システムを支える『サーモスX』

集中できるように小さい窓とした書斎。

今回の《箱の家》では、このアクアレイヤーに床下空調を組み合わせた冷暖房システムに挑戦しています。アクアレイヤーとコンクリート基礎の間には、約40cmの空気層を設けてあり、このなかに、家の両端に設置した空調機から冬であれば暖気を送りこみ、アクアレイヤーと基礎スラブの両面に蓄熱します。空気は外周の床の隅のスリットから吹き出し、足もとからじわじわと暖まります。夏はこの逆で蓄冷する仕組みです。

このシステムを最も効率よく稼働させるために採用したのが、
高性能ハイブリッド窓『サーモスX』でした。先の鼎談「建築家と住宅の窓を考える(前後編)」でも触れましたが、Q値に換算される住宅の断熱性能は、ほとんど開口部のスペックで決まるからです。前述の通気用高窓は『サーモスII-H』ですが、それ以外の開口部全てに 高性能ハイブリッド窓『サーモスX』を取り付けています。

Chap4 熱を採り込み、逃がさないLIXILの高性能窓

勝手口ドアのガラスも複層Low-Eだが、ここのみ乳白色のシートを貼って目隠しに。

冬の日射を床下のアクアレイヤーに蓄熱させるダイレクトゲインも大きな熱容量になりますので、ガラスの色にもこだわりました。南面の引違い窓のLow-E複層ガラスは、赤外線の放射による輻射熱を採り込めるクリア×クリア、通風用高窓を含むその他の開口部は、室内の熱を逃がさないように外側の片面をグリーンで指定しました。
成果は上々。引き渡しの2日前、深夜電力を利用して30℃の暖気を一晩かけて送風、明けて快晴の昼間に計測したところ、床、壁、天井の表面温度は28℃。晴れた日には暑く感じるくらいで、雪が降った日でもご一家は快適にお過ごしとのことです。

設計
: 難波和彦+界工作舎
URL
http://www.kai-workshop.com/
採用窓商品
サーモスX
高性能樹脂窓 エルスターX LIXILの最先端テクノロジーを結集し、世界トップクラスの断熱性能を実現
高性能ハイブリッド窓 サーモスX ハイブリッド窓で樹脂窓同等の断熱性能を実現。