interview

最優秀賞 早稲田大学「町まとう家」

コンペへの思い

私は震災のとき、RC3階建てのマンションの2階にいたので、揺れはそれほど感じませんでした。しかし、揺れが収まり外を見てみると、それはひどい状態でショックを受けました。まさか震度5強程度の地震で、町が止まるとは思ってもいなかったのです。

それまでの自分が、いかに脆弱なシステムの上で暮らしていて、それに甘えていたのかを思い知りました。今、世界各地で異常気象が起こり、日本では周辺の国との緊張関係も見られます。今後不測の事態が起きるかもしれません。もう、これまで「当たり前」だと思っていたことに、デザインが乗っかっていてはいけないのだと痛切に思いました。

建築というのは、未来や、そこを使ういろんな人たちの共通の夢をつくれるものだと私は信じています。本質的なデザインをきちんとつくろうと決意しました。

町まとう家のコンセプト

被災後の新しい家づくりを考えたとき、できるだけ身の回りにあるものでつくりたいと思いました。海外から輸入したり、どこかから調達するのではなく、今あるもので、今あるもの以上の豊かさが得られないかと考えたのです。今回の町まとう家では、大樹町を象徴する「牧草」に着目しました。牧草を乾燥させ、その発酵熱を利用して家を暖めます。この提案が評価され、最優秀賞をいただきましたが、このあとが試練の連続でした。

まず、牧草を発酵させると自然発火することがわかったのです。牧草を発酵させるというアイディア自体が白紙に戻りかけました。なんとか自然発火せずに安全に牧草を発酵させられないか、模索の日々でした。世界中の論文を読み漁ったり、消防庁に通ってアドバイスをいただいたりして、解決策を見つけ出すことができました。次に直面したのは予算の壁でしたが、何度も何度も模型を作り直して、調整していきました。

コンペから得たもの

今回の経験で、町づくりを含めて一つの建築をつくりたいと考えるようになりました。例えば、今回の建築では、牧草の取り外しは一人ではできませんから、地域の人たちの協力をもらわなければなりません。こうした一般的にはマイナスになることをあえてやることで、地域の人たちが孤立せず、つながりが生まれればいいなと思います。

建築家の意義とは

20世紀の100年間で、いろいろな職人稼業が成り立たなくなったように、「建築家」という職能もいずれ消えてしまいそうに思えます。多くのハウスメーカーが規格品を安価に販売することに専心すれば、やがて建築家は巨匠しか残らないのでは、と危惧します。この負のスパイラルを断ち切れるのは今後10年くらいの間ではないでしょうか。私は建築家の力を信じているので、このような状況を変えていきたいと考えています。

早稲田大学 創造理工学部 建築学科 古谷誠章研究室 4年小笠原 正樹

理工学術院 想像理工学部 建築学科 4年 小笠原 正樹

早稲田大学 理工学術院 創造理工学研究科建築学専攻 古谷誠章研究室修士2年三上 恵理華

理工学術院 想像理工学研究科建築学専攻 古谷誠章研究室修士2年 三上 恵理華

牧草という、今までまったく馴みもなく、建築素材として考えていなかったものを利用すること、
それを新しい環境装置として捉えることの新鮮さを感じながら、建築に立ち会っています。
設計の自由は大部分が予算で決まっていくことを実感していますが、選択しうる中でもっともイメージに合うやり方を常に模索しています。将来は子育てしながら設計に携わっていきたいと思います。

学生のための 住宅デザインコンペ

インタビュー 最優秀賞「町まとう家」

インタビュー 竣工を迎えた“今”の想い

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