挑戦の機会を活かしてスキルアップ。海外での展示経験も持つCMFデザイナーの歩み
デザイン
デザイン・新技術統括部 デザインセンター CMF・タイルデザイングループ
K.M / 2017年入社デザイン部 デザイン工学科
幅広い業務を担当するCMFデザイナー。重要なのはメンバーとのコミュニケーション
私はデザイン・新技術統括部 デザインセンターに所属し、製品のコンセプトに合うカラー開発や空間デザインを行っています。
カラー開発は、プロダクトデザインのチームと連携しながら進行します。国内や海外のトレンドを分析した上で、製品コンセプトに最適なカラーを検討。その後、工場の開発チームと共にマスターとなる色を作成し、量産に向けてカラーの微細な調整を何度も行って完成させていきます。
そして空間デザインでは、製品コンセプトを視覚的に表現するため、カタログなどで使うキービジュアルを作成。製品を実際に配置した時のイメージが広がりやすいように、住宅環境とあわせてコーディネートし、製品単体では伝えきれない魅力を訴求しています。
このように、CMFデザイナーとしての業務の範囲はとても広く、求められるスキルも多岐にわたります。とくにカラー開発においてはその色を開発する意図や背景が明確でなければならず、トレンドのリサーチや分析が欠かせません。そのため、ハウジングテクノロジー事業デザインセンターのCMFデザインメンバーや、ウォーターテクノロジー事業デザインセンターのリサーチチームと協力して、組織横断でプロジェクトを進行しています。
いろんな部署と協力して進める仕事だからこそ重要になるのが、プロジェクトメンバーとのコミュニケーションです。納期に間に合うように自分のスケジュールを管理するのはもちろん、メンバーの作業時間のことも考えて全体を調整しなければなりません。コミュニケーションを綿密に取り、進捗状況を細かく確認することで、組織間がスムーズに連携できるようにいつも心がけています。
現在のワークスタイルは、在宅勤務を基本としており、出社は週に1~3回程度です。私以外のメンバーも同じくらいの出社頻度で、現物の確認が必要な際にみんなで集合し、照明などの設備が整った環境でチェックするようにしています。今は子育て中のため、子どもが体調を崩したときにはスーパーフレックス制度を活用して勤務時間を調整するなど、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が実現できています。
「この会社しかない」と考えて入社。コンセプトの立案など初めての業務を経験
前職はメーカーの開発部に所属し、製品の筐体設計やデザインを担当していました。製品の意匠だけでなく、量産工程で使用する治具や、メンブレインスイッチ(家電製品や検査装置などのボタンとして、幅広く利用されている部品)の設計など、3Dソフトを使用しながら幅広いデザイン業務を担当していました。
ものづくりに携われる環境にやりがいを感じていた中で、結婚を機に住居を移す必要が生じたため、転職を考えることに。その中で出会ったのがLIXILです。前職で培ったデザインのスキルが活かせること、また学生のころから興味があった空間デザインに携れることが私の理想に合致していました。
そして面接の際には、私がこれまで携わってきた仕事の話をとても興味深く真摯に聞いてくださり、誠実で温かみのある社風だと実感。実家が陶業を営んでいることにも何か通じるものがあると感じ、「この会社しかない」と考え入社を決めました。
2017年に入社後は、トイレ・洗面デザインチームへ配属。プロダクトデザインをはじめ、衛生陶器のカラー開発を担当しました。ミラノサローネの出展に携わったほか、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の選手村に設置するトイレのデザインを行うなど、新しい経験をたくさんさせてもらいました。
前職との大きな変化は、ユーザー設定やコンセプト立案など上流段階に時間をかけるようになったことです。デザイナーとしての視野が大きく広がったと感じます。
そして2019年に現在の部署に異動。CMFデザイナーとして経験を積む中、2021年から1年間、産休・育休を取得しました。周囲はとても温かく迎え入れてくれて、私の体調がすぐれないときにはメンバーが積極的に業務を代わってくれました。
復帰後も、子どもが熱を出して当日予定していた業務ができなくなるといったことがありましたが、いつでも快くサポートしてもらえる環境に感謝しています。スーパーフレックスなど働きやすさを支える制度があるだけでなく、子育てとの両立に対するみんなの理解や思いやりがある会社だと感じます。
入社2年目で挑戦したミラノサローネの出展。デザイナーとしてスキルアップを実感
LIXILに入社して以来、新しい業務にチャレンジする機会にたくさん恵まれました。その中でもとくに印象に残っているのが、世界最大規模の家具見本市であるミラノサローネの出展に携わったことです。INAXの新しいラインナップをグローバルに向けて発信するとともに、私たちが培ってきた技術力を伝えることが目的でした。
私が担当したのは、衛生陶器の可能性を広げるさまざまなカラーを再現し、展示するという業務です。当時はまだキャリア入社2年目で、衛生陶器のカラー開発において経験が浅い自分にできるだろうかという不安もありましたが、それ以上に成長できるチャンスを与えてもらえたことがうれしく、新しい挑戦にワクワクしていました。
展示の具体的な内容としては、8台の洗面器に8種類のグラフィックを載せ、それを釉薬(陶磁器の表面をコーティングするための薬品)や焼成(器物を窯に入れて高温で焼くこと)の技術によって再現するという企画です。8種類のカラーバリエーションをどのように設定するか、まずコンセプトを決めるところからスタートしました。
規模の大きな国際イベントであるため、会議には上層部も参加。たくさんの人の意見を集約しながらコンセプトを決めなければならず、カラー開発の進行は一筋縄ではいきませんでした。
大変だったのはカラー開発だけではありません。展示場所はイタリアのため、ミラノサローネの開催日から何カ月も前に製品を輸送する必要があったのです。納期が迫ってくる中、スケジュールの調整や船便の手配など、やらなければならないことが山積していました。
初めてのことばかりで苦労もしましたが、一番の収穫は、釉薬や焼成の知見を深められたことです。陶器は焼成するとカラーが変わったり、形が崩れたりするため、理想のカラーが再現できるまで研究所のメンバーとともに何度も試行錯誤を繰り返しました。そうして実際に経験することでしかつかめない、釉薬や焼成の繊細な調整技術を目のあたりにできたこと。それがデザイナーとして大きなスキルアップにつながったと感じています。
もう一つうれしかったのが、展示を見た海外のお客様からの反応です。自分が手がけた洗面器を見た方が、SNSで「日本の技術力は素晴らしい」と発信してくださっていました。当社の技術力をグローバルに発信するという目的の達成に、微力かもしれませんが貢献できたと思いました。
多様性が活かせる環境でメンバーと共に成長。自分にしかない強みを磨き続ける
LIXILは5社が統合して誕生した企業のため、ベースとして多様性があることが魅力です。私を含めデザインセンターにキャリア入社したメンバーも、前職の業界や職務は本当にさまざま。それぞれが強みを活かしながら、今までにないポジションを自ら確立していっています。
仕事をする中で、個々の多様性が活かされていると感じる場面は多いです。たとえば、トイレ空間に配置する各マテリアルのカラーを自由に変えて、自分好みにカスタマイズできるカラーシミュレーターを作成したときのこと。
Webで展開するコンテンツのため、UIの知識が必要になりますが、私の専門領域ではありません。そこでデザインセンター内でスキルを持つメンバーに協力してもらいながら制作を進行していきました。バックグラウンドが多様だからこそ、それぞれのスキルを持ち寄り、幅広い業務が遂行できると感じます。
また、LIXILは教育支援が充実しているため、各自が現在持っているスキルをさらに磨くことができ、自分がやりたい仕事に必要な知識を新たに習得できるのも魅力です。私自身、CMFデザインは未経験でしたが、教育プログラムを活用してカラーやインテリアコーディネートに関する知識を習得してきました。
これからも教育プログラムを活用し、現在担当している空間デザインに関する知識をさらに深めていきたいと考えています。プロダクトデザインの経験を持つCMFデザイナーは珍しいので、自分にしかない強みを伸ばしていくことが目標です。
2024年は、LIXILの水まわり・タイル事業が100周年を迎える節目の年です。それに向けて社内で勉強会が行われているのですが、積み重ねてきた歴史や技術の重みをあらためて感じています。築いてきたものを大切にしながら、積極的に新しいことに挑戦していく。そんな会社の姿勢に共感し、私も未来に向けてチャレンジを続けていきたいと思います。
デザインの仕事は組織横断で進めるため、高い専門性や優れたスキルだけでなく、チームメンバーと協力し合えるコミュニケーション能力が重要です。常に自分の意見を発言する意思を持ちつつ、周りへの敬意をもって働くことができる方が活躍できると思います。新しい仲間と共に、次の100年に向かってLIXILの未来を築いていけるのを楽しみにしています。
*所属・内容等は取材当時のものです。