現場の「思考」を止めない。伊吹工場のエキスパートが挑む、生産準備の革新
生産技術
伊吹工場 製造課 ビル製造係
R.S / 1993年入社自動車科
私は、伊吹工場でビルの製造に携わる仕事をしています。1993年に入社し、以来30年以上にわたり、オーダーメイドが中心となるビル用サッシの生産現場一筋で歩んできました。
もともとは高等学校の自動車科で機械やNC工作機を学んでおり、ものづくりが大好きでした。「図面を読み解き、自分の手で形にしたい」という想いでこの世界に飛び込みましたが、そこで待っていたのは、想像以上に奥深く、そして責任の重い世界でした。
私のキャリアの中で忘れられないエピソードがあります。東京の新丸ビル建設の際、納品した製品に不備が見つかり、私が現地で修正対応をすることになりました。地上200メートルの高さにあるゴンドラに吊るされ、足がすくむような恐怖の中で作業をしながら、私は痛感したのです。「工場で完璧に準備を整えていれば、現場でこんな思いをさせることはなかったはずだ」と。
その後、あべのハルカスのプロジェクトでは、タイの洪水の影響で急遽、膨大な仕事量が伊吹工場に流れ込んできたこともありました。納期を死守し、最高品質のものを届ける。そのために何ができるのか。私の視点は次第に、「いかにラインの作業効率を上げ、ミスを未然に防ぐか」という上流工程へと向いていきました。
私は、伊吹工場で「生産準備チーム」を立ち上げました。以前は設計部門から届く工作図面をそのままラインに流していましたが、それだと現場で「この指示はどういう意味か?」「部品が足りない」といった確認作業が発生し、作業の手が止まってしまいます。一度手が止まれば、集中力が途切れ、ヒューマンエラーにもつながりかねません。
そこで私たちは、図面を事前に精査し、注意点を色分けして強調したり、加工しやすいように図面そのものへフィードバックを行う活動を始めました。作業者が「悩まない・考えない」状態で、純粋に製造に集中できる環境を整える。それが私の使命です。この取り組みの結果、かつては年間200件を超えていた流出不具合を、昨年度はわずか7件にまで減らすことができました。
現在は品質保証の役割も担っていますが、私の夢は「工場の思想」を設計の段階から完全に組み込むことです。図面が引かれた瞬間に、生産工場で最も作りやすく、不具合が起きない形になっている。そんな理想の姿を目指しています。
LIXILは、ただラインで手を動かすだけでなく、部門の垣根を越えて「より良いものづくり」を提案できる会社です。最近は私のチームにも新卒の女性社員が加わりましたが、若手には私のこれまでの経験や、そこから生まれるアイデア、考え方を余すことなく伝え、私の「分身」となって活躍してほしいと願っています。
ものづくりの楽しさは、自分が携わった製品がランドマークとなり、地図に残ることです。その誇りを胸に、これからも誠実で、革新的な生産現場を追求し続けていきたいと思います。
*所属・内容等は取材当時のものです。






