行楽や憩いの場として多くの人が訪れる地域の公園や港湾施設。「安全なのは当たり前」と思いがちですが、実は日頃から安全管理を徹底している方たちの努力の上で成り立っているものなんです。
2024年12月、横須賀市のうみかぜ公園に隣接する平成地区8護岸の防護柵に、格子幅の狭いグリッドフェンスが設置されました。約400mに渡る既設の防護柵のすり抜け防止対策として、LIXILが寄贈したものです。
「2021年に発生した防護柵のすき間からのすり抜け転落事故を受けて、国土交通省港湾局より緊急措置を求める事務連絡が発出されました。」横浜市港湾部の水越さんは言います。「急ぎの対応が求められたので、すぐ手に入る材料でかつ短時間で施工できるよう、既設防護柵に金網を樹脂製の結束バンドで留める対応をしました。」
うみかぜ公園付近の防護柵は約400m、海辺つり公園が約520m、ほか含む全域となるとかなりの長さになりますが、横須賀市では10日間ほどで、緊急措置が必要な防護柵(概算1,100m)への対応をすべて完了させたそうです。
「当時はスピードが最優先でした」こう語るのは、同港湾部の高橋さん。「この緊急措置に対して国からの資金や物資といった補助はありませんので、護岸を有する全国の管理者はどう対応していくかという点で同じ悩みを持っていると思います。そんな中で、LIXILさんよりありがたいご提案をいただいたのです。」
緊急措置を施した防護柵は、数年を経て、樹脂製の結束バンドが劣化で壊れ、金網がフェンスから剥がれている箇所が多数見受けられました。耐久性と美観を維持しつつ、公共の場の安全性を高めることが課題となっていました。
住宅用フェンスを活用するというアイデア
そこでLIXILは、この課題解決に向けての取組みを始めます。現地調査により、耐久性、美観の維持に加え、コスト面での配慮やスピード施工も課題であることがわかりました。そして、長年エクステリア商品を開発・製造してきたLIXILのこれまでの知見を踏まえ、既設防護柵を活かしながら改善を図る方法として、既設防護柵にLIXILの量産品を後付け設置するというアイデアに至ったのです。
LIXILは公共の安全性確保という社会課題解決に向けた民間の取組みとして、全国各地の類似現場に対する事故防止の啓発につなげたいという想いで、今回のグリッドフェンスを横須賀市へ寄贈することとしました。
官民連携による社会課題への挑戦
「小さなお子さんの目線から離れた場所に結束バンドを付けるなどの配慮をしながら、フェンスのずれ落ちがなく安全な設置をしてもらいました」と話すのは、3児の母でもある港湾部の佐々木さん。今回の改修により、家族でうみかぜ公園に来園される方が安心して景観を楽しんでいただけること、そして補修作業の軽減を期待されています。
2021年の緊急措置を講じてから3年後のまさに交換・改修のタイミングで実現した、官民連携による課題解決。横須賀市は寄贈商品で現場の補修と改善を実施でき、LIXILは公共への施工事例を示すことができたため、お互いに良いとこ取りができました。
安全なまちづくりや地域コミュニティの発展に向けて、LIXILは今後もこのような取組みを広げていきます。
■寄贈までの経緯
・2021年8月、港湾エリアで発生した防護柵からのすり抜け転落事故を受け、国土交通省港湾局は全国の自治体に対し、既設防護柵にネットやロープなどですり抜け防止の対応を要請。
・2023年4月、国土交通省港湾局と日本港湾協会から新たな防護柵の安全基準ガイドラインが示され、新設する防護柵については「格子の内法寸法は10㎝未満が望ましい」とされた。
・各自治体は既設の防護柵に金網や樹脂製ネットを張るなどの緊急措置を取ったが、耐久性や景観の維持の問題から、改善が求められているケースも多数存在した。
・LIXILは既設防護柵への対策として、グリッドフェンスを既設防護柵に後付けするアイデアを提案。2024年12月、平成地区8護岸の既設防護柵にグリッドフェンスを寄贈。