病気になりにくい健康なカラダづくりとその持続のことを予防医学と言います。家庭で実践するゼロ次・1次予防は、住環境に密接に関係しており、健康を考えた住環境づくりで健康寿命を伸ばすことを提唱しています。
監修:首都大学東京・星旦二
出典:星旦二 ゼロ次予防に関する試論,地域保健,vol.20-6,1989を参考に作成
WHO(世界保健機構)は、冬の住宅の最低室内温度として18℃以上を勧告しています。また、英国保健省の冬季住宅内室温指針でも18℃を許容室温に。18℃未満で血圧上昇・循環器疾患の恐れ、16℃未満で呼吸器系疾患への抵抗力が低下するとしています。高齢者ほど室温低下による血圧の上昇が大きく注意が大切です。
冬の入浴時に注意が必要な「ヒートショック」。ヒートショックが原因のひとつである入浴中の死亡者数は、交通事故死亡者の約5倍とも言われており、高齢者が多数を占めています。特に脱衣所の室温が低いと熱めの湯に浸かる方が多く、血圧の乱高下が発生しやすくなり、心筋梗塞や脳卒中などを起こすリスクが高まります。
日本人の3人に1人は高血圧といわれている昨今、血圧が高い状態をそのままにしておくと病気の原因となるため予防が必要です。予防策としては、食生活の改善や運動が知られていますが、断熱リフォームにより家が暖かくなることで、起床時の血圧が低下するという分析結果があり、室温の管理も重要といわれています。
寒い季節は暖房の効いた場所から動きたくなくなったり、運動不足になりがちです。厚生労働省は糖尿病・循環器疾患等の予防の観点から「今より10分多く体を動かそう」と提唱しています。断熱リフォームによって、室温の改善で家の中での活動量が増えることがわかっており、健康リスクの低減につながることが期待できます。
住まいの困りごとの代表といえる、窓ガラスやサッシに発生する「結露」。そのまま放置しておくとカビやダニが発生し、アレルギー症状を引き起こす原因に。また、壁体内に結露が発生すると、建物劣化の原因になる可能性があります。そんな結露ですが、家全体の断熱性能を高めることで発生を抑えることができます。
冬に室温が下がると、血圧上昇・循環器疾患の恐れや、吸器系疾患への抵抗力が低下する可能性があることを先述しました。その逆に、断熱性能を高め、暖かい家で暮らすことによって、健康改善が認められたという研究結果があります。しかも、断熱グレードが高いほど、健康改善の割合が高くなることがわかっています。