INTERVIEW

使いながら、
道具との距離を縮めていく。
より自由に、楽しく付き合えるようになったり。

「自分らしく、長く使い続けられる道具」
というのが、
「キナリモダン」と
PINTが響き合うところ。

PINT代表 中地大介氏

例えば畳の部屋と床の部屋。今の日本の住まいにはこのふたつの空間があります。
「和」「洋」、いろいろなスタイルが美しく調和している—それが今の日本の住まい。
さまざまな生活様式を自分たちのライフスタイルや時代に合わせて、上手に取り込んでいくところが、
日本らしさと言えるのかもしれません。ラシッサDの「キナリモダン」は、
日本の文化や価値観を大切にしながらも、今までにない新しい時代のためのスタイルを提案する新レーベル。
そして、そんな「キナリモダン」に共感してくれたのが、
日本伝統の素材と技術を今の暮らしにフィットさせたものを作るプロダクトブランド、PINT。
その主催者である中地さんに、「キナリモダン」との出会いや感じた魅力、
さらにふたつの思想がひとつになったときに生まれる未来について伺いました。

今の日本で、
日常的に
使ってもらえるようなものを。

中地さんが京都で展開している
プロダクトブランド「PINT」とは—

PINTは、「現代の民具を作る」をコンセプトにしたブランドです。見せるため、売るためではなく「使う」にフォーカスしてものを作っています。
昔は、農家が農閑期に収穫後のわらで藁細工を作ったり、身近にある道具を最適化したりするかたちで自分で使うものを作っていました。私は「民具」という言葉を、身の回りにある材料で自ら作る、という意味で捉えています。ものづくりの最も原始的なかたちです。

ところが今は、作り手と使い手の関係が遠くなり、使い手からすると素材もものづくりもなかなか見えない、知ることができないという現状があります。ですので、PINTをはじめるときに、ものづくりのかたち、考え方やアプローチ自体から変えて取り組みたいと思いました。
とはいえ、大昔に戻るのは現実的ではなく、現代では、私自身も含めて自分でものを作ることは難しいです。作り手と使い手は分かれていますが、その間の長すぎる距離を縮めたいと思っています。

素材としては、日本で暮らす以上この風土で育まれる国内で採れる素材が最も適しています。日本で長く培われた素材と製法を深く知り、強い信頼関係のもとで製作に取り組むために、日本の作り手と一緒に作る。そんな考え方で、日本の天然素材で日本の作り手とものづくりをしています。長い歴史を持つ素材やものづくりを学びつつ、あくまでも気候風土・居住空間・ライフスタイルも含めた今の日本で、日常的に使ってもらえるようなものを考えていきたいと思います。

ナチュラルで、ニュートラル。
シンプルで普遍的。
「キナリモダン」との
出会いと、PINTとの共通点。

はじめて「キナリモダン」と出会った時の
印象、そしてPINTと響き合うポイント—

「キナリモダン」という名前をはじめて聞いたときは、いい意味で、今っぽいな、気取った感じがないな、ナチュラルな感じだなと思いました。新しさ、清潔さも感じられますし。

すごく自然でリラックスした気取っていない佇まい。でもちゃんといろいろな要素とバランスを考えて整えられ、洗練されている。かっこつけた感じはないけれどかっこいいという、個人的には一番理想の状態。色や素材が日本らしさも感じさせつつ「和」すぎない。根っこが日本の色や素材にありつつも和とか洋とかを感じさせず、ジェンダーもボーダレスな、ナチュラルでニュートラルな感じが好きですね。
そして色味も含めて素材の風合いを嫌味なく出して、かたちやサイズも日常の居心地良いリラックスした空間作りへの配慮が感じられるところも好きです。既存のジャンルやスタイルに寄せたりせずに、日本ぽくて自然に落ち着く感じ。今の日本の和洋ミックスの生活スタイルにもすっと溶け込んでくれます。

また、シンプルで普遍性もあります。それはやはり日々の過ごしやすさ、使いやすさにつながると思います。売りやすいということより、使う、過ごすというところに重点を置いて考えられた感じが伝わってきました。そんな点も好印象でした。
だから、PINTで扱っているものとぴったり合うなと思いました。コーディネートやスタイリングとしてだけでなく、一番根っこ、スタート地点としての考え方から近いように感じました。

今の日本の暮らしに、
調和をもたらし包み込む。
自然だけど洗練されている。
そこに共感する。

中地さんご自身が、「キナリモダン」の
製品で魅かれたものは—

個人的には、「キナリモダン 」のアクセントボード、アクセント畳が気に入りました。写真を見て魅かれるものは多々あったのですが、私の生活の中で自分がほしいものがこれだったんです。

私自身が新築で内装を作る機会がないライフスタイルなので、こうしたライトなものが、イメージが湧きます。
それぞれ、部屋の中で、設置場所や使い方の自由度が高く、使う人によって想像を膨らませられるのが魅力に感じました。単純にほしいな、と思いました。気軽さがあって、自由度が高いというところがいいですね。

今の日本の住宅は、昔ながらの和の建築から昭和の経済成長期の団地、最新スタイルの住宅まで時代変化に伴うバリエーションが本当に多様で、混在しているのが面白いと思っています。家の中に床も畳もあって、床生活と椅子生活が共存するという生活ですから。
そんな日本の部屋の空間作りに、遊べる、いろいろな使い方ができるといった移動しやすいフレキシブルさを持つ製品はマッチしているし、素敵だなと思いました。

「包容力のある世界」と
「余白のある暮らし」。
ふたつの思想が重なるとき、
新しい世界が生まれる。

「キナリモダン」とPINTの世界観との
共通点は何か—

「キナリモダン」の引戸の説明に、「ノイズを抑える」という一文があるんです。住空間への影響を極力抑えるためのミニマムなデザインということだと思いますが、「キナリモダン」は全体の空間の調和をすごく考えられたシリーズだというところを感じました。
またコンセプトブックに、「それぞれの楽しみ、時間を包み込む包容力のある空間」という文もあります。この考え方も素敵だなと思いました。時間帯や使い方によって、ひとつの空間、限られた空間をさまざまなかたちで使うような考え方がいいですね。

PINTも「余白のある」という考え方を大切にしています。今は使い方が分かりやすいものが売りやすいのですが、私は使う人によっていろいろなかたち、用途で使えるというのがすごく大事だと思っていて、「使いこなしていく」「使い手がちょっと道具に合わせていく」「ちょっと面倒だけど、それが少し楽しかったりする」—そんな道具を提供していきたいと考えています。

「キナリモダン」の「包容力のある空間」というのも、まさにそこに近い考え方だと思います。家の中の空間を大きく取りにくい場合、こういう使い方の提案というのは自分もいちユーザーとしてすごく響いてきます。「自分らしく、長く使い続けられる道具」というのが「キナリモダン 」とPINTの共通点、響き合う点かなと感じています。

自分で選び、自分が楽しい。
自分にフィットした
暮らし方を。

中地さんが考える「いい暮らし方」とは—

それぞれの人にとって、楽しかったりフィットしたりしていることがベストだと思います。暮らし方にせよ、力の入れ具合にしても。
私の場合は興味の方向が素材や道具ですので、暮らしの中で使う道具やもののことが思い浮かびます。暮らしが楽しいことが一番なので、毎回使って楽しいものを選ぶこと。
使い心地や見た目の好みは最初にありますが、まずは経年変化で価値が上がるもの。使うときにマイナスになる心配がなく、何も気にせずに使えること。そして、日々の登場回数が多いもの。使い心地のよいものだと、使うほどに育つので楽しいですね。

PINTで扱うものもこの基準。そうすれば使うたびに楽しいので、毎日ハッピーな時間が増えるかなと。
ものも優劣があるわけではなく、使い方次第、関わり方次第だと感じます。使う自分がものに対して慣れることで近づいていくこともあるし、長く使って愛着が湧くこともあるし、はじめてのかたちや素材を使ってみて新しく感じたり知ったりする喜びもあるし。だから、機能的なところよりも使い心地や手のひらの肌感覚、ものと自分との関わり方を大事に考えています。

人に説明する言葉も知識も思想も特にいらないと思います。「自分で選ぶ」ということでしょうか。

「建具未満」。そんな企画を、これからともに。

PINTと「キナリモダン」の今後の展開。
中地さんの思い描くビジョン、夢—

「キナリモダン」を選んでくれるような新しい住空間を考える人に、その新生活のスタートのタイミングに合わせてPINTの道具を手に取って試しに使ってもらえるような、そんな取組みをしてみたいと考えています。

またPINTでは、引越しなどライフスタイルの変化や使い方を変えたい時に、設置や移動が簡単にできる「家具未満」というシリーズを展開しています。
この考え方に近いですが、「キナリモダン」と一緒に「建具未満」というシリーズを企画できたらなと考えています。

PINT代表 中地大介 氏

PINTは、中地氏が2012年にはじめた「日本の風土に合っている伝統ある素材と技術を、今の暮らしのシーンに本当にフィットさせたもの」を作る新しい試みのプロダクトブランド。

デザインだけでなく、その素材と技術を、今の暮らしの中で道具として本当に活かせるものづくりをします。

日本のプロフェッショナルな作り手と、今の暮らしのシーンを知る使い手を結ぶ存在を目指します。

キナリモダンの空間では、
PINTの小物をコーディネートしています。
詳細はLiving Deliでご確認・ご購入いただけます。

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