前回は、「食品ストックの整理と収納」についてご紹介しました。食料品をストックしておくと毎日の料理がスムーズになるだけでなく、災害時の大切な備えとしても活用できます。
しかし、災害時に必要なものはそれだけではありません。特に、避難所を利用せず、自宅で避難生活を送る「在宅避難」では、食料以外にも生活用品などの備蓄がより重要に。
今回は、徐々に広まりつつある「在宅避難」に注目し、“もしものとき”のための考え方や、備蓄のノウハウなど、普段の暮らしの中でできる備えについてご紹介します。
- 目次
- そもそも「在宅避難」とは?
- 在宅避難のメリット。プライバシーやペットの問題にも対応
- 在宅避難?避難所?迷ったときの判断ポイント4つ
- 在宅避難で必要な備蓄の目安は?
- 「フェーズフリー」の考え方とは?
- 普段の生活で取り入れられるフェーズフリーの例
- “もしも”のために普段からできることを
そもそも「在宅避難」とは?
近年は災害が増加し、避難を促されたり、避難所を利用したりする事態も増えています。
そんな状況で身を守るためには、私たち一人ひとりが危機感を持っておくのが大切。ハザードマップで自宅の環境を確認し、どこに避難したら良いのか家族で情報共有しておくのも有効です。
そして、避難やその後の避難生活に備えるときに併せて考えたいのが、「在宅避難」の可能性。
在宅避難とは文字どおり、「災害時に避難所へ行かず、自宅で避難生活を送ること」。在宅避難にはメリットもありますが、注意しなければ命に関わる被害に繋がることもあるので、日頃からの準備が必要不可欠です。
在宅避難のメリット。プライバシーやペットの問題にも対応
在宅避難の一番のメリットは、周りの目を気にせず、いつもの空間で自分達のペースのまま行動できる点でしょう。
ただでさえ不安の大きい災害時に、避難所で周りの目を気にしながら過ごすのは大きなストレス。プライバシーが保たれた自宅で過ごすことができれば、精神的な負担が軽くなる他、食材や日用品を普段のまま使えるというのも、安心感に繋がるひとつの要因です。
また、ペットを飼っている場合は避難所での受け入れが困難なケースも。在宅避難ならペットと一緒に過ごせるのも大きなメリットです。
在宅避難?避難所?迷ったときの判断ポイント4つ
では、もしもの場合はすぐに「在宅避難をする」と決めてしまって良いのでしょうか。答えはNO。状況をきちんと把握して、家に留まるか、避難所に行くか慎重に見極めましょう。迷ったときには以下を参考に判断してください。
1. 自宅に危険はない?自宅の安全性
建物の倒壊や傾きはありませんか?また、ガス・水の漏れ、電気の異常がないか、ぜひ確認を。そのほかにも、家の中にモノが散乱して怪我をする恐れがないか、屋根や壁の崩落がないかどうかも確認してみましょう。少しでも異常がある場合はすぐ避難所へ行く準備を。
2. 自宅で生活できる?ライフラインの状況確認
水・電気・ガスのライフラインが一通り使えるか、もしくは代替手段があるかどうかは、避難場所を左右する大きな分かれ目。トイレが使える、もしくは非常用トイレの備えがあることも重要です。これらの設備が一時的に使えなくても、代替手段の備えで当面乗り切れそうであれば在宅避難を検討できます。
3. ハザードマップで自宅が安全か確認
ハザードマップには、国土交通省が公開している「洪水・内水」「土砂災害」「高潮」「津波」の4種類と、自治体ごとに公開している「火山」「ため池」「地震」3種類の計7種類が存在します。それぞれの災害が起きた際のリスクを確認し、自宅が安全だと確認できたら在宅避難を考えましょう。
さらに詳細な判断ポイントは、内閣府の『避難行動判定フロー』をご確認ください。
4. 家族の状況は?家族構成や体調をチェック
具合の悪い家族や高齢者、乳幼児、障がいがある方などがいる場合は、自宅でサポートできる体制が整っているかどうかも判断したいところ。周りからのサポートが必要な場合は迷わず避難所へ行きましょう。
在宅避難で必要な備蓄の目安は?
いざ在宅避難をすることになった場合、何をどのくらいの日数分を備えれば良いのか不安という方も多いはず。一般的には、最低でも3日分、できれば1週間分を目安に備えておくのが望ましいと言われています。
例えば4人家族の場合、7日(1週間)過ごすのに必要な備蓄の目安は、以下の通りとなります。
・水 <2ℓペットボトル42本分>
3ℓ×4人×7日= 84ℓ(=2ℓペットボトル42本分)
調理用の水を含めると、1人あたり1日に必要な水は3 ℓ。全てをペットボトルで備えなくても、普段から作っている麦茶や氷、 買い置きの飲料やウォーターサーバーの水も備蓄として役立てることができます。
またこれとは別に生活用水として浴槽に水をためておくのも良いでしょう。身体を拭いたりトイレの水や掃除に使ったりと衛生面の確保にもつながります。オール電化の家ならエコキュートなどのタンクのお湯も非常時に生活用水として活用することができます。
・食料 <84食分>
3食×4人×7日=84食
冷蔵庫や冷凍庫の中のもので数日過ごして、あとは非常食と考えると備えやすいです。
・カセットコンロとボンベ <14本>
2本×7日分=14本
冬場は温かいものを取り入れるだけで身体も心も落ち着くはず。
・非常用トイレ <140〜224回分>
5〜8回×4人×7日分=140〜224回分
見落とされがちな備蓄ですが、体調維持にも大きく影響する大切な備えです。
※上記は備蓄目安の参考です。内容は災害時の状況や家族構成などによって異なります。
他にもラジオや灯り、ソーラー充電、衛生用品、身体を守るものなども必要です。
もちろん、普段の暮らしで使っているものの中には、災害時に使えるアイテムも。在宅避難を見越して、普段から備えを当たり前のこととして生活する「フェーズフリー」の考え方を取り入れておくと、いざというときに慌てなくて済むのでおすすめです。
「フェーズフリー」の考え方とは?
フェーズフリーとは、いつものものを非常時にも使い、非常時に使うものをいつもの生活にも取り入れて「いつも」と「もしも」を分けずに暮らそうという考え方です。
防災用品を特別なものとして備えてしまうと、どこにしまったか分からない、いざというときに使い方が分からない、食材の賞味期限が切れていた…など、困った状況に陥りがち。
また、収納スペースの確保や、防災用品を準備するコストがネックになることから、「いつも」を「もしも」にも生かすフェーズフリーという考えが生まれました。
普段の生活で取り入れられるフェーズフリーの例
実は私も、普段の暮らしの中にフェーズフリーを取り入れています。
- 缶詰やレトルト食品を普段の食事にも取り入れて、味を知っておく。
- 忙しい日はペットボトルの水を持参する。ローリングストックで賞味期限切れを防ぎながら、一定数を備蓄することを意識。
- モバイルバッテリーを普段から使い、不意な停電にも備える。
- 卓上コンロを使った食卓で、楽しみながら“もしも”のときにも使える準備を。
- トイレットペーパーや除菌ティッシュなどは、やや多めのストック管理を徹底。
- 帰宅時に災害が起こったときのことを、家族と普段から会話して意識を共有。
- どこにどのような防災用品を備えているか、家族みんなと共有。
こうして挙げると、案外普通のことが備えにも通じるのだなと感じていただけたのではないかと思います。他にも、タンクレストイレやタッチレス水栓をご使用の場合は、停電時の水の出し方についても家族で共有しておくと安心ですよ。
※LIXILからのお知らせ※
非常時に備えて、お使いのLIXIL製品の停電時の使用方法や情報をチェックしておきましょう。
詳細はこちらからどうぞ。
“もしも”のために普段からできることを
いつどこで災害が起こってもおかしくない毎日。心構えをしつつ、普段の生活の延長線上で“もしもの備え”をしておくことが最善策です。
「特別なことをしなくても日常の備えができる」と分かれば、防災のハードルがグッと下がりますよね。そして、備えたものを保管するのには、やはりスペースが必要。
家の中の整理も、災害への備えの一環としてとても大切なことなのだと思えば、片付けがはかどるのではないでしょうか。