コンセプトは“ギャラリーに住まう”。「YAMATE HOUSE」に詰まったこだわり設計とは

コンセプトは“ギャラリーに住まう”。「YAMATE HOUSE」に詰まったこだわり設計とは
荒井詩万/インテリアコーディネーター

インテリアコーディネーター。「CHIC INTERIOR PLANNING」代表。戸建住宅やマンションのインテリアコーディネート・リフォームなどを数多く手がけるほか、大妻女子大学非常勤講師や町田ひろ子アカデミー講師、TV出演など幅広く活躍。著書に『今あるもので「あか抜けた」部屋になる。』(サンクチュアリ出版)がある。

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インテリアのプロはどんなお部屋で暮らしているの?と気になる人も多いはず。今回はインテリアコーディネーターの荒井詩万さんのお宅を訪ねました。

2019年に発表した著書『今あるもので「あか抜けた」部屋になる。 』(サンクチュアリ出版)では、初心者でも簡単に実践できるインテリア術を紹介している荒井さん。

設計時にこだわったポイントやお気に入りのインテリアなど、荒井さんのご自宅には素敵なアイデアがたくさん詰まっていました。

美しい空間は収納からはじまる

白壁のスタイリッシュな外観が印象的な荒井さんのご自宅。その名も「YAMATE HOUSE」。

20年前に一級建築士であるご主人と共に設計したこちらの二世帯住宅、なんと「第45回神奈川建築コンクール優秀賞」を受賞したご夫婦の共同作品でもあるのです。

家の中心となるリビングは白い壁と天井、木目が美しい床。そして大きな窓、天窓からたっぷりの自然光が降り注ぐ明るい空間です。

荒井さん:「仕事では、様々なテイストのインテリアをご提案していますが、自宅はシンプルでモダンな雰囲気に仕上げています。木の温かみを感じつつ、飽きのこない設計にしました」

荒井さん:「壁も全て真っ白だと、緊張感のある雰囲気になってしまうので、一部は珪藻土にして温かみを持たせています。私も主人も、海外などで購入した小物を飾るのが好きなので、マイホームはギャラリーのような家にしたいねと話して決めました」

コンセプトは「ギャラリーに住まう」

普通ならもので溢れてしまいがちなリビングですが、荒井さん宅のリビングはすっきりとして心地よい空間です。

荒井さん:「余計なものが目に入らないようにするには、なんと言っても収納が大切です。そのために、設計当初から壁の一面は全て収納にすることを決めていました」

壁面収納は「見せる」と「隠す」のバランスを考えたオリジナルデザイン。扉付き棚には仕事で使う資料やたくさんの本を収納。

中央のオープン収納は“見せる収納”として旅先で出会った各国雑貨や写真がディスプレイされています。

荒井さん:「飾っている雑貨は旅先で出会ったものばかりです。夫も雑貨好きなので、お互いのお気に入りの雑貨を部屋のあちこちに飾っています」


また、海外のように写真をたくさん飾ってあるのもこのリビングの特徴。荒井さんのお気に入りはタイのシルクブランド「JimThompson」のフォトフレーム。きれいなフォトフレームに入れて飾ることで、アートのような趣になりますね。

オープン収納の中心には「BANG&OLUFSEN」のオーディオが収まっています。リビングでテレビを観るという家庭が多い中、荒井家は家族で音楽を聴く時間を大切にしているのだとか。

荒井さん:「我が家はあまりテレビを見ないので、音楽を聴くことがほとんどです。音楽だと家族の会話も生まれて楽しいですよ。あとは壁側にテレビを置いてしまうと、向かいにソファを置きたくなりますよね。そうするとダイニングとリビングが分断されてしまい、空間に圧迫感が出てしまうと思ったのです」

荒井さんのご自宅は空間に圧迫感が出ないように、照明もエアコンも埋め込みタイプ。家族の過ごし方、そして空間に対して何を優先させるのかを熟考した、まさにインテリアコーディネーターの知識が集結されたリビング設計です。

家族の会話の中心はリビングに

廊下側の壁の一部はガラスが配されていて、そこにも有名家具のミニチュアなどが飾られています。

荒井さん:「ここはちょっとした展示スペースでもありますが、ガラスにしたことで、リビングに光を取り込んだり、人が通る気配を感じる。といった効果もあります。例えば私がキッチンで作業をしていても、娘が帰ってきたと気付けるので、おかえりと声がかけられます」

見た目の美しさだけでなく、家族の生活導線にも配慮したこだわりの設計です。廊下からもリビングの様子がよく見えるので、自然と家族が集まってきます。

変化するもの、普遍的なもの

旅先で出会った雑貨の他にインテリアを彩っているのが、壁に飾ってあるアート作品やクッションといった小物たち。

荒井さん:「壁に飾っている写真は講師を務めるスクールの生徒さんがプレゼントしてくれたものです。私の好みを知ってくれているので、この部屋にぴったりな写真を選んでくれました。この壁に飾るアートは、季節やその時に気分によって替えています」

さらに荒井さん、ソファに置くクッションも季節によってアップデートしています。

荒井さん:「クッションは素材や色を季節ごとに替えています。サイズや形をバラバラにすると動きが出るので、おしゃれな雰囲気になりますよ。今はマスタード・黒、夏はブルー系で綿や麻素材、秋冬はボルドーでウール素材など季節によって変えて楽しんでいます」

小物で変化を楽しむ一方、「arflex」のソファは新築当時から20年以上愛用しているもの。何度かクリーニングはしているものの、現役なのには驚きます。

荒井さん:「娘が小さい頃は隙間にお菓子が入っていたり、ホームパーティでワインがこぼれちゃったこともありますが…(笑)。お気に入りのものはメンテナンスしながら長く愛用する方ですね。ダイニングテーブルとチェアも新築時から使っているアイテムです」

ゾーニングと景色にこだわったダイニング

リビングと同じ空間にあるのが、ダイニングスペースとセミオープンキッチン。ここにも荒井さんのこだわりが詰まっています。

荒井さん:「ダイニング側から手元が見えない高さにカウンターをつくりました。来客時にキッチンのモノが見えずすっきりとします。また、キッチン脇には廊下とつながるドアを設置しています。お買い物の後は廊下から直接キッチンに入って食材をすぐ冷蔵庫に入れられるし、リビングにお客様がいるときはここから出入りできます。回遊できる動線で、ゆるやかにパブリックゾーンとプライベートゾーンを分けています」

キッチンの壁も全て収納、下部にはゴミ箱用のスペースを設けていて、全てが機能的に設計されています。そしてこのキッチン、20年間リフォームしておらず、新築当時のまま使っているのだそう! どうすればストレスなく生活できるか、生活動線を意識し、とことんイメージを重ねて設計されていることがうかがえますね。

目線をダイニングに移すと、「louis poulsen」のペンダントライトがシンボリックに輝いています。その位置は想像以上に低い位置です。

荒井さん:「海外のレストランもそうですが、ダイニングのペンダントライトは低い位置に設置するのが基本です。我が家はテーブルからライトの下端まで64cm。けっこう高い位置のお宅が多いですが、ペンダントライトは低めの方が光が散漫にならず、お料理を美しく照らしてくれます。ご自宅をチェックしてみてくださいね」

そんなダイニングに座ると、なんだかホッとした気分に。

荒井さん:「キッチンに立っていても、ダイニングに座っていても、リビング全体が見えることで自然と会話が生まれます。また、ダイニングに座った時、我が家のシンボルツリーとして庭に植えているヒメシャラ、そして向かいのマンションにある保存樹のケヤキが見えるんです。こうして景色も楽しめるように窓は大きく作りました」

四季を感じながら、家族との会話を楽しむ…。なんとも素敵な設計ですね。

長く、快適に暮らすためのヒントとは?

荒井さん:「インテリアコーディネーターは暮らす人のライフスタイル、趣味、生活動線などを総合的に考えながら空間を作っていきます。“どうしたら快適に暮らせるか?”をじっくりと考えて設計すれば、長い年月を経てもストレスフリーな生活を送ることができますよ」

荒井さんのご自宅「YAMATE HOUSE」には、快適で素敵な暮らしを実現するヒントがたくさんありました。新しく家づくりをするとき、またリノベーションする際にはぜひ参考にしてみてください。

・Photo by:上野裕二
・Writing by:小野喜子

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