今回は参考にしたい3つの収納事例をご紹介します。これらはプロユーザー様向けの施工例コンテスト「コンペ デ ラシッサ 2024【収納部門】」の受賞作品。収納計画ひとつで家事効率や部屋の片付けやすさが変わります。審査委員長である住まい方アドバイザーの近藤典子さんのポイント解説付きですので、是非ご覧ください。
SAKURABABA PJT【最優秀賞】
受賞会社:そとわコーポレーション 様
■ご担当者:一瀬朝日 様
■ホームページURL:https://www.sotowa.com/
子育て世代の住みやすさを一番に考えた賃貸物件の収納・動線計画の事例です。近藤さんも「暮らしを熟知していらっしゃる!」と大絶賛の事例です。
一瀬さん:「若者の地方離れが進む中で長崎市の住みよかプロジェクトとして、最新のIOT技術を導入した設備、子育て世代の方が暮らしやすいような動線、収納計画にし、若者が地方の集合住宅に住んでもらえるような住宅を目指しました。各部屋にそれぞれの収納を設け、目的別に使えるように可動できる棚板やハンガーパイプを計画しています。寝室2の収納は在宅ワークができるようなレイアウトも可能です。」
Before Afterの間取りを見てみましょう。Afterは全ての部屋に収納が設けてあることが分かります。
一瀬さん:「寝室1は大きなクローゼットを設けがちですが、リビングにも収納を設けたいというところからこのクローゼットを分割してリビング側からも使えるようにし、収納力の確保と使いやすさを意識しています。」
さらに近藤さんは、このリビング収納の棚をL字型にしていることにも注目。
近藤さん:「リビング収納はモノを出し入れする頻度が高く、収納するモノの種類が定まっていないことが特徴。このような場所において、L字型の収納棚に使い勝手で勝るものはありません。」
収納棚は「ヴィータス パネル」
寝室2の収納は、賃貸ならではのフレキシブルさが意識されています。収納棚にはリクシルの「ヴィータス パネル」をお使いいただきました。
一瀬さん:「ヴィータス パネルはリクシルの担当者と話しながら決めました。ここは賃貸物件なので住む人によって色んな使い方がされますが、収納をクローゼットやワークスペースとしてなど様々な形で使えるヴィータス パネルはベストマッチであると感じました。」
収納棚は「ヴィータス パネル」
ダイニングキッチンは動線から家事効率を考えたかたちに。キッチンはぐるりと回れるアイランド型のレイアウトを採用しています。
近藤さん:「私はこの動線を『ラウンド動線』と呼んでいますが、この動線以上に家事効率が上がる動線はないと思っています。」
ダイニングキッチンの収納も工夫を凝らしたかたちに。
一瀬さん:「賃貸の改修工事ということで取り組みましたが、部屋の広さと収納力のバランスの塩梅が難しかった部分です。」
その難しさの中で最大限のアウトプットとも言えるのが、ダイニングとキッチンどちらからもアクセスしやすい場所にある収納。
近藤さん:「ダイニングとキッチンで使うものは使い道に共有点があるものも多いため、スペース等の理由でそれぞれの場所に別の収納を設けることが難しい場合にはこのように1か所にまとめるのも良いです。またこの収納は少し広めになっているので、ダイニングで行なう家事で使う道具、例えばソーイングボックスなども置くことができて、家事がスムーズに進む収納になっています。」
魅せる玄関・見せない収納へ【優秀賞】
受賞会社:株式会社OKUTA 様
■ご担当者:LOHAS studio デザインチーム 様
■ホームページURL:https://www.okuta.com/
続いてはリノベーション物件の玄関空間の事例。郊外へ住み替えた共働き夫婦のお家です。
LOHAS studio デザインチームの皆さん:「帰宅したときに明るく迎えてくれるような開放感のある玄関にしたい。雑多な物は見せず、すっきりとした空間にしたいとご希望でした。」
ご希望を叶える手段として、トイレの向きを変えることで玄関・廊下の幅を通常よりも広く取る間取り変更を行なうことに。(玄関の幅は1620㎜)
LOHAS studio デザインチームの皆さん:「すっきり整った玄関は気持ちが豊かになりますし、ゆとりが生まれる空間にしたくて、このような間取りにしました。」
玄関横には『納戸』としてしっかりとした広さの収納を設けています。
LOHAS studio デザインチームの皆さん:「玄関のすぐ横に納戸を設けることで、生活感のあるものは見せず、いつでもすっきりとした状態を保てます。」
近藤さん:「玄関は外と中の中継地点なので様々なモノが集まる場所。荷物の仮置きやキャリーケース・季節家電など置き場に困るものまでおさまる収納力があり、扉を閉めると生活感を隠せるので非常に使いやすい収納スペースです。」
また、Beforeでもシューズクローゼットはありましたが、使い勝手が大きく変わる変更点があります。
近藤さん:「Beforeのシューズクローゼットは、アクセスするために一度たたきに降りなければならない間取りになっています。裸足で歩いているご家庭も多いのではないでしょうか。フロア続きになっていると家の中が清潔なだけでなく、すっきり感も維持しやすいです。」
また特徴的な『斜めのたたき』にも注目。
近藤さん:「より動きやすいようにスペースを広くする工夫として、斜めのたたきが取り入れられています。奥行の強弱がつき、コンパクトな玄関ではより効果を感じやすいです。」
引戸は「ラシッサS」プレシャスホワイト。引手も全てプレシャスホワイトに統一
LOHAS studio デザインチームの皆さん:「廊下の先のアクセントウォールをフォーカルポイントとするため、建具は引手までプレシャスホワイト色で統一。天井高に合わせて高さをオーダーして、すっきりと見せる工夫をしました。同様に、玄関収納もプレシャスホワイト色で揃えつつ、出がけの小物などが置けるよう、セパレートタイプの収納にこだわりました。」
近藤さん:「フォーカルポイントは良い玄関を作るための大事な要素です。素晴らしい提案でした!」
コンパクトで機能的な洗面空間【近藤典子賞】
受賞会社:株式会社アベルコ 様
■ご担当者:野田香純 様
■ホームページURL:https://www.avelco.co.jp/
こちらの写真はリフォーム前の様子
3つ目は洗面空間のリフォーム事例。
野田さん:「建具・化粧台・棚板をクリエモカにして統一感を出しました。限られた空間でも収納力があり、洗濯がはかどるような空間になるよう意識しました。」
洗面化粧台のカラーはクリエモカ。洗面横の棚は「すっきり棚」棚柱 アイアンブラック、棚板 プレシャスホワイト
近藤さん:「洗面化粧台の幅を大きくしたことがポイントですね。洗面化粧台の幅は900㎜以上あると、洗顔やドライヤーなど洗面室での様々な動作をゆとりを持って行うことができます。それだけでなく洗面台の縁に少し手をかけるスペースもとれるので、モノを取ったり振り返る動作も窮屈さを感じることがありません。」
洗面化粧台の幅を広げたことで洗濯機置き場は右側のスペースに移動しています。
野田さん:「洗面の右側の余ったスペースがデッドスペースにならないように、壁を立てて収納にしました。洗面所の入口からは見えないように工夫しています。」
洗濯機上の棚は「すっきり棚」棚柱 アイアンブラック、木製棚板 クリエモカ
洗濯機置き場の上には棚を設けています。また棚の手前には独立したハンガーパイプも設置しています。
野田さん:「上のハンガーパイプは邪魔になる懸念もありましたが、洗濯をするうえで絶対にあった方が便利だと思い設置しました。」
近藤さん:「ハンガーパイプが2本あることもポイント。前のパイプはもちろん便利ですが、上のパイプは干すだけでなく仮置き場としてもすごく良いと思います。バスタオルやバスマットなど、住めば住むほど実感するはず。」
野田さん:「カーテンをかければ来客時に洗濯機を隠すこともできます。」
暮らしの中の細かなシーンまでイメージしプランに落とし込まれた収納事例でした。