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INAXタイルコンサルティングルーム大阪 オンラインセミナー「メゾン・エ・オブジェ & パリ・デコ・オフ 2020から読み解くインテリアのこれから」

安藤眞代 (インテリアデザイナー、studio Ma 代表)

世界最高峰のインテリア&デザインのトレンドショーとして世界中の業界関係者に注目される『メゾン・エ・オブジェ 2020』は今年で25周年。同時開催されるインテリアテキスタイルのハイエンドブランドが集う『パリ・デコ・オフ 2020』も11回目を迎えました。新型コロナウイルスの世界的感染拡大の直前、2020年1月に開催されました。現地に赴いていたインテリアデザイナー安藤眞代さんにその様子をお話しいただきました。

セミナーはコロナウイルス感染拡大への対応として「ZOOM」を活用したオンラインセミナー形式にて開催されました。

安藤眞代 (インテリアデザイナー、studio Ma 代表)
安藤眞代 (インテリアデザイナー、studio Ma 代表)

『パリ・デコ・オフ 2020』パリ市内中心部にて開催

130社以上もの世界のトップクラスのファブリックブランドのショールームやポップアップショップで構成されるイベント

今年は、2020年1月16日~20日の5日間開催されました。昨年末から続くストの影響で、あちこちの地下鉄が止まり、道路も渋滞していたので、各展示を歩きながら見て回ることとなり、体力勝負でした。130社以上もの世界のトップクラスのブランドのショールームやポップアップショップはとても華やかで世界のインテリアの最新情報発信地という言葉がぴったりでした。通りには様々なエディターのリネンであしらわれた巨大なランプがあり、美しかったです。夜になるとライトアップもされ、とても綺麗でした。今年はエコフレンドリーな天然繊維を使った新作生地が多く見られました。

パリ・デコ・オフ 2020

Photo:Studio Ma

ピックアップ ブランド5選

安藤さんがセミナーでお話された中からさらに選りすぐった5ブランドを紹介します。

「エリティス(ÉLITIS)」

エリティス(ÉLITIS)

Photo:Studio Ma

南アメリカからの影響を受けたナチュラルの印象が強いコレクションでした。自然色カラーのサンイエローを中心に、植物繊維(ラフィア)とベルベット、リネンなどの自然なカラーの多色ミックスによる色使いで、今年は昨年よりもぐっとナチュラル寄りになっていました。ラフィアの籠など、ディスプレイやテーマにも多くナチュラルな素材が取りあげられていました。ベルベットで織物を駆使したタイプやベルベットの上にプリントしたものなどもありました。シックでありながらカラフルという印象でした。

「マニュエルカノヴァス(MANUEL CANOVAS)」

マニュエルカノヴァス(MANUEL CANOVAS)

Photo:Studio Ma

“色の魔術師”と称されるテキスタイルデザイナーであるマニュエルカノヴァスによって創設されたブランドです。90年の歴史があります。まさにパリのエスプリといえる存在です。会場はクラシックからマニッシュ、オリエンタル調まで様々なテイストに室内を演出されていました。訪問した際は、丁度プレゼンテーションをされており、デザイナーのマダムたちが話に聞き入っていました。

今年の新柄は大柄の植物のプリントでした。ベースは上の写真にあるようなローズにグリーンの植物柄でした。それに合わせた黄色系のグリーンのソファ、クッションにはくすみ感のあるピンクを合わせたトレンド感あるインテリアに仕上がっていました。

「アルデコ(ALDECO)」

アルデコ(ALDECO)

Photo:Studio Ma

ポルトガルが本社のファブリックメーカーです。社長のお嬢様(ミラビリスさん:写真右上)がプレゼンされている時間に丁度、行くことができました。今年のテーマは「INVICTA(インヴィクタ)」 直訳すると、「不屈の」といった意味です。文明の発祥地、起源、生の表現の信念に強く立ち、時間と歴史の中でその場所を征服するというイメージのコレクションで、全体的にプリミティブな印象のファブリックが多く見られました。

上の写真にある活気に満ちた刺繍は、ポルトガルの民俗芸術と伝統的な衣装からインスピレーションを得ています。鳥、花、精巧な刺繍装飾を強調する色とモチーフの大胆さが特徴で、熱帯の葉、果物、動物を現代風にアレンジされていました。芸術的で素晴らしかったです。

また、トレンド素材であるブクブクとした質感のブークレ(100%ポリエステル)も取り上げられていました。下の写真の右にあるように非常に柔らかくあたたかい肌触りのウールのような質感です。ブークレは他のコレクションでもよく見かけたので、あらためてトレンド感を出せる素材だと思いました。

アルデコ(ALDECO)

Photo:Studio Ma

「ピエールフレイ(Pierre Frey)」

ピエールフレイ(Pierre Frey)

Photo:Studio Ma

今回ピエールフレイは昔の柄のリバイバルをテーマとして発表していました。関連して行われていた本社倉庫でのアーカイブツアー(会社で保管されている100年以上前の商品を人数限定で見学できるツアー)に参加することができました。そこには昔の素晴らしい商品や資料が眠っていました。マリーアントワネットの時代のものなど、歴史的に貴重な資料やファブリックを多く見ることができました。当時の生地を今回はどのようにリバイバルしたかという展示もありました。当時の書類も紹介されていました。1868年(ナポレオン三世時代頃)ものと思われる男性のベストや発注書と生地の仕様が書かれた資料も出てきました。室内のミニチュア模型で、床や壁をどういったインテリアにするかをシミュレーションできるものもありました。こういった歴史あるものがしっかりと保管されていて、それを生で見られたことは非常に感慨深く、強く印象に残ったツアーでした。

ピエールフレイ(Pierre Frey)

Photo:Studio Ma

「K三(ケースリー)」

K三(ケースリー)

Photo:Studio Ma

今回もっとも印象深かったもののひとつが、デザイナー高田賢三氏がアーティステック・ディレクターを務める新しいブランド「K三」(ケイスリー)でした。彼が日本の伝統的な職人、製造業者とチームを立ち上げつくったカーペットの他に、ベッドリネンをはじめとするテキスタイルや家具、陶器などで構成されたコレクションでした。街中のアパートメントを展示会場として借り切って行われていました。

K三(ケースリー)

Photo:Studio Ma

中に入るととてもきれいで、賢三さんさすが、という感じでした。写真左は基本テーマのひとつMAIKOというブランド。京都の西陣織の職人技を駆使したカーペット、椅子張り、掛け軸、陶器という美しいコレクションでした。写真右2点は組み合わせの妙に老練した巧さが際立つSHOGUNというブランドです。色使いや柄に深みがありました。また、K三は展示会場が空間的にとてもきれいでした。いわゆる展示会場での展示という感じではなく、パリの街中にあるアパートメントという実際の住まいにコレクションが展示され、自然光を取り入れて商品が見えるので生地本来の美しさが映えて、とても良く見えていました。
(パリで元気なお姿を拝見した、高田賢三氏が新型コロナウィルス感染で10月初旬に亡くなられました。謹んでご冥福をお祈りいたします。)

『メゾン・エ・オブジェ 2020』パリ郊外にて開催

面積約11万3,000m2。大小のブースで約2900社が出展していました。パリ市内ではトップブランドの新作ファブリックの紹介でしたが、この会場では、家具、照明、小物など、インテリア全般に関わるアイテムが出展されていました。

メゾン・エ・オブジェ 2020

Photo:Studio Ma

ファブリックのカラー、パターン、クオリティから読み解くトレンド

黄色、マスタードイエローからオレンジカラーは、今回の展示でも多く見られました

Photo:Studio Ma

ミラノサローネ2019でも観られましたが、黄色、マスタードイエローからオレンジカラーは、今回の展示でも多く見られました。地球規模でデザインを考える観点からアースカラーはキーワードになっていると感じました。

サファリからインスパイアされたデザイン

Photo:Studio Ma

サファリからインスパイアされたデザインも多く展示されていました。とても素敵でした。

アールデコ系のデザイン

Photo:Studio Ma

ポストレトロモダンな解釈でのアールデコ系のデザインも各メーカー多く発表していました。

素朴な素材、籐編みラフィアなど

Photo:Studio Ma

フランスは他の国と比べてもインテリアに柔軟性があり、新しいアイデアや素材を取り入れるのが早いと感じます。今回見ていると、ごつごつとした素朴な素材、籐編みラフィアなどは注目されていると感じました。特に印象的だったのは、あえて手を加えない未加工の自然素材の人気が高かったことです。これは若い世代で顕著にみられるオーセンティシティ(本物であること)、耐久性、自然とのつながりを重視する時代性からインスピレーションを受けたものだと思いました。

注目デザイナー YURIHIMURO(氷室ゆり)

注目デザイナー YURIHIMURO(氷室ゆり)

Photo:Studio Ma

氷室ゆり氏、多摩美大卒のテキスタイルデザイナーです。デザインやインテリアの様々な賞の受賞歴も多く、期待の若手として、国内外問わず注目が高まっています。私も4年ほど前からミラノサローネの若手コーナーでも出展する彼女を応援していました。遊び心のあるデザインと独自の技術によるオリジナルファブリックが人気です。ファブリックをハサミでカットすると、異なる色柄が中から現れる二重構造になった布や見る方向によって布の絵柄が変化するアイテムなどもあり、今後も彼女の動向は注目したいと思っています。

シーシータピス(cc-tapis)

シーシータピス(cc-tapis)

Photo:Studio Ma

カーペットメーカー。カーペットの形を従来の四角や丸ではなく、色柄によって様々な形になるものが展示されていました。床に敷くだけではなく壁に掛けたりすることでより印象的に魅せていました。カーペットにLED照明が埋め込まれ、踏むと光るものもありました。美しいと言えるかはわかりませんが、自然にインスピレーションを受けたデザインもあり、見せ方にアレンジの加わったおもしろいブランドだなと思いました。

最後に
実物を自分の目で見る大切さについて

今回は教えている学校の授業との兼ね合いで、タイトな日程での視察でしたが、天候に恵まれ、歩きやすかったこともあり、トレンドをしっかりと掴んで来る事が出来ました。年間に海外で行われるインテリアの展示会は山ほどありますが今の自分の立ち位置、仕事、その必要性に応じて展示会を生で見る価値はとても大きいと改めて感じました。

特にインテリア、ファブリックは光の加減や見る角度によって色も質感も違ってきます。実物をリアルに見て触れることで自分の感性に入り込んできます。コロナ禍になりその大切さを身に染みて感じています。

また展示会ではデザイナーから直接話を伺える機会もあります。本人からお聞きする話は自分の感性に刺激を与え新たな感性を導いてくれると思います。

今回は私の目線で見て感じたイメージをお話しましたが、違う方が見ればまた違うかもしれません。一日でも早くリアルな展示会に行ける世界になればいいなと祈念しております。

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