TORAFU's TILE LAB 連載記事

最先端の加飾技術と表現からタイルの可能性を探る

素材をもとにした発想から、独自の世界観を構築するトラフ建築設計事務所(以下、トラフ)。タイルについても、製品一つひとつの特徴を見出すときに、プロジェクトの根幹に通じるコンセプトを引き出してきた。トラフが素材の特性を見極める秘策としているのが、製造の工程を直に見聞きすることだ。トラフの鈴野浩一氏がタイルの製造工場に訪れた際の視点を、今回は共に体感してみよう。

「石や木など天然の素材を再現した製品を含めて、タイルはカタログの写真を見ただけでは表情が伝わってこないことがあります。なるべく実物を見て、触って確かめたい」。

そう語る鈴野氏は、タイルの工場に足を運び、生産の工程について尋ね、実物をじっくりと見た。

まず紹介する生産拠点は、三重県にあるLIXIL伊賀上野工場。伊賀焼が隣の信楽焼と同じく有名なこの地は、良質な陶土に恵まれていることが特徴である。操業開始から55年を経たこの工場では、内装タイルや機能性壁材「エコカラット」を生産する。

タイル表面に装飾を加える「加飾」の技法と多彩な表現が、ここでは見られる。凹凸の付いたローラーでタイルに釉薬を転写し柄を付ける方式のほか、直近に導入し稼働しているのは、高精細な加飾をタイルに施せる設備である。1つの機械で色や柄を多彩に付けられることが最大の特徴で、加飾方式としてはいまや世界中で主流になっているという。

導入されているこの加飾設備は、幅が2m弱、長さが5mほどの大きなもの。内部はほとんど外から見ることができないが、メカニズムとしてはインクジェットプリンタと同様の方式で、タイル表面には接触せずノズルの先端(ヘッド)から釉薬(インク)を吹き付けることで、意匠の基となるデータを再現する。乾式プレスで成形されたタイルがラインで流れてくると、一方から吸い込まれるように機械に入り、加飾されてもう一方からすっとスムーズに出てくる。その後、ラインは窯へと続き、1100℃〜1200℃で本焼きが行われる。

LIXILタイル事業部タイル製造部伊賀上野工場技術課の宮原大輔氏は、この加飾手法のメリットを次のように語る。

「タイルとは接触しないので、表面に凹凸のあるタイルでも全面に柄や模様を付けることができます。またデータで入力して印刷するため、柄や色の種類は際限なくバリエーションをもたせられます。ローラーによる加飾では、柄や色を変えるときに洗って乾かすという空白の時間が生じますが、この最新の設備ではそうした段取りを考える必要がありません」。

再現できる色は、CMYKによる。タイルでは焼成する工程で色が変化するため、画像データをもとに加飾する場合は、現物の試作品を見ながら画像のほうを調整していくという。また、ツヤ感の出る透明は、柄として自由に付けることもできる。こうしてリアルな表現を追求したタイルの再現性は高く、鈴野氏も驚くところとなっている。

また、撮影した写真そのものをタイルに施すことも可能。元の写真画像データの解像度に応じて、大きく引き伸ばしても粗くなることなくタイル壁画などをつくることができる。そして、具体的な写真をタイルに加飾する以外のアプローチもすでに見られる。「デザイナーズタイルラボ」にラインナップされた、任意の画像から抽出した色を用いてストライプ柄にする「ファインストライプ(※)」に目を留めた鈴野氏。

※Color patterns created by Omoiiro (Alexis André / Sony CSL)

「色を捉えて抽象的な表現にすることは、面白いですね。立体的なレリーフと抽象的な柄を組み合わせていて、物質感とともに見る人の印象に残ると思います」。

最先端の技術と製法、そして発想に触れた鈴野氏は、昔ながらの手仕事の製法にも興味を抱く。ローテクな技法から生まれるタイルの、どのような点に関心を持つのだろうか。