TORAFU's TILE LAB 連載記事

進行中のプロジェクトで床タイルの張り方と効果を検証する

コンセプトから素材を導くようなかたちとは逆に、素材から空間を発想するようなアプローチをとることも多いトラフ設計事務所(以下、トラフ)。現在進行しているプロジェクトでは、複数の部位に使われているタイルが重要な役割を果たしているという。タイルの素材感や存在感、またタイルのあるシーンをもとに、どのように空間をつくり上げているのだろうか。

東京の表参道駅に近い〈パパブブレ 表参道店〉は、新築のテナントビル1階に入り、3月のオープンを予定している。この店舗をデザインしているトラフは、間口の幅が限られていながらも、青山通りに面した路面店であることを最大限に活かすことを検討。

「奥に向かって途中で広がる部分に、キャンディをつくるためのキッチンカウンターを設けます。通りからもカウンターが目立って見えるようにしたいのですが、どうしても距離が遠くなる。それで、通りからカウンターまでの店舗部分を路地に見立てて街路が店内に引き込まれるようにし、距離感を縮めることを考えました」。

鈴野浩一氏の頭にあったのは、パパブブレ発祥の地であるスペイン・バルセロナの路地空間。路面には石やタイルが敷かれ、両側には建物の外壁が立ち上がって連続する。この店舗でも、床には質感の高いボーダータイルを張ることを初期からイメージしていたという。

検討の末に、鈴野氏が選んだのはLIXILの「パティーノ」のボーダータイル。仕上げ工事に入る際には、タイルの現物を工事現場に持ち込み、並べながら確認。想定しているパターンや目地幅による見え方を細かくチェックした。

「面積が限られているので、タイルの色は明るめにして、優しく馴染む風合いを求めました。壁際はモルタル床を残しながら、ボーダータイルをヘリンボーン張りとすることで、中央には奥に導く矢印のようなパターンが生まれます。また、タイル幅56mmに対して目地幅を25mmなどと大きくとり、タイルの厚さを見せるように目地を深めにしようと考えています」。

説明しながらも、タイルに常に触れながら床の上で動かして表情を確認する鈴野氏。タイルの納まりまで詳細に検証することで、タイルがカーペットのように浮き上がって見える効果を狙っているという。

「CGで素材をマッピングするような検討はしたくありません。タイル張りの床というと背景に控えるようなイメージがありますが、タイルそのものから発想して、目地の幅や深さを調整することで、『地と図』の反転が起きる可能性もあるのです」。

なお、ボーダータイルの一部にはパールの釉薬をかけて再度焼き付け、きらめきを加える予定。キャンディのようなツヤ感のあるタイルを散りばめて張ることで、店内を巡る楽しさを演出しようと鈴野氏は考えている。

そして、路地をイメージする店舗部分には、ポップアップ・ショップとしても使える移動式のスタンドを特注し、設置する。この上にはキャッシャーを置くため、電源コードを床面に埋めるコンセントまで導く必要がある。ボーダータイルの1枚にはタイル専用のドリルで半円状の穴を開けることで、スタンドが移動したとしてもタイルの連続感を失わずに納めることを検討している。

詳細に及ぶ検討は、床だけでなく、タイルをポイント的に用いる壁でも念入りに行われた。次回は、壁にキャラクターを持たせたり、壁の存在感を高めるためのタイルの使い方を現場で検証する様子をお伝えする。