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ものづくりLAB

―タイル名称統一100周年企画―
ツバメアーキテクツ×LIXILやきもの工房
ツバメとつくるタイル 第一回

ツバメをインスパイアしたタイル

山道さんどう拓人さん:花壇瓦の転用

土留めから茶道具への転用

「日本には敷瓦の歴史があるなかで、土留めとしてつくられた花壇瓦が、風炉釜を置く茶道具に転用されていました。この関係がとてもおもしろくて、ものにさまざまな解釈を与える建築につながると思いました。今回の新ビルのプロジェクトだと、外構から内部へ、もっと身近な器にといった使い方、つくり方のイメージも浮かんできます」。千葉さん、西川さん、鈴木さん、みんなが「転用」という手法に刺激を受け、新たなデザインをどう組み込めるかなど話が弾んだ。

左:寸松庵伝来花壇瓦。上面に浮彫りが施され釉薬が半掛けされている。17世紀(江戸時代初期)。
右:名古屋市の古い邸宅「暮雨巷」の庭。花壇瓦は庭の土留めとして用いられている。

花壇瓦は茶の湯の風炉釜の釜敷き(釜置き)に転用され、その後、茶道具として定式化された。

西川さいかわ日満里さん:モザイクタイルのピース

カットワークモザイクタイルはチャーミング

「タイルはふだん、面として見えているんですが、モロッコのカットワーク・モザイクタイルは、じつは積木のような形のピースが埋め込まれていると知り、そのピースのひとつひとつがとてもチャーミングでびっくりしました」。京都の泰山タイルの集成モザイクや、東京国立博物館本館に残る壁面モザイクの表情が遠近で大きく違うことにも驚いたという西川さん。「タイルの空間性に改めて気づきました。これからタイルを見るときの解像度が変わると思います」。

左:14世紀頃にモロッコで製作が始まったカットワーク・モザイクタイル。ピースを裏返して組み合わせ、石膏などを流し込んでパネル化する。現代も製作される。(写真のタイルは1997年製作)
右:写真の右はカットワーク・モザイクタイルのピース。左は製作工房の写真。手で一つひとつカットしている。

千葉元生さん:テストピース

新鮮に映るテストピース

「やきもの工房で見たテストピースは、素地や釉薬ののり方が少しずつ違っていて、そこにタイルのやきものとしてのおもしろさを感じました。完成されたプロダクトではない分、手塗りによるムラや釉薬の溜まりが残っていたりと発見的でした。ものがどうやってつくられているのか見て取れるのもおもしろいです。」やきもの工房にとっては資料だが、ツバメのメンバーはテストピースそのものに表現の可能性を感じている。

左:やきもの工房が手掛けたプロジェクトのテストサンプル。素地の種類、釉薬の量、焼成温度によって発色などを比較した。
右:釉薬の色艶や性状、溜りの調子などを見たテストピース。

鈴木志乃舞さん:イギリスの単彩レリーフタイル

釉薬に閉じ込められた世界の魅力

「19世紀にイギリスで生まれたレリーフタイルは、表面はほとんど平滑ですが、深い凹凸感が閉じ込められているようです。絵柄の段差が大きいところほど釉薬が溜まり、色が濃くなるんですね。この手法を念頭に置いてタイルを考えたらおもしろいと思います」。鈴木さんは建築の解体後も残されるタイルをつくりたいという学芸員の後藤さんの思いを聞き、今回のプロジェクト後にも生きるタイルのつくり方を考えたいという。

19世紀、イギリス産業革命期に生まれた単彩レリーフタイル。透明感と滑らかさを特徴とする釉薬を用い、ミントン社が加飾技法を開発した。

ツバメアーキテクツはどんなタイルを考える?

タイルを巡ってあれこれ考え、対話したツバメアーキテクツ。タイルのもつさまざまな側面を常滑で体験したことで、メンバーそれぞれの考えに変化もあったようだ。これから、オリジナルタイルプロジェクトはどのように発展していくだろうか。新ビルのドーナツ屋やオフィスで何が始まるか。やきもの工房で、リアルにつくることも大きなイベントだ。楽しさと期待がどんどん膨らんでいく。(次回へ続く)

取材・文/清水潤 撮影/梶原敏英 イラストレーション/ニッパシヨシミツ

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