サッシの領域に
新たな一歩を刻む「ダスクグレー」。
デザインディレクターの久保田と
表面技術グループの大室が開発の背景を語る。
PRODUCT INTERVIEW 01
今までにない色で、
サッシの新領域を切り拓く
今のトレンドに応える色をつくりたい
かすかに青みのある深い無彩色が、移ろう光で表情を変える「ダスクグレー」。この美しい色には、LIXILが積み重ねてきた技術の粋が結集している。背景にあるのは、窓サッシに新機軸を打ち出したいというプロジェクトメンバーの熱意だ。
「ここ数年、住宅の外観はモダンでシンプルなデザインがトレンドとなり、外壁も白やグレーなどの低彩度色が好まれています。一方、窓サッシは業界全体としてもカラーバリエーションに長らく変化がなく、コモディティ化傾向にあった。今回、サッシのモデルチェンジに合わせてシンボルカラーとなる新色を投入することで、業界で差別化できると考えたのです」と、デザインチームの久保田は振り返る。
金属調のニッケルカラーや茶系で構成されていた窓サッシのカラーパレットに、新しい領域を生み出したい。そのビジョンのもと、久保田を中心とするデザインチームと、大室をはじめとした技術チームが集い、プロジェクトは動き出した。
技術の力で、深みのあるなじみ色を
新色決定のプロセスとして、まずは窓と建築の関係を整理するところから始めたと久保田は言う。「建築における“地と図”で考えると、華やかに目立つ要素を“図”とするなら、窓はやはり “地”にあたり、建築となじむべきもの。サッシの色としてふさわしいのは、外壁になじみつつ引き立てる色だろうと考えました」
その上で、2つの方向性が候補となった。「今の外壁はベージュや木目色のブラウンなど黄みや赤みがかかった色が多いのです。そこに同系調和する茶系とすべきか。あるいはその補色となる青みの入った色でコントラストをつけるか」(久保田)
さらに技術チームにもアイデアがあった。「これまでにない色をつくるためには、単に塗装を施すだけにはしたくなかったのです。素地の金属感を感じさせる陽極酸化皮膜に、半透明のアクリル電着塗膜で薄い色を重ねて、2層で色をつくり出す手法を取りたいと考えていました」と大室は語る。
この技術を用いれば、色の美しさだけではなく耐候性能も付与できる。そこで実際にカラーサンプルを製作し、色の検討に入ることとなった。
100以上の色から絞り込んだダスクグレー
色の検討には、茶系からグレーまで膨大な数のカラーサンプルが用いられた。大室ら技術チームが「野田R&Dセンター」のラボ機で一つひとつ色を調合して製作したのだ。
「通常であれば塗料はメーカーの既製品を使うことが多いですが、塗料メーカーに依頼するとロットが大きくなり時間を要する。また今回は機密性の高いプロジェクトでもあったので、一から顔料配合を設計して独自の色レシピをつくったのです」(大室)
色の検討には、定番色からトレンド色まで約40色の外壁サンプルを使用。標準光源をはじめ、蛍光灯色や外光など4光源を用いて、一つひとつのカラーサンプルについて検討を重ねた。
チームでディスカッションを繰り返し、“外壁を引き立たせるわずかに青みを感じるグレー”という方向に決定。「今はブラックのサッシが人気なのですが、そことの差別化が図れる色として、ブラックほど黒すぎず、かつ外光下でもしっかりグレーを感じられる色を狙いました」(久保田)
将来的に内装材にも導入できるよう、屋内でも屋外でも映える色という意図もあった。しかし屋内の明るさでは良くても外光下では白飛びしてしまう色が多く、微調整に難航。ほんのわずかな差にも妥協せずカラーサンプルを作成し、チューニングを繰り返した。
さらに色を絞り込んだ上で、建築会社様をはじめとしたプロユーザーにも客観的な評価を仰いだ。「この色なら使いやすい、合わせやすいとのお声をいただいて、改めて“これならいける”との確信を得たのです」(久保田)
大室らがつくったカラーサンプルは、なんと100色以上。1年強の時間を費やして、ダスクグレーという色を練り込んだのである。