まどからはじまる5つの物語 Episode02「おてんきまど」 まどからはじまる5つの物語 Episode02「おてんきまど」

LIFESTYLE まどからはじまる5つの物語
Episode02「おてんきまど」

日々の暮らしに合わせて窓を選びたい。そんな思いを込めて「まど」と「住む人」の心地よい関係を模索するプロジェクトを立ち上げました。
新たな“まどのカタチ”を提案してくれるのは、暮らしまわりの快適さ、豊かさを追求する「心地よい暮らし研究会」(略して、ココ研)のみなさん。住む人の目線で考え、日常から生まれた窓についての暮らし提案を5回シリーズでお届けしています。
2回目は「おてんきまど」。雨の日のお出かけがスムーズになるまどの物語です――――

お出かけ直前のお天気チェックで
雨の日も晴れの日も準備万端

「いってきまーす!」と元気よく出てった娘が戻ってきた。「おかあさーん、雨降ってるよー」というトーンダウンした声が聞こえ、何やらゴソゴソと長靴に履き替えて、またドアを開け外へ出て行く。

朝ごはんのときに、「雨が降ってるから、傘を忘れずにね」って言ったのに。子どもって今を生きているから、私の小言もすぐ忘れちゃうのよね…。

いくら言葉で伝えても、防音効果の高い近頃の家では、雨音もロクに聞こえないから子どもたちも今一つピンとこない。とくに“しとしと雨”の日なんかは、必ず傘を忘れて飛び出してしまう。

結局、私がわざわざ長靴と傘を玄関に用意しておかなくちゃダメなのかしら? 忙しい朝はなるべく子ども自身で判断して、スムーズに出かけてくれるとラクなんだけど。
あぁ、外に一歩出る前に、その日のお天気がパッとわかる方法ってないのかな……
出かける直前にわかれば、子どもたちだって雨の日は長靴、晴れの日はスニーカーをきちんと選んで履くことができる。せっかく出かけたのに傘を取りに戻ってくるなんていう面倒もなくなるはず―――

今回、「心地よい暮らし研究会」が提案するのは、そんなお母さんの子どもへの想いをカタチにした「おてんきまど」。梅雨の時期があったり、大雨や台風が来たりと何かと移り変わりが激しい日本の天気は、お出かけ前の準備もひと筋縄ではいきません。ましてや、子どもにとってはなかなかの難問。そこで、玄関にある窓でその日のお天気チェックができるちょっと便利なアイディアを考えました。
どんな窓の活用法なのか、2人の娘さんを持つシンプルライフ研究家のマキさんに教えてもらいました。

子どもの自立を促し
忙しいお母さんを助ける窓

「うちの子どもたちも忘れ物が多くて、出かけたと思ったら取りに戻ってくることもしょっちゅう(笑)。でも、今の家に住みはじめてからは、雨の日に傘を持ち忘れることが減ったんです」

その理由が「おてんきまど」。じつは、マキさんのご自宅にも「おてんきまど」があります。玄関横にある靴を収納したチェストの上、ちょうど靴を履くときに窓の外に自然と目が行く場所―――

子どもの自立を促し忙しいお母さんを助ける窓 子どもの自立を促し忙しいお母さんを助ける窓

「住みはじめたときは気にも留めていなかった窓ですが、これがなかなか便利。空模様がはっきり見えるので、今日はどんなお天気なのか、出かける直前にチェックできるんです。この窓があるおかげで、子どももその日の天気に合わせて靴を履き分けることができるようになりました」

今では、子どものために靴や傘をわざわざ準備しておく必要もなくなったそう。

「わが家は朝テレビをつけないしリビングにいると雨音もしないので、子どもたちも雨に気づかないんです。ひと言、雨降ってるよって言っても出かける前には忘れちゃう(笑)。でも、出かけに空模様が目に入れば子どもだってすぐに行動に移せます。忙しい朝に雨の日グッズを用意する手間が省けて時短にもなるし、子どもの自立にもつながるので大助かりです」

大切なのは
空がくっきりと見えること

玄関にあって空が見える窓。それが「おてんきまど」と言えそうですが、ほかにも条件はあるのでしょうか?

「一番大切なことは空がくっきり見えることです。曇りガラスや型ガラスなんかはNG。単純に雨か晴れかだけでなく、空がうす曇りなのか、カンカン照りなのかまでわかるクリアなガラスがおすすめです。はっきり空が見えれば、例えば日射しが強そうだったら迷わず日傘やサングラスを手にとれるし、どんより曇り空ならストールや上着を持って出かけたり。そんな外出前の判断もスムーズになりますよね」

確かに、微妙な気候の変化によって、持ち物や服装は変わってくるもの。外に一歩出る前にそれがわかれば子どもだけでなく大人にとっても好都合です。

「もうひとつは窓の形。縦長ではなく、横長の窓がいい。なぜなら、限られたスペースでなるべく広く空を切り取りたいから。縦長だと必然的に空が見える部分が少なくなってしまうでしょ? 横に長ければ大きな窓でなくてもいいんです。わが家の『おてんきまど』は普通の腰窓くらいのサイズですが、横長のスリット窓で十分だと思います」

それに、横長で、空が見える高い位置にある窓なら、外からの視線も気にする必要はありません。玄関は外とつながる接点なのでプライバシーにも気をつけたいところです。

お出かけ前の動線を考えて
「おてんきまど」を配置

「わが家の『おてんきまど』も靴の入ったチェストの上にありますが、位置は下駄箱の上あたりがベストですね。子どもが下駄箱から靴を取り出すとき、ふと目が行く位置。靴を選ぶ流れでついでにお天気チェックもできれば、外出時の動線もさらにスムーズになるはずです」

シンプルライフを提唱するマキさんにとってムダなモノだけではなく、ムダな動きをなくすことは生活の中の基本ルール。洗濯をしたり、掃除をしたり、出かける準備をしたり、そういった日常の動線を効率よくすることでムダな動きがなくなり、少しずつ時間の余裕も生まれてくるのだそう。

「雨が降っているかどうかわからなかったら、ドアの外に一歩出て確認すればいいんじゃない?って考える人も多いのでは? でも私にとっては、その一歩がムダ! そのちょっとした“日常のムダ”をつぶしていくことで、時間だけじゃなく心にもゆとりが出てくるんです」

玄関のドアを開けて外に出て、天気を確認してまた戻る。よくよく考えてみると、忙しい朝をさらに慌ただしいものにしてしまう行為です。もし、下駄箱に手を伸ばしたときに、「おてんきまど」が目に入れば……朝のお出かけ動線がスムーズになって、マキさんが実践するシンプルライフに一歩近づける気がします。

沖縄に伝わる「雨端」から
ヒントを得て

もうひとつ、マキさんがおもしろいアイデアを提案してくれました。それは、古い沖縄の家にとり入れられている「雨端(あまはじ)」にまつわること。

「沖縄は家族旅行で何度か訪れていて大好きな土地。現地の古い民家には、『雨端』という深く庇が出た部分があって開放的な軒下空間を作っていますが、雨の日にそこで雨宿りをしていると雨樋がないので庇からまとまった雨水が流れ落ちてきてまるで滝のようでした。『おてんきまど』のことを考えているときに、ふとこの光景が頭に浮かんだんです」

沖縄に伝わる「雨端」からヒントを得て 沖縄に伝わる「雨端」からヒントを得て

「雨端」は、台風や大雨が多い沖縄特有のもの。雨の日の沖縄の風物詩ともいえる風景です。

「この雨端を『おてんきまど』にとり入れたらどうかな?と。小雨のときなんかは、雨が降っているかどうか、ちょっと見えにくいですよね。窓の上に庇を設置して、雨のしずくがまとまって落ちるようにしたらパッと見ただけで雨かどうかが判断できてさらに効率的!」

沖縄に伝わる「雨端」からヒントを得て 沖縄に伝わる「雨端」からヒントを得て

なるほど、言われてみると、細かい雨は窓越しでは見づらく、思わず窓の外へ手を伸ばして雨を確認するなんていう経験をしたことがある人も多いのでは? また、高い場所にある「おてんきまど」はお手入れするのがタイヘン。その点庇があれば汚れにくいし、家の劣化も防ぐことができます。

「それに、流れ落ちる雨の様子が家の中で感じられるのも風情がありますよね。沖縄の南国らしい雨を連想して、ちょっぴり旅気分に浸れるのでは?(笑)」

とマキさん。そんなふうに雨降りの情景を「おてんきまど」から楽しむことができれば……何かと憂鬱な雨の日も、いつもより気分よく過ごすことができるかもしれません。

マキさん マキさん

マキさん

広告代理店に勤務し、クライアントの企業ブランディングや採用コンサルタントの仕事をするワーキングマザー。また、シンプルライフ研究家としてTV、雑誌で活躍。ラク家事、時短料理の著書を10冊出版。講演活動も全国規模で行っている。ブログ「エコナセイカツ」

http://econaseikatsu.hatenadiary.com

心地よい暮らし研究会

整理収納のプロ、雑誌やテレビで生活提案をする暮らしのエキスパートが集まり、掃除、洗濯、片づけ、料理など、暮らしにまつわるすべてのことを、いかに自分にとってラクで心地よくするかを追求。メンバーは、宇高有香さん、マキさん、中山あいこさん、大木聖美さん、近藤こうこさん。