現地レポート 2017・2018

過去2年の「みんなにトイレをプロジェクト」は、 LIXIL の一体型シャワートイレを1台ご購入につき簡易式トイレシステム「SATO」1台寄付する 取り組みで、約40万台寄付します。皆さまのご支援、ご協力、誠にありがとうございました。
*「SATO」一台あたりの平均利用者数を5人と想定し算出

これまで現地に届けられた「SATO」は、人々の暮らしにどんな変化をもたらしているのでしょうか。現地の様子をお伝えします。

過去2回実施による寄付について(2017年、2018年)
寄付予定数 (簡易式トイレシステム「SATO」)総計 412,259台
対象地域 インド、ミャンマー、タンザニア、ブータン、ルワンダ、バングラデシュなど
協力団体 UNHCR / WaterAid / BRAC / Habitat for Humanity Japan/Bhutan Toilet Organization

インド トリチー村

以前は人目を避けるため、みんな早朝に歩いて森へ出かけていました。

写真:カンナヌールパラヤン村で暮らすシャンティ・ビジャヤクマールさんと孫のシャミラさん

カンナヌールパラヤン村で暮らすシャンティ・ビジャヤクマールさん(右)。孫のシャミラさん(左)と共に、トイレのある暮らしを心待ちにしていました。

乾いた大地を通り過ぎる熱風。乾季の南インドには暑い日差しが照りつけ、日中の気温は40℃にも上ります。飛行機と車を乗り継いで、やってきたのはタミルナドゥ州トリチー。市街地を出ると、インフラの整備が進んでいない集落が点在しています。
2017年よりLIXIL が実施している「みんなにトイレをプロジェクト」で、簡易式トイレシステム「SATO」(以下「SATO」)が寄贈された地域がここあります。約1,000世帯が住んでおり、産業はゴムと砂糖の生産が中心。泥と石で造られた簡素な家屋が建ち並びます。電気とスマートフォンは普及していますが、水の供給は2日に一度。使用量は世帯あたり1日5リットルほどに限られています。
最初に訪ねた家で出迎えてくれたのは、85歳になるシャンティさん。スリランカから村に嫁いで65年になります。現在は嫁、孫、孫の妻、2人の曾孫という6人家族。大黒柱の孫は、ゴムの原料液を採る仕事をしています。

地域全体での意識改革が進行中

写真:シャンティさんの曾孫にあたるモニカさん

シャンティさんの曾孫にあたるモニカさんは10歳。新しいトイレのある学校に楽しく通っています。

新しい「SATO」のトイレがここに設置されたのは3ヶ月前のこと。村の公衆衛生について、彼女が現状を語り始めます。
「この集落では150箇所にトイレが設置されましたが、まだ全世帯ではありません。「SATO」は他の簡易トイレよりも品質が良いので政府も導入に積極的です」
トイレ用の穴を掘るのは各世帯の仕事。穴は2つ掘って交互に使い、乾燥させた排泄物を肥料として利用しています。
この集落には以前から公共トイレがありました。しかし水不足から掃除もできず、やがて人々は屋外の排泄に戻ったそうです。
「そもそも狭い場所で用を足すことに慣れていない人もいました。何しろ何世代にもわたって屋外で排泄する習慣を続けてきたのですから」
しかし現在、そんな風習を変えようという機運が高まっています。屋外で排泄しそうな人を見たら「なぜそこでするの?」と声を掛けられます。昔は隣の家との間に木や草の茂みがありましたが、人口が増えて死角もなくなりました。そんなとき、我が家に「SATO」がやってきたのです。
「以前は人目を避けるため、みんな朝の4~5時頃に出かけていました。森に近い場所には蛇や虫などの危険生物がいます。でも自宅にトイレができたことで、家族みんなの生活が安全になりました。集落の人々の考え方も大きく変わりつつあります」

写真:シャンティさんの曾孫にあたるモニカさん

シャンティさんの曾孫にあたるモニカさんは10歳。新しいトイレのある学校に楽しく通っています。

念願だった家族専用のトイレが、村の生活を変えました。

写真:自宅の敷地内に建てられたトイレ

トイレは自宅の敷地内に建てられています。

匂いがなくなり、大量の水も不要

隣の集落で、パパさん一家を訪ねました。夫婦と4人の子どもが、1つの部屋に家族全員が暮らしています。大人は朝4時に起きて建築や皮なめしの仕事に出かけ、帰ってくるのは午後5時過ぎだとお母さんが教えてくれました。彼女も「SATO」の設置をとても喜んでいる1人です。
「共同トイレのようなトイレの匂いが「SATO」にはありません。乾季は水不足なので少量の水で流せる仕組みも助かります。夫に持病があるので、トイレまで長い距離を歩く必要がなくなって喜んでいます」

子どもたちに会うため、村の学校を覗いてみました。ここでは初めて女子専用トイレが設置されたばかり。子どもたちも学校に来たがるようになり、公衆衛生の重要性を家庭内で広めてくれます。
元気な子どもたちに将来の夢を聞いてみると「健康な身体でたくさん勉強をして、政府の仕事に就いて家族と暮らしたい」「収入が安定したビジネスマンになりたい」などの答え。この村でずっと暮らしたい子もいれば、外国で働きたいという子もいます。

上下水道が十分に普及していない地域で、簡易式トイレシステム「SATO」は人々の暮らしを大きく変える力があります。LIXILは2022年までに、41万台以上の「SATO」の寄付を完了する予定です。

写真:パパ・サンジーブさん / 少量の水で流せる「SATO」

写真左 パパ・サンジーブさん(右)の自宅は典型的なインド式住居。これまでは村外れの屋外で用を足していました。
写真右 干ばつの村では、少量の水で流せる「SATO」は重宝されています。

取材協力:Habitat for Humnanity India

バングラデシュ

2017年12月、なかでも緊急性の高い地域の一つとして、バングラデシュのロヒンギャの人々の難民キャンプに国連UNHCR協会および国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)を通じて、5,000台の「SATO」が届けられました。6月から10月のモンスーン時期を前に、水と衛生環境が改善しつつある現在の難民キャンプの様子をお伝えします。

「ロヒンギャ難民キャンプ」
について

地図:インド、オスマナバード地方まで移動略図。ムンバイまで飛行機、その後鉄道で435km。

2017年8月25日にミャンマー国内で起きた暴力行為をきっかけに、70万人(2018年5月時点)を超えるロヒンギャの人々がバングラデシュに逃れました。避難した人のうち、55%が18歳未満の子どもです。
難民の多くは、コックスバザール近郊のクトゥパロンキャンプとナヤパラキャンプの2箇所で生活しています。

発生から約10ヶ月を経て、長引くキャンプ生活は、一時的な措置の緊急フェーズから、耐久フェーズに入りつつあります。具体的には、これまでの数万人弱向けの既存施設の活用から、数十万人規模の「人道的基準」※1を満たす施設として、インフラ整備の拡張が行われています。

※1「人道的基準」とは、トイレは20人(4家族)に1基と言われています。 出典:スフィア・ハンドブック 2011年版(日本語版)

ロヒンギャ難民キャンプでの「SATO」

そのような状況の中、「SATO」の1)フラップ構造による臭いと虫の防止、2)パイプ不要の構造により、設置が簡便で誤使用が低減されるなど、優れた機能性と高い価格競争力が評価され、キャンプエリアの標準仕様として承認されました。これにより、効率的な汚物処理と衛生管理を含む、標準化された衛生インフラを提供することが可能となりました。3月末時点では、キャンプエリア全体で約5万基※2のトイレが設置されました。

※2 SATO以外の仕様のトイレも含む

  • 左2基のトイレを先に稼動し、汚水槽がいっぱいになると右側に追加のトイレを立ち上げる仕組み

  • キャンプエリアの標準仕様として承認された「SATO」

  • 識字率の低いロヒンギャ難民のために、トイレの衛生的な使い方を図解で表示


インド ワグホーリ村

「みんなにトイレをプロジェクト」による1台目の「SATO」が寄付された様子をお届けします。

国を挙げて衛生課題に取り組む

世界で2番目に人口の多い国、インド。屋外排泄をする人は3億人を超え、人口の約4分の1を占めます。
この問題を解決するため、モディ首相は、2019年までにすべての家庭にトイレを設置することを目標として掲げた「クリーン・インディア」キャンペーンを実施。
現在、インド国内では毎日約47,000台のトイレの施工が進められています。

地図:インド、オスマナバード地方まで移動略図。ムンバイまで飛行機、その後鉄道で435km。

インド最大の都市ムンバイから電車で9時間、約430km離れたオスマナバード地方のワグホーリ村には約250世帯が住み、主に農業や畜産で生計をたてています。全世帯のうち100世帯は自宅敷地内にトイレがなく、多くの村人が日常的に農地での屋外排泄を余儀なくされています。この村では、経済的な理由に加え、制限ある生活用水をトイレの洗浄に使うことができないなどの理由から、トイレの設置がなかなか実現していませんでした。
今後は、国際NGO「Habitat for Humanity」を通して、トイレが無い家庭を対象に、「SATO」が寄付される予定です。

現地の様子

写真:民族衣装を着ているメーラさん

村の女性たちのリーダー的存在のメーラさん。屋外排泄の危険性について訴え、トイレの重要性に関する村人の理解向上に大きく貢献しています。
特に女性の安全や尊厳に悪影響を与える屋外排泄を無くすためには、「女性が家庭の中で意見を言えるようになることが大切」と語ってくれました。

  • ワグホーリ村の様子。

  • 女性たちは「SATO」に興味津々。

  • 子供たちの夢は先生、警官、医者、等。

「SATO」の設置を
楽しみにしている
モハメドファミリー

(左から)義理のお母さん・パーヴェーンさん・娘さん・義理のお兄さん・義理のお父さん。建設中のトイレの前で「完成まで20日くらい」と喜ぶパーヴェーンさん

「SATO」の設置を楽しみにしているモハメドファミリー

義理の両親の家と中庭をはさんで建てられた家に住むパーヴェーンさん(22)は、義理のお父さんとお兄さんが建設中のお風呂とトイレの完成をとても楽しみにしています。現在子供と一緒に早朝 と夕方の2回、自宅から 徒歩約20分もかけて農地へ排泄に出かけており、その生活はとても不便だと言います。
1年ほど前からトイレの重要性を認識し始め、今回「SATO」が寄付されることで「毎日決まった時間に遠く離れた場所に排泄に行く必要がなくなり、うれしい」と笑顔を見せてくれました。

写真:SATOを手に笑顔の少女

娘たちの健やかな
成長のために設置を決めた
アウリーファミリー

娘たちの健やかな成長のために設置を決めたアウリーファミリー

マニーシャさん(30) は、自宅が手狭になることを覚悟の上で、室内にトイレの設置を希望しています。所有農地がないため、日昇前と日没後の誰もいない時間帯を狙い、他人の農地へ排泄に行くのは危険だからです。
子供たちは学校のトイレで排泄する習慣が身についていますが、放課後は施錠されるため、真っ暗な農地に子どもを連れて行くことも。あと数年で月経を迎えるであろう娘たちのためにも、トイレは必須だと考えています。
半年以内に「SATO」が設置されると聞くと、「屋外排泄をしていることで、子供たちがからかわれなくなると思うと安心する」と話してくれました。

(左から)マニーシャさんとその娘たち。妹(右)の夢は学校の先生になること。

今後も、現地の様子をお伝えしていきます。

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