現地レポート 2017・2018

2017年・2018年に実施した「みんなにトイレをプロジェクト」は、LIXILの一体型シャワートイレを1台ご購入につき簡易式トイレシステム「SATO」1台寄付する取り組みで、約40万台の寄付を予定しています。皆さまのご支援、ご協力、誠にありがとうございました。

これまで現地に届けられた「SATO」は、人々の暮らしにどんな変化をもたらしているのでしょうか。現地の様子をお伝えします。

過去2回実施による寄付について(2017年、2018年)
寄付予定数 (簡易式トイレシステム「SATO」)総計 412,259台
対象地域 タンザニア、ザンビア、モザンビーク、ブータン、インド、ケニア、ギニアビサウ、バングラデシュ、ミヤンマーなど
協力団体 UNHCR / WaterAid / BRAC / Habitat for Humanity Japan/Bhutan Toilet Organization

バングラデシュ

現在、地球上の4人に1人が安全で衛生的なトイレを利用できない環境にあると言われています。この現状について、より多くの方へ認知・理解いただき、安全で衛生的なトイレの整備・普及を進める「みんなにトイレをプロジェクト」。このプロジェクトは、世界中の人々の衛生環境の改善に貢献することを目指して、2017年にスタートしました。開発途上国向け簡易式トイレシステム「SATO」(以下、SATO)の寄付台数は、過去2回の実施で合計約40万台となりました。皆さまの温かいご支援・ご協力、誠にありがとうございます。今回は、バングラデシュでのプロジェクトの様子をご紹介します。

生活インフラの整備や貧困の問題を抱えるバングラデシュ

写真:バングラデシュの人々の様子
写真:バングラデシュの人々の様子
写真:バングラデシュの人々の様子

バングラデシュではこの数十年の間に都市化が急激に進み、経済も急速に発展を遂げています。その一方で、台風などの災害が多発する一部地域では水道水やガス管の設備が整っていないほか、国の広範囲に及ぶ貧困の問題などを抱えており、衛生的なトイレの設置が難しい状況にある人も多くいるのが現状です。そういった困難を抱える住人への解決策として、低コストかつ流すための水が少量で済み、悪臭や虫の発生を防止し、耐久性・衛生面に優れているSATOの導入が推進されています。

写真:バングラデシュの人々の様子
地図:バングラデシュ

[ バングラデシュ ]
バングラデシュの人口は約1億6,000万人、その大半はベンガル人が占めています。南アジアに位置し、北と東西の国境はインド、南東部はミャンマーに面し、南側にはインド洋が広がっています。
行政区画として、8つの管区の下に、県、郡が置かれており、SATOは現在250の群で導入が進んでいます。

SATOの導入により、家族全員が衛生的なトイレを使える環境に

写真:SATO設置後の様子

ラニサンガキル群にあるソンダーライ村で暮らすミナ・アクタルさん

バングラデシュの人々にとって、家庭の敷地内にトイレがあるかどうかは彼らの尊厳にも関わります。しかし、貧しい人々にとっては家庭にトイレを設けることも簡単なことではなく、持っていたとしても衛生的な状態を保つことは困難です。

夫と2人の子どもと生活しているミナ・アクタルさんは、貧しい生活のために家庭に衛生的で清潔なトイレを設けることができませんでした。彼女の家のトイレは漏れたり壊れたりしていたため悪臭が酷く、2人の子どもたちはトイレを使いたがらず、いつも外に出て排泄をしていました。親戚たちも、このトイレが原因で家に泊まりたがりませんでした。現在ミナさんの家族は、SATOのトイレを導入したことで全員が衛生的なトイレを使えるようになり、悪臭のしない健康的な環境で暮らせるようになりました。また、清潔なトイレを家庭に持つことができたことは、彼女たちのコミュニティーにおける立場や尊厳を守ることにもつながりました。

写真:SATO設置後の様子

ラニサンガキル群にあるソンダーライ村で暮らすミナ・アクタルさん

不衛生なトイレを使用していた貧しい人たちに向け、
普及が進んでいます

写真:設置前のSATO

SATOが導入される以前、彼らは便槽すらない高床式のものや、水を据え付けた便器のない便槽式トイレを使用していたほか、一部では屋外排泄なども行われている状況にありました。設置されているトイレ自体も適切な管理がされておらず、汚れや破損などにより安全面や衛生面に問題がありました。

写真:市民意識向上キャンペーンの様子

市民意識向上キャンペーンの様子

SATOの導入で、今まで家庭の不衛生なトイレを使用していた人や、離れた場所までトイレに行っていた人々が自宅敷地内にトイレを持てるようになりました。住民からも環境にやさしく衛生的であると歓迎されており、今後もさらなる普及が期待されています。

写真:高床式トイレ

高床式トイレ

写真:適切な管理が保たれていないトイレ

適切な管理が保たれていないトイレ

写真:SATOになったことで、トイレに愛着を持ち、外観まで整える人も

設置も簡単で、安全で清潔なSATO

図:SATO1台あたりの平均利用者数を5人と想定し、算出/2019年11月現在)

SATO1台あたりの平均利用者数を5人と想定し、算出/2019年11月現在)

※ ロゴ:特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン  協力団体 : BRAC

ケニア

現在、地球上の4人に1人が安全で衛生的なトイレを利用できない環境にあると言われています。この現状について、より多くの方へ認知・理解いただき、安全で衛生的なトイレの整備・普及を進める「みんなにトイレをプロジェクト」。このプロジェクトは、世界中の人々の衛生環境の改善に貢献することを目指して、2017年にスタートしました。開発途上国向け簡易式トイレシステム「SATO」(以下、SATO)の寄付台数は、過去2回の実施で合計約40万台となりました。皆さまの温かいご支援・ご協力、誠にありがとうございます。今回は、ケニア カロベエイ難民居住地区のプロジェクトの様子をご紹介します。

難民も地元住民も自立・共存できる街を目指す
カロベエイ難民居住地区

写真:家の前に立つ女性
写真:SATOを手に持つ男性
写真:カロベエイ難民居住地区

2016年に設立されたカロベエイ難民居住地区には、紛争などの様々な要因により、ケニアにやってきた約38,000人の難民が暮らしています。彼らの多くは南スーダンの出身で、その他もエチオピア、コンゴ民主共和国、ソマリアなど様々な土地から移ってきた人々です。

このカロベエイ難民居住地区は一時的な仮住まいではなく、地元の住民とも共生し、半永久的にそのまま居住できるよう、計画的な街づくりが行われています。開設当初、トイレは4世帯につき1基が建設されていましたが、現在、街づくりの一環として新しく建設する住居には、世帯向けのトイレを設ける決まりがあります。その世帯トイレの改善に自ら取り組む住人を応援しようと、LIXILは、支援団体を通じてSATOを寄付しました。

写真:家の前に立つ女性
写真:SATOを手に持つ男性
写真:カロベエイ難民居住地区
地図:ケニア共和国カロベエイ難民居住地区

[ ケニア共和国 ]
ケニアは人口約4,970万人、東アフリカに位置する多民族国家です。カロベエイ難民居住地区があるトゥルカナ郡はウガンダ、南スーダン、エチオピアの国境と面しており、この地域は半乾燥地で1年を通して暑く、近年は干ばつが深刻化しています。

安全面・衛生面で課題を抱えていた従来のトイレ

写真:旧式の簡易トイレの様子

蓋がなく、悪臭がひどい従来のトイレ

写真:SATO設置後の様子

SATOは設置も簡単、水も少なくて済み、安全で清潔です

共有トイレは、周囲を鉄板で囲っただけで屋根もなく、掘った穴の上にコンクリートの基盤を置いた簡素なものです。適切な利用・管理もされておらず、4世帯(平均20人)で使用するため排泄物が溜まるのも早く、悪臭や虫が発生するなど不衛生な状態で、落下を怖がる子供もいました。住人も不快なトイレを使いたがらないだけではなく、元から使う習慣がない人も多く、屋外排泄が深刻な問題になっています。こうした衛生に対する意識の低さも起因し、下痢症など、適切なトイレの利用と手洗いで防げるはずの病気が後を立たない状態でした。

写真:旧式の簡易トイレの様子

蓋がなく、悪臭がひどい従来のトイレ

写真:SATO設置後の様子

SATOは設置も簡単、水も少なくて済み、安全で清潔です

SATOの設置でより衛生環境の整備された街づくりへ

写真:SATOの機能や設置方法についてのワークショップの様子

SATOの機能や設置方法についてのワークショップの様子

写真:SATOになったことで、トイレに愛着を持ち、外観まで整える人も

SATOになったことで、トイレに愛着を持ち、外観まで整える人も

SATOはテスト運用として、2018年6月、障害のある方や高齢者がいる家庭など、50世帯に導入されました。その結果、導入された家庭は確実にトイレを利用するようになっただけではなく、清潔に保とうと管理するようになりました。トイレに愛着を持ち大切に利用しようという意識が生まれたことは、今後の居住地区全体の衛生環境や意識改善への大きな第一歩です。

また、難民居住地区の住人が支援に頼らずとも自立して暮らしていけるよう、SATOのワークショップを行うなど、自発的に衛生環境の改善を図っていけるような仕組みを作ることで、住人たちの生活にも貢献しています。今後もSATOは、学校などへのさらなる普及が期待されています。

※ ロゴ:特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン  協力団体 : 特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン

SATOを現地で使用した様々な方から好評をいただいています。

コンゴ難民の男性は「以前は臭いが移るのが嫌で、シャツなどを脱いでからトイレに入っていましたが、SATOになってその心配がなくなりました。」と、臭いがなくなったことを喜んでいました。

また、南スーダン難民の女性は「これまでトイレ掃除なんてしたことがありませんでしたが、SATOになってからは毎朝掃除をするのが日課になりました。」と、大事に管理していることを教えてくれました。

  • 写真:洋式に座る人

    洋式に座った人々からも「脚に負担がかからなくていい」と好評でした

  • 写真:SATOを手に持つ人々
  • 写真:SATOの使い方を学ぶ人々

タンザニア

現在、地球上の4人に1人が安全で衛生的なトイレを利用できない環境にあると言われています。この現状についてより多くの方へ認知・理解いただき、安全で衛生的なトイレの整備・普及を進める「みんなにトイレをプロジェクト」。このプロジェクトは、世界中の人々の衛生環境の改善に貢献することを目指して、2017年にスタートしました。過去2回の実施により、簡易式トイレシステム「SATO」の寄付台数は合計約40万台となりました。皆さまの温かいご支援・ご協力、誠にありがとうございます。
今回は、タンザニアでのプロジェクトの様子をご紹介します。

SATOの導入が進むタンザニア連合共和国のキゴマ地区、ブヒグウェ地区

[ タンザニア連合共和国 ]
インド洋に面した東アフリカに位置するタンザニアは、人口約5,700万人、約125の民族がともに暮らしている国です。

協力団体 : タンザニア赤十字社

劣悪な衛生環境により、病気が蔓延してしまう現状

この国では、いまだに電気も水道水も利用できない地区があり、全土でインフラが整っているとは言えません。特に問題となっているのが、農村部の衛生設備・環境です。劣悪な衛生環境は、コレラや赤痢など、死に至る様々な病気を引き起こす風土病の感染を招きます。そのため、病気にかかる人間も多く、亡くなる人も後を絶ちません。国は衛生設備の普及率向上を掲げているものの、都市化による人口増加の影響などもあり、まだまだ供給が間に合っていないのが現状です。

写真:タンザニアの人々の様子
写真:タンザニアの人々の様子

過去、コレラが流行した地域にSATOの導入が始まりました

衛生的なトイレを持っていない家庭約4,800世帯。そのうち、これまでに約1,500世帯のSATOの導入が完了。

(2019年8月現在)

下痢を伴う病気の主な原因は排泄物です。SATOの導入が進められたキゴマ地域ブヒグウェ地区の7つのコミュニティは、2015年に発生したコレラが流行した場所です。どのコミュニティも衛生設備の普及率において、かなり深刻な状況にありました。このコミュニティで生活する約4,800世帯のうち、衛生的と言えるトイレがあったのは、たったの12世帯でした。そのほかは、藁やシュロ、レンガでできた簡易トイレが一般的です。床は穴の上に半分に切った丸太や板を並べただけの簡単な作りになっており、ひどい場合は屋根も覆いもありませんでした。SATOは低コスト、設置も簡単です。虫や悪臭が穴からあがってこないため衛生的であり、洗浄も少量の水ですみます。タンザニアの環境改善に最適なトイレとして導入されました。

衛生的なトイレを持っていない家庭約4,800世帯。そのうち、これまでに約1,500世帯のSATOの導入が完了。

(2019年8月現在)

写真:旧式の簡易トイレの様子

旧式の簡易トイレ

写真:旧式の簡易トイレの様子

旧式の簡易トイレ

写真:屋根も壁もないトイレの様子

屋根も壁もないトイレ

写真:SATOを取り付けたの様子

地面に掘った穴にSATOを取り付け、周囲の床をセメントで固めたことで、水を流せるように

写真:トイレの使い方の良い例・悪い例が描かれている住民が描いた絵

住民が描いた絵。トイレの使い方の良い例・悪い例が描かれている

衛生環境の改善のためには、SATOを導入して終わりではなく、今後も、適切な衛生環境を維持していく必要があります。地域住民に描いてもらった絵を利用して正しい使用方法を周知するなど啓発活動も進んでいます。衛生環境改善が進めば、病気に怯えることなく、より多くの人々が安全で健康的な暮らしができるようになると、SATOに期待が高まっています。

写真:トイレの使い方の良い例・悪い例が描かれている住民が描いた絵

住民が描いた絵。トイレの使い方の良い例・悪い例が描かれている

現地からも喜びの声が届いています

以前のトイレは床が壊れ、子どもが穴に落ちてしまう心配もありました。カヴォモ村のアゾリー・チシャクさんは、「SATOのおかげで子供たちが安全に利用出来るようになった」と喜んでいます。こうした反響を受け、導入をしたいという声があがっており、さらなる普及が見当されています。

写真:「SATO」を手に取る人々

ブータン

現在、地球上の4人に1人が安全で衛生的なトイレを利用できない環境にあると言われています。この現状について、より多くの方へ認知・理解いただき、安全で衛生的なトイレの整備・普及を進める「みんなにトイレをプロジェクト」。このプロジェクトは、世界の人々の衛生環境の改善に貢献することを目指して、2017年にスタートしました。過去2回の実施により、合計約40万台の簡易式トイレシステム「SATO」を寄付することとなりました。皆さまの温かいご支援・ご協力、誠にありがとうございます。
今回は、2018年に実施したブータンでの事例をご紹介します。

写真:「SATO」を手に持ち笑顔の子供たち
写真:「SATO」を設置する人々

ブータンは「みんなにトイレをプロジェクト」により、
大きな変化を迎えようとしています。

ブータンでは約3割の人たちが、安全で衛生的なトイレを使えない環境にあります。中でも学校は、子どもたちが長い時間を過ごすにも関わらず、衛生環境に問題があるトイレを使い続けている場所が多くありました。そのためまずは学校から、環境改善が始まりました。中心となったブータンのBTO(BHUTAN TOILET ORGANISATION)と、日本のNGOの熱意に動かされ、この活動はやがて政府や国を動かす、一大プロジェクトへと発展したのです。

2019年6月までにSATOが設置されたブータン国内の地域/サムツエ:90台/チュカ:104台/ティンプー:64台/プナカ:136台/シェムガン:103台

[ ブータン王国 ]
ブータンは人口約75.4万人、面積は九州とほぼ同じ大きさの国です。国民に慕われる国王が治める「幸せの国」として知られています。2017年にも日本の皇族が訪問するなど日本との交流も深い国です。

SATOから始まるブータンの衛生環境改善

子どもたちが安心して清潔なトイレを使える環境へ

写真:「SATO」の設置前と設置後

ブータンの学校では、屋外の汲み取り式トイレが一般的です。しかし、従来の汲み取り式トイレには臭いや耐久性などの問題がありました。低コスト、短時間で簡単に設置できるSATOは、清潔で耐久性も高く作られています。山が多く下水設備の設置が困難なブータンの立地にも、衛生環境改善にも最適でした。

トイレの改善から、衛生意識も変化

写真:「SATO」を手に持ち笑顔の子供たち

子どもたちや周囲の大人たちは、学校に設置されたSATOを見て「安全で清潔なトイレ」の存在に驚きました。彼らはSATOの存在で、衛生的なトイレこそ健康を育む存在であること、安全なこと、そして気持ちよく使えるのだということに初めて気がついたのです。設置後は清潔な状態への保全・手入れにも積極的に取り組むなど、人々の意識が変わってきていることがわかります。その実績が評価され、学校のトイレを「安全で清潔なトイレ」にする活動は国や政府の推奨する大きなプロジェクトとなりました。

「トイレそのものだけでなく、トイレまわりの環境も良くしよう」という運動も広がりを見せています。この活動をきっかけに、今までは扉もなく古びていたトイレの外観も、新たに建て替えが始まりました。また、SATO設置の中心団体となったBTOの活動に更なる注目が集まっています。今では子ども達が「自分も将来入りたい!」と言う、憧れの職業の1つになりました。このプロジェクトの進行は健康的な暮らしを支えるだけでなく、子ども達の新しい夢に繋がっているのです。

写真:国営テレビでの放送の様子

首相や教育省にも認められ、国営テレビでも特集されました。

写真:清潔で衛生的なトイレを保とうという啓発活動の様子

清潔で衛生的なトイレを保とうという啓発活動の様子。

広がる衛生環境改善の輪

ブータンの学校のトイレを「安全で清潔なトイレ」にする活動により、2019年の6月までに、ティンプー・シェムガン・サムツェ・チュカ・プナカの5つの地域で先行して、合計497台のトイレがSATOに変わりました。今では学校だけにとどまらず、街から離れた農村のトイレをSATOに変える動きも進んでいます。ブータン全土が「安全で衛生的なトイレが使えるのが当たり前」となる日も近いかもしれません。

写真:「SATO」を手に取る人々

インド トリチー村

以前は人目を避けるため、みんな早朝に歩いて森へ出かけていました。

写真:カンナヌールパラヤン村で暮らすシャンティ・ビジャヤクマールさんと孫のシャミラさん

カンナヌールパラヤン村で暮らすシャンティ・ビジャヤクマールさん(右)。孫のシャミラさん(左)と共に、トイレのある暮らしを心待ちにしていました。

乾いた大地を通り過ぎる熱風。乾季の南インドには暑い日差しが照りつけ、日中の気温は40℃にも上ります。飛行機と車を乗り継いで、やってきたのはタミルナドゥ州トリチー。市街地を出ると、インフラの整備が進んでいない集落が点在しています。
2017年よりLIXILが実施している「みんなにトイレをプロジェクト」で、簡易式トイレシステム「SATO」(以下「SATO」)が寄贈された地域がここあります。約1,000世帯が住んでおり、産業はゴムと砂糖の生産が中心。泥と石で造られた簡素な家屋が建ち並びます。電気とスマートフォンは普及していますが、水の供給は2日に一度。使用量は世帯あたり1日5リットルほどに限られています。
最初に訪ねた家で出迎えてくれたのは、85歳になるシャンティさん。スリランカから村に嫁いで65年になります。現在は嫁、孫、孫の妻、2人の曾孫という6人家族。大黒柱の孫は、ゴムの原料液を採る仕事をしています。

地域全体での意識改革が進行中

写真:シャンティさんの曾孫にあたるモニカさん

シャンティさんの曾孫にあたるモニカさんは10歳。新しいトイレのある学校に楽しく通っています。

新しい「SATO」のトイレがここに設置されたのは3ヶ月前のこと。村の公衆衛生について、彼女が現状を語り始めます。
「この集落では150箇所にトイレが設置されましたが、まだ全世帯ではありません。「SATO」は他の簡易トイレよりも品質が良いので政府も導入に積極的です」
トイレ用の穴を掘るのは各世帯の仕事。穴は2つ掘って交互に使い、乾燥させた排泄物を肥料として利用しています。
この集落には以前から公共トイレがありました。しかし水不足から掃除もできず、やがて人々は屋外の排泄に戻ったそうです。
「そもそも狭い場所で用を足すことに慣れていない人もいました。何しろ何世代にもわたって屋外で排泄する習慣を続けてきたのですから」
しかし現在、そんな風習を変えようという機運が高まっています。屋外で排泄しそうな人を見たら「なぜそこでするの?」と声を掛けられます。昔は隣の家との間に木や草の茂みがありましたが、人口が増えて死角もなくなりました。そんなとき、我が家に「SATO」がやってきたのです。
「以前は人目を避けるため、みんな朝の4~5時頃に出かけていました。森に近い場所には蛇や虫などの危険生物がいます。でも自宅にトイレができたことで、家族みんなの生活が安全になりました。集落の人々の考え方も大きく変わりつつあります」

写真:シャンティさんの曾孫にあたるモニカさん

シャンティさんの曾孫にあたるモニカさんは10歳。新しいトイレのある学校に楽しく通っています。

念願だった家族専用のトイレが、村の生活を変えました。

写真:自宅の敷地内に建てられたトイレ

トイレは自宅の敷地内に建てられています。

匂いがなくなり、大量の水も不要

隣の集落で、パパさん一家を訪ねました。夫婦と4人の子どもが、1つの部屋に家族全員が暮らしています。大人は朝4時に起きて建築や皮なめしの仕事に出かけ、帰ってくるのは午後5時過ぎだとお母さんが教えてくれました。彼女も「SATO」の設置をとても喜んでいる1人です。
「共同トイレのようなトイレの匂いが「SATO」にはありません。乾季は水不足なので少量の水で流せる仕組みも助かります。夫に持病があるので、トイレまで長い距離を歩く必要がなくなって喜んでいます」

子どもたちに会うため、村の学校を覗いてみました。ここでは初めて女子専用トイレが設置されたばかり。子どもたちも学校に来たがるようになり、公衆衛生の重要性を家庭内で広めてくれます。
元気な子どもたちに将来の夢を聞いてみると「健康な身体でたくさん勉強をして、政府の仕事に就いて家族と暮らしたい」「収入が安定したビジネスマンになりたい」などの答え。この村でずっと暮らしたい子もいれば、外国で働きたいという子もいます。

上下水道が十分に普及していない地域で、簡易式トイレシステム「SATO」は人々の暮らしを大きく変える力があります。LIXILは2022年までに、41万台以上の「SATO」の寄付を完了する予定です。

写真:パパ・サンジーブさん / 少量の水で流せる「SATO」

写真左 パパ・サンジーブさん(右)の自宅は典型的なインド式住居。これまでは村外れの屋外で用を足していました。
写真右 干ばつの村では、少量の水で流せる「SATO」は重宝されています。

取材協力:Habitat for Humnanity India

バングラデシュ

2017年12月、なかでも緊急性の高い地域の一つとして、バングラデシュのロヒンギャの人々の難民キャンプに国連UNHCR協会および国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)を通じて、5,000台の「SATO」が届けられました。6月から10月のモンスーン時期を前に、水と衛生環境が改善しつつある現在の難民キャンプの様子をお伝えします。

「ロヒンギャ難民キャンプ」
について

地図:インド、オスマナバード地方まで移動略図。ムンバイまで飛行機、その後鉄道で435km。

2017年8月25日にミャンマー国内で起きた暴力行為をきっかけに、70万人(2018年5月時点)を超えるロヒンギャの人々がバングラデシュに逃れました。避難した人のうち、55%が18歳未満の子どもです。
難民の多くは、コックスバザール近郊のクトゥパロンキャンプとナヤパラキャンプの2箇所で生活しています。

発生から約10ヶ月を経て、長引くキャンプ生活は、一時的な措置の緊急フェーズから、耐久フェーズに入りつつあります。具体的には、これまでの数万人弱向けの既存施設の活用から、数十万人規模の「人道的基準」※1を満たす施設として、インフラ整備の拡張が行われています。

※1「人道的基準」とは、トイレは20人(4家族)に1基と言われています。 出典:スフィア・ハンドブック 2011年版(日本語版)

ロヒンギャ難民キャンプでの「SATO」

そのような状況の中、「SATO」の1)フラップ構造による臭いと虫の防止、2)パイプ不要の構造により、設置が簡便で誤使用が低減されるなど、優れた機能性と高い価格競争力が評価され、キャンプエリアの標準仕様として承認されました。これにより、効率的な汚物処理と衛生管理を含む、標準化された衛生インフラを提供することが可能となりました。3月末時点では、キャンプエリア全体で約5万基※2のトイレが設置されました。

※2 SATO以外の仕様のトイレも含む

  • 左2基のトイレを先に稼動し、汚水槽がいっぱいになると右側に追加のトイレを立ち上げる仕組み

  • キャンプエリアの標準仕様として承認された「SATO」

  • 識字率の低いロヒンギャ難民のために、トイレの衛生的な使い方を図解で表示

インド ワグホーリ村

「みんなにトイレをプロジェクト」による1台目の「SATO」が寄付された様子をお届けします。

国を挙げて衛生課題に取り組む

世界で2番目に人口の多い国、インド。屋外排泄をする人は3億人を超え、人口の約4分の1を占めます。
この問題を解決するため、モディ首相は、2019年までにすべての家庭にトイレを設置することを目標として掲げた「クリーン・インディア」キャンペーンを実施。
現在、インド国内では毎日約47,000台のトイレの施工が進められています。

地図:インド、オスマナバード地方まで移動略図。ムンバイまで飛行機、その後鉄道で435km。

インド最大の都市ムンバイから電車で9時間、約430km離れたオスマナバード地方のワグホーリ村には約250世帯が住み、主に農業や畜産で生計をたてています。全世帯のうち100世帯は自宅敷地内にトイレがなく、多くの村人が日常的に農地での屋外排泄を余儀なくされています。この村では、経済的な理由に加え、制限ある生活用水をトイレの洗浄に使うことができないなどの理由から、トイレの設置がなかなか実現していませんでした。
今後は、国際NGO「Habitat for Humanity」を通して、トイレが無い家庭を対象に、「SATO」が寄付される予定です。

現地の様子

写真:民族衣装を着ているメーラさん

村の女性たちのリーダー的存在のメーラさん。屋外排泄の危険性について訴え、トイレの重要性に関する村人の理解向上に大きく貢献しています。
特に女性の安全や尊厳に悪影響を与える屋外排泄を無くすためには、「女性が家庭の中で意見を言えるようになることが大切」と語ってくれました。

  • ワグホーリ村の様子。

  • 女性たちは「SATO」に興味津々。

  • 子供たちの夢は先生、警官、医者、等。

「SATO」の設置を
楽しみにしている
モハメドファミリー

(左から)義理のお母さん・パーヴェーンさん・娘さん・義理のお兄さん・義理のお父さん。建設中のトイレの前で「完成まで20日くらい」と喜ぶパーヴェーンさん

「SATO」の設置を楽しみにしているモハメドファミリー

義理の両親の家と中庭をはさんで建てられた家に住むパーヴェーンさん(22)は、義理のお父さんとお兄さんが建設中のお風呂とトイレの完成をとても楽しみにしています。現在子供と一緒に早朝 と夕方の2回、自宅から 徒歩約20分もかけて農地へ排泄に出かけており、その生活はとても不便だと言います。
1年ほど前からトイレの重要性を認識し始め、今回「SATO」が寄付されることで「毎日決まった時間に遠く離れた場所に排泄に行く必要がなくなり、うれしい」と笑顔を見せてくれました。

写真:SATOを手に笑顔の少女

娘たちの健やかな
成長のために設置を決めた
アウリーファミリー

娘たちの健やかな成長のために設置を決めたアウリーファミリー

マニーシャさん(30)は、自宅が手狭になることを覚悟の上で、室内にトイレの設置を希望しています。所有農地がないため、日昇前と日没後の誰もいない時間帯を狙い、他人の農地へ排泄に行くのは危険だからです。
子供たちは学校のトイレで排泄する習慣が身についていますが、放課後は施錠されるため、真っ暗な農地に子どもを連れて行くことも。あと数年で月経を迎えるであろう娘たちのためにも、トイレは必須だと考えています。
半年以内に「SATO」が設置されると聞くと、「屋外排泄をしていることで、子供たちがからかわれなくなると思うと安心する」と話してくれました。

(左から)マニーシャさんとその娘たち。妹(右)の夢は学校の先生になること。

今後も、現地の様子をお伝えしていきます。

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