減災とは?
意味や防災との違い、
取り組み・対策7つ、
見落とされがちな課題

2021.07(2023.10更新)

減災とは?意味や防災との違い、取り組み・対策7つ、見落とされがちな課題 減災とは?意味や防災との違い、取り組み・対策7つ、見落とされがちな課題

減災という言葉をご存知でしょうか?
「防災」に関しては耳にしたことがある方は多いと思いますが「減災」はまだまだ浸透していません。また、言葉として知っていても具体的な内容まではわからないという方も多いことでしょう。防災との意味の違いや対策例について解説します。

減災とは

減災とは、災害によって被る被害を最小限におさえるために、あらかじめ行う取り組みをいいます。自然災害の発生を防ぐことは難しいため、災害は起きるという前提のもと被害をいかに軽減させるかを目的としています。
特に、自然災害の発生率が高い日本において、減災の取り組みは欠かすことはできません。

防災との違い

「災害が起きること、被災することを前提としているか」という点が防災と減災の違いです。
災害が起きる前提のもと、その被害を最小限におさえることが減災の考え方である一方、防災は未然に防ぐ、被害をゼロにすることを目的としています。
川が氾濫しないように堤防をつくったりすることも防災の一例です。ただ、災害被害の予測には限界があり、被災を0にすることは難しいという考えの上に成り立つのが減災です。

主な減災例

早期に減災へ取り組んだことで災害時に活かされたケースも増えています。東日本大震災を経験した自治体の実際の事例を紹介します。

■自主管理マニュアル/災害時相互協力協定
(宮城県仙台市福住町)

宮城県仙台市福住町では、「自主管理マニュアル」と呼ばれる町民の住所・氏名・年齢・電話番号・仕事先・連絡先・ペットの有無を記した書類を作成しました。加えて、災害が発生した場合にお互いを助け合うことを明記した「災害時相互協力協定」を近隣の町と結んでいます。
東日本大震災の際には、この自主管理マニュアルにより迅速に安否確認を実施でき、また、「災害時相互協力協定」を結んでいる町から、早い段階で支援物資が届いたことで、食料に関する不安も解消されました。

■災害時の避難方法の取り決め(岩手県釜石市両石町)

岩手県釜石市両石町の町内会では江戸時代から4回の被災を経験したことにより、長年町内の復興・減災対策に取り組んできました。避難時に車を使えるのは自力での避難が困難な人のみとし、町内12班に対して車と要援護者を割り当てるなど、事前に対策をとりました。
東日本大震災時には、町民は日ごろ避難訓練通りに動くことができ、地震発生後20分以内に避難を完了。援助者を含む住民の多くの命が助かりました。

減災の取り組みで個人ができる7つの備え

減災の取り組みで個人ができる7つの備え 減災の取り組みで個人ができる7つの備え

減災の取り組みのなかで個人ができることとして、内閣府の「減災のてびき」では7つのポイントを発表しています。それぞれの対策方法についてくわしく解説します。

(参考:内閣府:「減災のてびき」(平成21年3月))

  • 1自助・共助の意識を持つ

    1自助・共助の意識を持つ 1自助・共助の意識を持つ

    自助とは自身の身を守ることで、共助は地域や身近にいる人同士で助け合うことを意味します。行政からの援助である公助も重要ですが、支援が行き届くまで時間がかかってしまう可能性があります。災害発生時においては、1秒の遅れが命取りとなるため、減災の大事なポイントになります。
    「自分の身を守るためにできること」「家族でできること」「近隣住民とできること」を考えておくことが自助・共助による減災につながります。

  • 2災害時の地域の危険を把握する

    2災害時の地域の危険を把握する 2災害時の地域の危険を把握する

    ハザードマップ(防災マップ)で自分の住んでいるエリアが、災害時にはどのような被害にあう可能性があるか事前に確認しましょう。ハザードマップには自然災害が発生したときの被害の様子や、避難や救護活動に必要な情報が掲載されています。いざというときに焦ることなく身を守るためにも避難経路や避難場所を把握しておきましょう。
    ハザードマップは市役所や、公民館で配布されているほか、各自治体のホームページでもみることができます。ハザードマップを確認しながら、実際に避難経路を歩いておくと安心です。

  • 3地震に強い家をつくる

    3地震に強い家をつくる 3地震に強い家をつくる

    自宅の耐震性に不安があれば、耐震診断を受けましょう。また、診断の結果に応じて耐震補強のためのリフォームをしておくと、地震が起きても家屋倒壊の可能性が低くなります。
    耐震診断を受ける目安ですが、自宅が平成12年(2000年)以前に建てられているかどうかが1つのポイントになります。
    該当する物件は新耐震基準で建てられてはいますが、壁の配置バランスが適切でないケースがあり、耐震性が十分でない可能性があります。1階に大きな窓や出入り口が多い、また、1階と2階で壁の位置が一致していない場合は要注意です。現在の耐震基準を満たしているかどうか耐震診断を受けることをお勧めします。
    耐震診断や耐震補強工事をする際には、自治体によっては補助金が出ることもあります。一度確認してみましょう。

    3地震に強い家 3地震に強い家

    LIXIL 減災プロジェクト “大地震の減災を知る”を読んでみる

  • 4家具を固定する

    4家具を固定する 4家具を固定する

    背の高い家具・重い家電など、倒れたときに二次被害をうむ可能性があるものは、壁や床に固定しておきましょう。また、ガラスなどが飛び散らないように、飛散防止フィルムを張っておくことも大切です。震災では、倒れた家具の下敷きになってけがを負うことが考えられるので、事前に対策をするように意識しましょう。
    実際に「首都直下地震による被害想定」によると、想定負傷者のうち約34%が家具などの落下によってけがをするという試算もでています。家具を固定することが、自分だけでなく家族の身を守ることにつながります。

  • 5日ごろから非常用持ち出し袋の準備や備蓄をする

    5日ごろから非常用持ち出し袋の準備や備蓄をする 5日ごろから非常用持ち出し袋の準備や備蓄をする

    「外出時にもっておくもの」「自宅に用意しておくもの」の2つの視点で考えることが大切です。外出時には「身分を証明するもの」、「状況を把握できるもの」、「閉じ込められたときのためのもの」を用意しましょう。
    自宅では、「避難するためのもの」、「生きるためにないと困るもの」の2つの観点で準備しましょう。災害はいつ起こるかわかりません。日ごろから災害に備えて必要物資を積極的に備蓄しておくことが大切です。

    外出時にもっておくもの
    身分を証明するもの 免許証・保険証・診察券・
    病名や処方箋を記したメモ
    状況を
    把握できるもの
    ラジオ・メモ・筆記用具
    閉じ込められたときの
    ためのもの
    笛・水・食料・ハンカチ
    自宅に用意しておくもの
    避難するためのもの 懐中電灯・履き慣れた靴・手袋
    生きるためにないと困るもの 薬・飲料・食料・
    通帳の番号を記したメモ
  • 6家族で防災会議を行う

    6家族で防災会議を行う 6家族で防災会議を行う

    あらかじめ、災害時の連絡先や連絡方法、合流場所を家族内で共有しておきましょう。災害発生時に家族が一緒にいるとは限らないので、離れ離れになっても再会できるように話し合いを行うことは大切です。
    また、子供が保育園・幼稚園・小中学校に通っている場合は、災害時の対応についての取り決めを忘れずに確認しておきましょう。

  • 7地域とのつながりを大切にする

    7地域とのつながりを大切にする 7地域とのつながりを大切にする

    普段から近隣の人たちとコミュニケーションをとっておくことも大切です。小さい子供やお年寄り、障害のある人は災害時に支援が必要な場合があります。
    自分の周りに支援が必要な人はいませんか。また、支援が必要な家族がいる場合は、周囲の人にサポートが必要なことを知っておいてもらうようにしましょう。あいさつなど普段の声掛けがいざというときの助け合いにつながります。
    実際に、阪神・淡路大震災でも家族や近隣住民が多くの人々を助け出したという事例もあります。

その他減災対策で考えておきたいこと

その他減災対策で考えておきたいこと その他減災対策で考えておきたいこと

減災の取り組みでできることを7つご紹介しました。加えて、その他特に考えておくべき3つの点を解説します。事前に備えることで、大事な家族を守りましょう。

  • 高齢者家族の避難について

    高齢者など避難に時間がかかる家族がいれば、あらかじめ避難開始のタイミングや手順、避難経路について具体的に話し合い、決めておきましょう。夜間や雨天時、停電時などいろいろなケースを想定し対策をしておくことが大切です。
    家族以外の介助が必要な場合もあります。大雨・洪水等、災害の予測ができる場合は早めに対応をとるようにしましょう。

  • ペットの対応について

    ペットを飼っている家庭では、ペットの避難場所をどうするか決めておきましょう。避難所では衛生面の観点からペットの同伴を不可にしているところもあります。ペットの受け入れについて自治体に事前に確認することや、知人や親戚宅など預け先を相談しておくとよいでしょう。
    あわせて、ペットの非常食についても忘れず準備しておきましょう。

  • 備蓄の内容について

    災害発生直後から、生活に必要なものの入手が難しくなります。また大規模なインフラ破壊が起こった場合はしばらく物資が届かない事態も考えられます。
    減災を意識して生活に必要なものを事前に用意しておきましょう。内閣府「防災に関する世論調査」(平成29年11月)では、食料や飲料水を準備している人の割合は45.7%という結果がでています。
    飲料や食品は生きるために不可欠ですが、いろいろな観点から選ぶようにしましょう。保存期間が長いものや簡単に調理できる点以外に、栄養のバランスがよいもの。家族のお気に入りのもの。温かくして食べられるものなど、食事を楽しめるよう意識して選ぶことが大切です。また備蓄をしても、定期的に消費期限を確認して入れ替えを行う必要があります。1年に一度見直しをしてローリングストックを実施しましょう。

LIXILの減災への取り組み
「減災プロジェクト」

LIXILでは「災害から家族をまもる、家をつくろう」をテーマに住空間の減災対策を広く伝えていくため2019年に減災プロジェクトを立ち上げました。
「大地震」「大型台風」「感染症」「猛暑」「厳寒」など今だからこそ知りたい家の減災対策をデータに基づきくわしく解説。
住まいのプロであるLIXIL開発者のアドバイスを交えて「知って、備える」おうち減災のポイントをわかりやすく紹介しています。

減災の取り組みは日ごろの意識づけから

自然災害が多い日本では、被害を0にする「防災」よりも、災害が起こる前提で被害を最小限におさえる「減災」に取り組むほうが合理的で現実性があります。
ただし、減災への取り組みは一朝一夕では成り立ちません。日ごろから、意識的に行動し、少しずつ準備を整え、とりいれた減災対策を維持継続させていくことが大切です。
まずは、家族の生活の基盤であり多くの時間を過ごす家を見直しましょう。1つ1つの小さな減災対策から、より安全で安心な住空間を作り出すことができます。

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