北海道Sさま邸
聞き手:コーディネーターT(ショールーム札幌)
ー Sさまはキッチンリフォームに取りかかる前にも、札幌のショールームへは何度もいらっしゃっていましたね。
Sさま2016年の暮れ、テレビの経済番組でLIXILのトイレを特集していたんです。陶器も進化したんだなぁって、興味を持って。住んでいる築20年のマンションもトイレが古くなってきていたし、ショールームへ見に行きました。20年間の商品の進化はすごいですね。以来、キッチンも含め合計10回くらいはショールームに行っています。
ー まずはトイレと壁紙をリフォームされたんですね。
Sさまそうです。LIXILのトイレが気に入ったので、次は洗面所とお風呂場をリフォームしました。これらもLIXIL製品です。ショールームへ行って相談しながら、いい商品を紹介してもらいました。お風呂の曲線が美しくて、造形のよさが気に入ってます。黒カビも生えにくいし。予定になかったドアもLIXIL製に換えて、予算オーバーしましたけど(笑)。その次はリビングをリフォームして……。エコカラットも気に入って、業者に枠組みを取ってもらってからデザイン的なところは自分で張ったんですよ。
ー そして、いよいよキッチンを。
Sさま教師を退職していろんなことをしているんですが、キッチンのリフォームは一種の「チャレンジ」で、ショールームにはさらに何度も足を運びました。そのたびに驚きや発見があり、もともと料理は嫌いじゃなかったので、少しお金をかけたくなりました。キッチンで楽しい時間を過ごしたい、友人や娘が遊びに来たとき、いろんな種類の料理を簡単に作って出せるようにしたいと思って。
Sさま邸のリシェルSI。
天井、床、キッチンタイルなどがカラーコーディネーションされています。
ー Sさまはショールームへご来館のたびに、ご質問を持っていらっしゃいました。
Sさま「コーディネーター」という専門家に意見を聞いてみたくて。ショールームのスタッフは知識を語るだけの人も多いんですが、Tさんはじっくり話を聞いた上で説明や提案をしてくれました。話の流れの中で自分の意見もしっかり言ってくれたのが印象的でしたね。当初キッチンリフォームにあたって特にこだわりもなく、気持ちよく快適であればと思っていました。キッチン空間のスケッチを描いてもらったりして、だんだんイメージが固まっていったんです。
ー 例えば色づかいもそうでしたね。赤の使い方とか。
Sさま家全体、アクセントとして赤を使っているんです。最初はオリーブ色のキッチン扉を提案してもらったんですが、家全体のバランスを考えて赤にしました。
ー 赤がとても重要なアクセントという感じでした。
Sさま実は東京のショールームでも見て、やっぱり赤かなと決めたんですよ。あとはいろいろ自分なりに工夫をしてキッチンを仕上げたかったんで。
ー お話しするにつれ、とてもこだわりを持った方ということがわかってきました。
Sさまキッチンで使うものを整理してわかりやすいところに置き、すぐ取り出せるよう「収納の見える化」をするというのがだんだんテーマになって。もともとホームセンターやインテリアショップなどを回るのが好きで、メーカーが用意した製品に飽き足らないときは、自分で納得のいくものを見つけてきました。
リビングルーム側から見たキッチン。白いタイルがキッチン側からの表情とは変化を付けています。
ー もともとは、フルオープンキッチンへのリフォームをお考えでしたね。
Sさまペニンシュラ型のキッチンがいいなと思っていたので。でもマンションの構造上、壁を撤去できなかったので最終的にL字型に落ち着きました。それに合わせてキッチンの背後に置く棚について検討しました。まず棚を支える下収納だけのキッチンボードを見つけ、人工大理石の天板の選定からはじめました。札幌のファッションビルをいくつも回って、あるブランドショップでヒントになる棚を見つけ、そのイメージに合うものをホームセンターで買ってきて組み立てたんです。3〜4段の棚にして、これも「見える化」を図りました。
ー 床のタイルはご自分で見つけてこられたとか。
Sさま存在感のあるキッチンなので相応しいタイルにしたいなと思って、探したんです。玄関からリビングにつながるフローリングも含め、こだわって自分で張って仕上げました。
ー リビング横の和室は、畳を残されているんですね。
Sさまリフォームで和室をフローリングにするケースは多いと思いますが、僕は古いものを調和させるのがいいなと。和室のオーディオセットにはアナログプレーヤーを付けて、レコードも楽しんでいます。
ー 一つひとつの部屋やパーツが独立しているんではなく、同じコンセプトでつながっている感じです。
Sさま余りものも流用していますよ。例えば、床と同じタイルを切って棚の一部に使っています。あと、キッチン用品などには赤いものも多いので、扉の赤色に合うものを選んで購入することでトータルコーディネートを楽しんでいます。
キッチン背後の棚はSさまが工夫してつくったもの。ここにも赤のアクセントが効いています。
ー キッチン本体はリシェルSIをお選びいただきました。
Sさまセラミックトップの機能性や清掃性は素晴らしいと思いました。それにセラミックの素材感が素晴らしいので、これは絶対ほしいなと。あと、比べてもらえるとわかるんですが、私が好きな銭函(北海道小樽市)在住の陶芸家さんが作ったこの磁器とフィットするんです。セラミックトップの色を黒系にしたのは、それが理由です。
ー キッチンのタイルもセラミックトップの色とコーディネートしていますね。
Sさま僕はTさんが勧めてくれたグラムストーン(大理石系)のタイルが大好きです。キッチンの黒のセラミックトップと壁のグラムストーンの組合せはとても気に入って、対面キッチンのリビング側にも色違いのグラムストーンを張りました。
好きな陶芸家の作品とセラミックトップの類似性がお気に入りです。
軽い力で上げ下げできるダウンウォール。
中には、Sさまが探した収納ボックスが。使い勝手がさらに上がります。
ー 吊り戸棚にあるダウンウォールの使い勝手はいかがですか? 少し奥に位置しているので手が届きにくいのではと、お勧めはしなかったのですが。
Sさま気遣っていただいたんですが、僕は背が高いので問題ないし、自分でいろいろ工夫できそうだなあと思っていました。中の棚にぴったりのボックスをお店で見つけたので、とても重宝しています。これはLIXILさんの製品にすべきです(笑)。調味料入れでも色やデザインのバリエーションを楽しんでいますよ。降りてくる様子も、とても絵になるんです。
ー ご提案ありがとうございます。ダウンウォールは少し心配していましたが、無駄なく使いこなされていて安心しました。他の収納性能はいかがでしょう。
Sさま収納力がありすぎて、ガラガラの引き出しもあります(笑)。リフォームにあたっていろいろと整理したり、使わないものは実家に運んだりもしましたが。けこみ収納(キッチン最下部にある収納場所)にはこれもぴったりサイズのボックスを見つけてきて使っています。シェルフ棚には樹脂製の厚手シートを敷いて、傷やホコリを防いでいます。
ダウンウォール下部にはスパイスラック。
見やすくしまいやすい工夫がされています。
収納力がありすぎて、とSさまが笑うほどたくさんの食器や調理器具を収められるリシェルSI。
近くにお気に入りのものを置いておきたい―Sさまのこだわりが貫かれたディスプレイ。
ー Sさまのリフォームは工夫やアイデアが満載で、何よりこだわりを住まい全体に貫かれていらっしゃいますね。
Sさま手の届きやすいところに機能的なものやお気に入りのものがあればいいと思い、今回のリフォームでキッチンやリビングをそんな場所にしました。これからの余生、55歳から全国を測量して歩いた伊能忠敬のようにワクワクして暮らしたいんです。いろいろなことに興味を持って。
ー やはりお料理はよくなさるんでしょうか。
Sさま昔はよくケーキを焼いて知り合いのホームパーティに持って行ってました。評判よかったです。今は一汁一菜や一汁二菜を基本に、汁もの・スープや味噌を使った料理などをつくることが多くなりました。カレーや肉じゃがに応用できる基本的なソースづくりは得意です。実家の方で穫れるフキで煮物をつくったり、旬な時期にイチゴジャムをつくったり。娘や妹にもお裾分けしています。
ー お話をうかがっていると、生活のすべてを楽しむためにリフォームなさっている感じがします。
Sさまやはり「ワクワク」感でしょうね。それが幸せな気持ちにつながります。「衣食足りて礼節を知る」という諺がありますが、今は「衣食住足りて」と言い換えた方がいいかもしれません。住むところもいろんなリフォームやリノベーションが可能になり、そのことで暮らしをより多く楽しむことができるようになったんだと思います。
Sさまから
キッチンリフォームの前にもショールームに行っていますが、入りやすくていいなと思いました。Tさんは、何をしたいか持っていってることに対してきちんと反応してくれたし、一緒にワクワクしながらキッチンを選んでくれました。ショールームは、アイデアを探す場所でありそれをカタチにできる場所だと思います。ですから「こうやって使ったら」という提案をしてくれたことがとても役立ちました。こちらのテーマや課題を酌みながら、ステップを踏んで説明してくれたことが、リフォームがうまくいった要因だと思います。
コーディネーターから
Sさまはショールームへはずいぶん来館なさっていました。将来的には賃貸も視野に入れているとのことなので、住まい全体のコーディネーションを考えてリフォームされていましたね。キッチンもその一環ということで、まずは考えを共有する時間をいただけたのが印象に残っています。ヒアリングが信頼関係を築くことを実感しました。強いこだわりを持つお施主さまですので、いろいろなご要望を受けて提案させていただくプロセスを、緊張しつつ楽しんでいました(笑)。貴重な体験をさせていただきありがとうございました。