2019.3.19

業界初!いつものトイレを災害時も使えるパブリックトイレ発表会

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業界初、いつものトイレが『災害時』にも使える「レジリエンストイレ」を発表

2019年3月7日、LIXILは「INAXパブリックトイレ 新商品記者発表会」を開催し、4月に発売予定である業界初のINAX災害配慮トイレ「レジリエンストイレ」を発表しました。

INAX災害配慮トイレ「レジリエンストイレ」

INAX災害配慮トイレ「レジリエンストイレ」は、いつものトイレを災害時・断水時にもそのまま使用できるようにすることで、避難所生活のストレス軽減につなげるパブリックトイレの新商品です。今回のイベントでは、商品が生まれた背景や具体的なトイレの仕組み、実際の設置事例などを紹介しました。

LIXILは、長年にわたって育んできたトイレの技術を、どのように社会に役立てることができるかを常に追求しており、「世界中の人に安全で衛生的なトイレを=みんなにトイレをプロジェクト(https://www.lixil.co.jp/minnanitoirewopj/)」という取り組みもその一つになります。

ただトイレ先進国の日本においても、トイレの衛生が問題になるシーンがあります。それは、地震や台風、豪雨などの災害時です。実際にこれまで発生した災害では、多くの人が集まる避難所のトイレが大きな問題になっていました。「避難所でストレスに感じたこと」というアンケート※ではトイレが2位に挙がっており、特に衛生面に不安を感じていた人が多いとのことです。汚いトイレを敬遠して排せつを我慢してしまうと、感染症や病気のリスクが高まり、災害関連死を引き起こす可能性が高まります。
※熊本地震でのアンケート調査(日本トイレ研究所)から

避難生活で困ったこと

いま、「国土強靭化(ナショナル・レジリエンス)」政策のもと、各自治体で災害用トイレの設置が進んでいますが、災害用トイレを別に準備するケースがほとんどで、これでは設置場所や衛生面の確保が難しく、障がい者や高齢者などの災害弱者にとっていまだにトイレの問題が続くことになります。

そこで過去の災害時の問題を長年にわたり研究、ヒアリングしたLIXILがいきついた答えが「いつものトイレを災害時にもそのまま使用できるような仕組みにできないか」ということでした。そして誕生したのがINAX災害配慮トイレ「レジリエンストイレ」です。災害用のトイレを普段のトイレに近づけるのではなく、普段のトイレを災害時にも使えるようにしよう。まさに、逆転の発想で生まれたトイレです。

どうすれば、実現できるか

断水時にはわずかペットボトル2本の水で汚物を流せる画期的なトイレ

今回の発表会では、①レジリエンストイレ開発の経緯②レジリエンストイレの特長③実際の設置例について、それぞれスライドや動画を使用して説明を行いました。

レジリエンストイレの主な特長としては、以下の3点が挙げられます。

1.強制開閉弁という特殊構造により、災害時には1Lの水で汚物を排出できる
2.ユニバーサルデザインなので、車いすでも快適に使用できる
3.凹凸のない形状とサイドカバーで清掃が簡単にできる

レジリエンストイレの特長

1.強制開閉弁

レジリエンストイレでは、「強制開閉弁」という断水対策に特化した新たな構造を採用しています。重力とバネを使った「強制開閉弁」により、普段は5Lの水で洗浄し、断水時にはわずか1Lの水で衛生的に汚物を排出できるようになりました。5Lから1Lへの切り替えはとても簡単で、タンク内の弁の開閉時間を調整するフロート(浮き)についている赤いピンを外すだけです。これにより災害時は少ない洗浄量でトイレを使用することができるので、避難所のトイレを衛生的に保つことが可能になります。

断水対策
断水対策

さらに、断水時の1L洗浄でも汚物を下水道まで搬送できるよう、配管設計にもひと工夫しました。汚水をポンプで循環させる「汚水循環方式」と、1時間ごとにバケツ3杯分ほどの水を最上流のトイレ等から流す「手動給水方式」の2種類の配管を推奨しています。

下水道までしっかり搬送する仕組み

2.ユニバーサルデザイン

避難所には高齢者も多いことに配慮し、車いすでも使用しやすいよう、便器の前面に傾斜をつけ、洗浄ハンドルを持ちやすい形状にしています。もちろん平常時のトイレの使い方そのままが、災害時のトイレでも利用可能な点も、ユニバーサルデザインといえます。

3.清掃性

災害時におけるトイレの衛生維持に配慮し、便器のフチをなくした「フチレス」をはじめとした凹凸のない形状とサイドカバーで、簡単に清掃できるよう工夫しています。

レジリエンストイレの設置例としては、徳島県阿波市の県立阿波西高等学校を紹介しました。阿波市は、吉野川の氾濫や洪水、土砂災害、南海トラフ地震などの災害リスクを抱えています。市の指定避難所になっている体育館のトイレをレジリエンストイレに改修し、「防災クラブ」の生徒に実際に試してもらったときの様子をスライドで見ていきました。
防災クラブの生徒も、こちらのトイレをためすことで、災害時の避難生活を快適に過ごす助けになる、と賛同し、感心していたそうです。

共同取組事例

また本製品は、次世代に向けたレジリエンス社会構築のため、強くてしなやかな国づくり、地域づくり、人づくり、産業づくりに資する活動、技術開発、製品開発等を表彰する制度「ジャパンレジリエンスアワード(強靭化大賞)2019」において、最優秀レジリエンス賞(企業・産業部門)を受賞しました。

「命を助けるトイレ」でストレスを軽減し災害関連死ゼロを目指す

INAX災害配慮トイレ「レジリエンストイレ」は長年、衛生問題に取り組んできたLIXILの新しい答えです。自然災害は防げません。しかしその後の人的被害は、私たちの知恵や技術で防ぐことができます。
LIXILでは、本トイレの普及を通じて、災害時のトイレの課題や総合的な備えの啓蒙をすすめ、災害時の健康被害や災害関連死が少しでもなくなる世界をつくることに貢献してまいります。

災害関連死ゼロへ

プレスリリース:
業界初、災害時にはいつものトイレを1L洗浄に切り替えてそのまま使用 INAX災害配慮トイレ「レジリエンストイレ」を新開発 ~いつもと同じみんなのトイレ。災害時の避難所においても快適で使いやすいトイレを提供~

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