キッチン会議

皿洗いが親子のコミュニケーションとなる

日常から考える2列配置のキッチン

取材 | 2016.6.14

「キッチン会議」では自分らしいキッチンを見つけ出すためのヒントを、
みなさんと真面目に、時には頭をやわらかくして話し合っていきたいと思います。
毎回コラムで話題を提供したり、建築家や専門家の意見を紹介したり、
アンケートを通してみなさんの暮らしぶりや考えをうかがったり。
さまざまな視点でキッチンを見つめながら、「キッチンの答え」を一緒に考えていきましょう。

永山さんはキッチンを考えるとき、2列配置のキッチンが多いと言います。シンクをダイニング側に開いて、コンロは壁側に置きます。料理をする時、炒める、煮るなど火を使うところ、包丁を使うのも壁に向かってしたほうがよいと言います。「料理をするときは、話ながらだと危ないでしょ」と、料理は集中して行なったほうがいいだろうと考えています。そしてシンクは反対に、洗い物をする時は一人だと孤独だから、みんなと一緒に話しながらしたいと。
その考え方のベースは、ご自身の思い出からだそうです。子どもの頃、食事が終わった後にお母様と一緒に並んで、洗ったお皿を拭きながら1日の出来事やいろいろなことを二人で話していたことがとても自然なコミュニケーションだったと言います。食事前はお腹がすいていて早くとせがみ、コミュニケーションどころではなかったのでしょう。小さな子どもが家事のお手伝いを始めるのも、お皿洗いからが自然なのかもしれません。この話はとても腑に落ちます。ついついキッチンを考えるときパーティなど特殊な状況を想定しがちですが、日常の親子の会話を中心に考えると永山さんの話は納得がいきます。
そしてもうひとつの考え方として、キッチンの機能をできるだけ分解して大きなキッチンにならないようにも心がけているそうです。それはキッチンが大きくなるとリビングやダイニングがキッチンの中にあるように感じてしまうからだそうです。そのためにキッチンの機能であるコンロやシンク、レンジフードや食洗機、また冷蔵庫の位置やストックの場所など、すべてをひとまとめにするのでなく、細かく分けて、ボリュームを小さく見せ、リビングやダイニングの位置からの視線に配慮するのだそうです。

この考え方について具体的に事例をご紹介いただきながらご説明いただきました。

クライアントは若い夫婦と小さなお子さん、3歳と1歳です。図面をご覧ください。コンロを壁側に起き、シンクをダイニングテーブルの上に置いています。シンクの立ち上がりを人造大理石でつくり、テーブルと一体のデザインとなっています。壁側のキッチンは幅1365ミリとコンパクトに見えますが、シンクが分かれているのでそう小さくはありません。ダイニングテーブルは、料理の時は作業スペースにもなりますし、食事のあとは家族と話しながら片付けが出来ます。お子さんももう少し大きくなったら、お手伝いをしたり、料理を手伝ったりと子どもが家事に参加しやすいようにも考えています。

もう一度、永山さんの考え方をまとめてみました。
1 キッチンをあまり目立たせたくはない。
2 料理をする時は、集中するために壁に向かって作業したい。
3 片付けは親子、または家族一緒に、特に親子のコミュニケーションとして一緒に皿洗いを考えたい。
4 機能を細分化して、必要ない物を隠すためのパントリーを設けるようにしたい。

永山さんの作られる空間は、写真のように隙のない研ぎ澄まされた空間にも見えますが、同時に親子のコミュニケーションの場面を想定するという母親らしい視点も加わっています。建築家としての視点に加えて、ほのぼのとした一面を見せてくれた今回の取材でした。いかがでしょうか。2列配置のキッチンという考え方。シンクをダイニング側に置くという配置、ぜひ参考にしてください。

永山祐子 Yuko Nagayama
1975 東京都生まれ
1998 昭和女子大学生活科学部生活環境学科卒業 
2002 青木淳建築計画事務所退職
2002 永山祐子建築設計設立
受賞
2004 中之島新線駅企画デザインコンペ優秀賞
2005 つくば田園都市コンセプト住宅コンペ2位
2005 JCD デザイン賞 2005奨励賞「ルイ・ヴィトン京都大丸」
2005 ロレアル 色と科学と芸術賞 奨励賞「Kaleidoscope Real」
2006 AR Awards Highly commended賞「a hill on a house」
2007 ベスト デビュタント賞(MFU)建築部門受賞
2012 Architectural Record Design Vanguard Architects 2012
2014 日本建築家協会 JIA新人賞受賞

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