キッチン会議

飛騨古川の民家の改修とDIYキッチン人が集まるキッチン

白石達史さん・実果さんご夫妻

取材 | 2016.12.6

「キッチン会議」では自分らしいキッチンを見つけ出すためのヒントを、
みなさんと真面目に、時には頭をやわらかくして話し合っていきたいと思います。
毎回コラムで話題を提供したり、建築家や専門家の意見を紹介したり、
アンケートを通してみなさんの暮らしぶりや考えをうかがったり。
さまざまな視点でキッチンを見つめながら、「キッチンの答え」を一緒に考えていきましょう。

飛騨古川の古民家に住む白石さんご夫妻のキッチンを取材しました。このキッチンは、以前LIXIL主催のHOUZZキッチンコンテストでユーザー賞を受賞しています。
お二人は東京からこの地へ移住され、昭和初期に建てられたこの家に出会ったそうです。家全体をリノベーションする費用はなかったので、キッチンスペースだけに手を入れてそこだけは暖かく過ごせるようにしたとのこと。キッチン以外の場所は、あとから付け足されたものをはずして原型に戻し、綺麗に磨きあげたそうです。座敷からは囲炉裏が現れたり、畳の下には綺麗な板の間が眠っていたり、荒れ放題だった庭からは池が出現したりと、さながら発掘現場のようだと言います。今ではすっかり整えられ、おふたりだけで住むには少し広すぎるぐらいの家ですが、多くの友人が訪れて一緒に食事をするそうです。

築50年は経つ立派な民家。購入当時は荒れ果てていたという

下の図面をご覧ください。キッチンスペースは、家の中にもうひとつの家を作ったかのように広々としています。断熱をして、大きなガラスの建具で玄関との間を仕切っています。大きな薪ストーブもあり暖かく過ごせます。取材に伺った時はちょうど、冬支度のための薪割りが終わったところでした。

図面

キッチン側から玄関を見る。天井や壁は部分的に張り替え、古材の良さを残した

玄関側からキッチンを見る

オーブンをアメリカから取り寄せる

手作りのキッチンは2列配置です。壁側にはアメリカから輸入したAMANAのオーブンがあります。これは白石さんの大のお気に入り、アメリカの家庭ではよく見かける一般的なもの。まずオーブンを決めてからキッチンを考えたと言います。ちなみに輸入については、日本の代理店を探すのに大変苦労したとか。そして壁側の残りのスペースには大きめのシンクと作業台を設けています。その高さは910ミリと少し高めですが、こだわりの高さだそうです。一方、手前のオープン側のカウンターは高さ850ミリで、誰もが使いやすい高さにしています。樹齢300年を超えると思われる杉を使ったテーブルには、小さめのパーティーシンクを埋め込んでいます。鉄のパイプで組んだ簡単な構造ですが、この手作り感が古民家のリノベーションにはぴったりのイメージです。

AMANAのオーブンを設置したところ。まずオーブンを置くことからキッチンの改造をスタートさせた

パーティーシンクを付けた杉の天板

キッチンで未来を構想する

白石さんは観光客へ向けた自転車ツアーの仕事をしています。アメリカに住んでいた頃は「きこり」をしていたという変わった経歴の持ち主です。飛騨古川は海外の人が多く訪れる町なので、海外経験を活かして英語でガイドをしています。そして奥様の実果さんは、英語を教える家庭教師をしています。白石さんご夫妻は将来、海外からいろいろな人が訪れる宿泊施設を運営したいそうですが、今はまだ思案中とのこと。自然の中での暮らしは大変なこともたくさんありそうですが、お二人は日々の暮らしをとても楽しんでいる様子でした。
自然の環境に接した田舎での暮らし、自分でリノベーションした住まい、すべてのものに気が配られている室内、磨き上げられた家。夢が広がるこの地での美しい暮らしの構想が、このキッチンで繰り広げられているのです。
まさにこのコーナーのテーマでもあるキッチンが暮らしの中心になっています。自分たちで育てた野菜を料理しながら丁寧に毎日を暮らしていく姿、そこにはキッチンを考える上で、とても大切な姿勢を垣間見たような気がします。
多くの人に、自分たちの実践する新しい暮らしを知ってもらいたいと話す白石さん。地方に移り住んで、こんなに自由な暮らし方ができるという新たな気づきを得た取材となりました。

古いハシゴを飾り棚にして植栽をディスプレイしている

綺麗に磨き上げられた板の間。手前右下には囲炉裏もある

白石 達史(しらいし たつふみ)
1982年生まれ。世界各国を放浪したのち、2010年飛騨古川に移住。暮らしを旅するガイドツアーSATOYAMA EXPERIENCEマネージャー。国内外のゲストを案内するサイクリングツアーを運営する傍ら、2013年より自宅の古民家をリノベーションして開放。都市と地域の人を繋ぎ、あたらしい暮らしを実践中。

白石 実果(しらいし みか)
1981年生まれ。これまでに世界各国で暮らしながら旅をする。帰国後は国際NGO、外資系メーカーに勤め、2012年に飛騨古川に移住。現在はまちなかのカフェで働きつつ英会話講師として活動。2013年より夫と古民家改修をはじめ、パーマカルチャーの視点を取り入れた暮らしを営んでいる。

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