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利用者視点で考える
認知症の人

認知症の人の中には、
自立して生活している人も少なくありません。
また、自立していた人が次第に見守りなどが
必要になってくることもあります。外出についても、
一人で買い物などに出かけられる軽度の人から、
同伴者がいれば外出できる人、
さらに介助が必要な人までさまざまです。
出かけるときの状況は人により異なりますが、
外出先のトイレ利用には困ることが多くあります。
認知症の人が安心して外出できるようにするためには、
どんな課題を解決すればよいのでしょうか?

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認知症とは

認知症は、脳の病気や障害などさまざまな原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態をいいます。認知症にはいくつかの種類があり、最も多いアルツハイマー型認知症は、症状は物忘れで発症することが多く、ゆっくりと進行します。そのほか脳梗塞や脳出血などの脳血管障害による血管性認知症、レビー小体型認知症や前頭側頭型認知症などがあります。

日本は世界に先駆けて超高齢社会を迎えています。2025年には65歳以上の約5人に1人、約700万人が認知症になると推測されています。また、65歳未満で「若年性認知症」を発症する人もいます。

  • 参考:知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス総合サイト,「認知症」(厚生労働省)
画像:認知症の主な症状
  • 「中核症状」は脳の機能低下により、直接的に表れる症状。「周辺症状」は、そもそもの性格や、環境・人間環境などが影響。原因となる環境や人間環境を変えることで症状が改善されることがあります。

トイレ利用が困難で、
外出を控えているケースも

外出時のトイレ利用時に、家族などの付き添いがありますか?と尋ねたところ、8割近くが「付き添いがある」と回答しました。
また、外出時にトイレを利用する施設を尋ねたところ、病院・ 診療所、デパート・スーパーなどの商業施設、レストランなどの飲食店をはじめ、地域のさまざまな施設でトイレを利用していることがわかりました。
しかし、「その他」の中には、「外出先ではトイレを利用しない」や「介助が大変なので利用しない」などの声もあり、トイレ利用が困難で、外出を控えざるをえない実態もうかがえます。

外出時のトイレ利用時に、
家族などの付き添いがありますか?

外出時にトイレを利用する施設はどこですか?

画像:認知症高齢者の公共トイレの利用実態に関する調査研究(日本工業大学)n=198
  • 調査データ出典:認知症高齢者の公共トイレの利用実態に関する調査研究(日本工業大学)n=198

外出時にトイレの場所が
見つからない…

認知症の特性のひとつとして、ものごとを素早く的確に理解し、判断することが難しくなる「理解・判断力の障害」があります。それにより、案内表示サインを認識しづらいこともあります。
認知症の人に、外出時のトイレ利用で困ることについて尋ねたところ、4割以上が「トイレの場所を見つけること」と回答。その要因として、トイレが奥まった所にあることや、誘導のためのピクトサインがわかりづらい、見えづらいことなどがあげられます。配偶者が介助する場合、高齢なことも多く、付き添う人も苦労しています。

外出時のトイレ利用で困ることは何ですか?

画像:認知症高齢者の公共トイレの利用実態に関する調査研究(日本工業大学)n=198
  • 調査データ出典:認知症高齢者の公共トイレの利用実態に関する調査研究(日本工業大学)n=198
POINT

わかりやすい案内・表示サイン

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  • 一人で外出する場合も、介助・同伴者が必要な場合も、わかりやすい案内・表示が助けになります。
  • ピクトグラムなどの視覚情報に文字情報を加えて、ひと目で確認できるようにします。
  • 背景とのコントラスト、大きさにも考慮して、視認性を高めます。
  • 目線の位置が低く、視界が狭くなってきている高齢者でも、視認しやすい高さに設定します。
  • トイレまでの誘導サインの計画も重要です。

※近年、ジェンダー配慮として従来の青/赤の配色ではなくモノトーンや他の色を採用したり、ピクトデザインを変えたりするケースもありますが、公共性の高い施設の場合は、見慣れた従来型のサインの方がより多くの人が視認しやすいという利点もあります。

水を流すボタンがわからずに
困ることも…

「理解・判断力の障害」からくるトイレ利用時の困りごととして「トイレの場所を見つけること」に次いで多かったのが、「水を流すボタンやレバーがわからない」という声でした。トイレの高機能化によって操作ボタンが増え、その配置もトイレごとに異なるケースも多いため、どのボタンを押せばいいのか戸惑ってしまうケースも多くあります。

外出時のトイレ利用で困ることは何ですか?

画像:認知症高齢者の公共トイレの利用実態に関する調査研究(日本工業大学) n=198
  • 調査データ出典:認知症高齢者の公共トイレの利用実態に関する調査研究(日本工業大学) n=198
POINT

わかりやすい操作ボタンとJIS配列

  • 流すボタンやシャワートイレの操作ボタン、紙巻器などの器具は、「JIS配列」で統一するとわかりやすくなります。
  • 器具の高さ寸法やデザインを統一することで、空間デザインを損なわずにJIS配列が可能です。
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JIS配列

多くの人にとって使いやすい紙巻器やボタンの配置を検証し、規格化されたのが「公共トイレJIS配列(JIS S 0026)」。配置の共通ルールを設けることで、より多くのトイレ利用者の混乱を解消することができます。
現在、多機能トイレには普及しつつありますが、今後は一般トイレへのさらなる普及が求められています。

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LIXILでは、認識しやすい文字と、わかりやすい大きなボタンのリモコンをご用意しています。コントラストがはっきりした配色で、視認性のよいデザインです。

  • 一部対応できない商品もございます。

多くの人たちが
「多機能トイレ」を利用

認知症の人の中には、一人で外出できる人がいる一方で、介助・同伴者が付き添うケースもあります。外出時にトイレに付き添う際、同性介助では5割、異性介助では7割以上の人が、多機能トイレを利用すると回答。「二人で一緒に入れる広いトイレ」、特に異性介助の場合は「男女一緒に入れるトイレ」のニーズが高いことがわかりました。

外出時に利用するトイレは?

画像:認知症高齢者の公共トイレの利用実態に関する調査研究(日本工業大学) n=198
  • 調査データ出典:認知症高齢者の公共トイレの利用実態に関する調査研究(日本工業大学) n=198

異性介助の際、
「視線が気になる」人は約4割

外出先でトイレを利用する際の困りごとについて尋ねたところ、異性介助の人のうち、「周囲の視線が気になる」と回答した人は約4割。「介護中」の札を首から下げ、女性トイレに入る妻を介助するなど、男女別の一般トイレで苦労したり、トラブルを経験したりといった人も少なくないことがわかりました。

外出時のトイレ利用で困ることは何ですか?

画像:認知症高齢者の公共トイレの利用実態に関する調査研究(日本工業大学) n=198
  • 調査データ出典:認知症高齢者の公共トイレの利用実態に関する調査研究(日本工業大学) n=198
POINT

認知症の人と、異性の介助・同伴者が安心して利用できる工夫を

一般トイレの出入り口付近には、
ベンチを設置した待合コーナーを

外出時に同伴が必要な人でも、トイレは一人で利用する人もいます。その場合、同伴者が異性だと「男女別トイレ」の前では待ちづらいもの。混雑している場合などは、外で待っていた異性の同伴者や介助者と本人がはぐれてしまうこともあります。
一般トイレの出入り口付近に、ベンチを設置した待合コーナーがあると、安心して待つことができます。

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多機能トイレとは別に、
「男女共用広めトイレ」を設置

介助・同伴者が異性の場合、一般の男女別トイレでは一人で入るため、本人が不安を感じてしまうことがあります。介助・同伴者も、用を足している間に本人を一人で待たせてしまうことに不安を感じています。
異性の介助者も一緒に入れる「男女共用広めトイレ」なら、お互いの姿を見失わずに見守ることができて安心です。また、異性の同伴者がトイレの前で待っていても不自然になりません。
「男女共用広めトイレ」を多機能トイレとは別に設置することで、利用集中の緩和にもつながります。

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「認知症への配慮」

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