CHALLENGER “想像を超える未来への挑戦”

LIXIL Housing Technology
技術研究所 所長

山崎 弘之

『FORCE CARBON』がもたらす豊かな未来の住まい。その実現に向けてさらなる技術の進化に取り組んでいる技術者たちの思い。
技術とデザインが融合したその先に広がる、新たな建築の可能性を求めて、「LIXIL Housing Technology 技術研究所」の所長・山崎 弘之が、
技術者としてのSPIRITやこだわり、新たな素材に挑戦した理由について語ります。

技術でお客様を「WAO!」と驚かせたい

技術でお客様を
「WAO!」と驚かせたい

LIXIL Housing Technology技術研究所を拠点に、日々研究に取り組む山崎。所長でありながら一人の技術者としてどのような思いで技術と向き合い、何によって突き動かされているのか。前へ進み続ける自らの原動力について、山崎はこう話します。

「技術でお客様を驚かせたい。それが、研究を行ううえで私の大きなモチベーションになっています。私たちの研究の成果が商品に実装され、『こんなことができるようになったんだ!』とか『この商品にこんなすごい機能があるんだ!』など、お客様が思わず『WAO!』と言ってしまうような驚きや感動を与えられたときが、この仕事でいちばんのやりがいを感じる瞬間ですね。そして、それほどまでにお客様を驚かせるためには、新技術を開発するほかない。そんな信念を持って取り組んでいます。

LIXILは住まいや暮らしに関わる商品を多く手がける会社ですので、新しい技術や商品のアイデアは、自宅などで過ごす日常のなかに潜んでいます。そういう意味では私も1人のユーザーですので、お客様と同じ目線で普段から新技術のヒントを意識して探すよう心がけています」

窓の外に目を向ける山崎の画像
技術者がCFRPから成形された1枚の板を持っている画像
技術者がCFRPから成形された1枚の板を持っている画像
技術者がCFRPから成形された1枚の板を持っている画像

チャレンジし続けなければ
ブレイクスルーはない

今回、新たな素材への挑戦を決断した経緯にも、現状に決して満足せず、さらに新しい価値を生み出し続けたいという、山崎の技術に対するこだわりが込められていました。

「私たちは常にユニークな価値をお客様に提供しようと日々模索し続けていますが、冒頭で申し上げたような『WAO!』と驚いてもらえるこれまでにない技術を生み出し、より快適で豊かな暮らしの実現に貢献していくためには、考え方を一度根本から見つめ直し、現状の枠にとらわれない新しい素材へチャレンジすることが必要不可欠だろうと考えました。そして検討を重ねた結果、技術研究所がたどり着いたのが、「CFRP(炭素繊維強化樹脂)」でした。

CFRPは、重量あたりの強度がアルミの5〜10倍。圧倒的な比剛性と比強度を持ちながら、コストなどの面からこれまで建材への利用は難しいとされてきました。ですがもしも、この素材を建材に活用できたとしたら、今までにない新たな商品カテゴリーをつくり出せるのではないか。さらに言うと、住まい全体のありかたまで変えてしまうポテンシャルを秘めているのではないか。そんな可能性を感じ、この素材の建材利用にチャレンジすることを決断しました」

チームの力と技術を結集すれば道は拓ける

チームの力と技術を
結集すれば
道は拓ける

これまで専門外だったCFRP建材の技術開発。プロジェクトをスタートしたものの、その研究段階は決して一筋縄ではいきませんでした。

「CFRPはこれまで手掛けたことのない、まったく新しい素材でしたのでデータの蓄積もなく、当初はプロジェクトのメンバーからも『本当に実現できるのか?』と戸惑いの声もありましたが、一人ひとりがチャレンジ精神を持ち、それぞれが独自に勉強し、実際に実験しながらデータを積み上げていってくれました。とにかく、まず手を動かしてみる。そうすることで、予想もしなかった気づき、手を動かした人にしか現れないセレンディピティ(偶然の産物)的な発見が得られるかもしれない。私が常日頃チームに伝えているモットーに[自律と笑顔]という言葉があるのですが、まさにメンバーもこの言葉通り、自らを律しながら主体性を持ち、笑顔で楽しみながら取り組んでくれたと思います。

そうした努力が実を結び、CFRP単体ではなく、今ある他の素材とうまく組み合わせることで、必要最低限のCFRP使用量で最大限の効果を発揮することに成功。既存の素材との複合化、いわゆる『マルチマテリアル』という手法です。これにより、コストは極力抑えながら高い価値を実現可能になります。さまざまな素材の組み合わせが考えられますし、その数だけ生み出せる価値の可能性もどんどん広がっていくと考えています。

また、建材はどうしても長期間使用することが大前提ですので、もちろん高い耐久性も確保しています。そこには、LIXILがこれまで長年培ってきた高度な解析技術や評価技術など、さまざまな技術が生かされています。私たちはこのようにして、CFRPの複合化技術『FORCE CARBON』を確立していきました」

CFRPの炭素繊維を巻きつけたロールを拡大した画像
顕微鏡で検査を行っている技術者の画像
山崎と技術者、デザイナーが顔を突き合わせて議論しているイメージ画像
山崎と技術者、デザイナーが顔を突き合わせて議論しているイメージ画像
山崎と技術者、デザイナーが顔を突き合わせて議論しているイメージ画像

技術者とデザイナーの共創で、ワクワクするアイデアを具現化

技術者とデザイナーの
共創で、
ワクワクする
アイデアを具現化

技術者とデザイナーが強固に連携しながら進めているところも、『FORCE CARBON』プロジェクトの大きな特徴の1つであると山崎は言います。その背景には、互いに共創することで生まれる相乗効果がありました。

「新技術を開発して商品に実装していくためには、まず社内にアピールして多くの部署を巻き込んでいく必要があります。しかし技術者だけでその提案を行うと、やはり現実的なアイデアになってしまい、共感を得られにくい場合も少なくありません。そこで今回は、社内のデザイナーと密にタッグを組んで進めることにしました。デザイナーというのは、本当に感心するくらい発想が豊かで、私たち技術者が思いもよらないようなアイデアを可視化するスキルが非常に高いのです。

とはいえ、逆にデザイナーだけで提案しても、技術の裏付けのないただの絵空事になってしまう。技術者とデザイナーが手を取り合うことで、しっかりと技術に裏打ちされた、ワクワクするような夢のある提案が可能になります。現在も『FORCE CARBON』をさらに浸透させるべく、アイデアを出し合っているところです」

手に持つシャープペンシルを見つめるデザイナーの画像
デザイン関連の本を開いて調べ物をするデザイナーの画像
想像を超えた未来を見つめる山崎の画像
想像を超えた未来を見つめる山崎の画像

つくりたいのは、
想像を超えた未来

すでにいくつかの商品に実装され、今後もさまざまな展開が期待できる『FORCE CARBON』。この新技術のコンセプト、めざす目標について山崎は次のように語ります。

「人が想像できる範囲というのは、あくまで現状の改善レベルに留まってしまいます。私たちがこの『FORCE CARBON』でつくろうとしているのは、そのさらに先にある、想像を超えた未来です。想像を超えた未来とは、つまり、これまでは不可能と思われていたことが可能となる未来のこと。

もともとCFRPの建材利用も不可能と考えられてきましたが、私たちは技術の力でそれを可能にしました。不可能を可能にするのは技術。そして、その技術を生み出せるのは私たち技術者だ。そんな強い自負と使命感を持ちながら、さまざまな可能性を持つ『FORCE CARBON』とともに、無限に広がる想像を超えた未来の実現に向かってこれからも一歩ずつ進んでいきたいと考えています」

LIXIL Housing Technology 技術研究所 所長

山崎 弘之

Hiroyuki Yamazaki

1973年、茨城県生まれ。LIXIL Housing Technology技術研究所 所長。LIXILの前身であるTOSTEM株式会社へ入社後、 建材研究所にて金属加工を専門とし主にアルミの研究に従事。最近では、ほぼ全ての廃プラスチックをリサイクル可能とした循環型素材「レビア」の開発などに携わる。趣味は読書、愛犬と遊ぶこと。