こんにちは。「飛騨産業」HIDA東京ミッドタウン店の河井です。
4回目となる連載コラム【木と暮らす】。今回はHIDAで取り扱っている木材のなかでも特徴的な国産材、「スギ材」にフォーカスしたいと思います。
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美しい木目、温かな質感、軽量性。隠された日本の財産「スギ」
人工林の約44%を占め、日本で最も多く植林される針葉樹、スギ。
どうしても花粉のネガティブなイメージを持たれることが多い樹木かもしれませんが、実は日本では昔から、寺社建築や住宅、工芸品、舟、樽、木簡などさまざまな場面で活用されてきました。
かつては、その柔らかさから家具には向かないとされてきましたが、スギは木目の美しさだけでなく、温かな質感、心安らぐ甘い芳香さ、優れた調湿機能、軽量ゆえの加工性といった、多くの魅力を備えた木材です。
飛騨産業では、「この隠された日本の財産をなんとか家具に有効活用できないか」と研究を重ねてきました。そして加熱圧縮によって強度を高める技術を開発し、製品化を実現したのです。
今回はそんな「スギ」を使用してつくる家具のシリーズをいくつかご紹介いたします。
圧縮により強度を上げた国産スギ材の家具「KISARAGI」
「KISARAGI(如月)」は、スギ材を丁寧に圧縮することで、強度を上げ、世界で初めて柾目(まさめ)での使用を可能にしたシリーズ。
「スギ圧縮柾目材」は、美しさと実用性を兼ね備えた良質な家具用材です。具体的な製法としては、圧縮したピースを製作し、短冊状に縦に巾割り。さらに柾目面が表に出る様に並べて、板目面同士を接着して作られています。直線的な唯一無二の木目が魅力です。
チェアには座り心地を良くするため、座面にネジ穴による凹凸が生まれない座繰り加工が施されています。さらに、縁を薄く削り出すことにより、スタイリッシュな 印象に仕上げました。
削り取られたカーブに沿って流れる柾目の木目も美しく、杢目の凛とした表情と直線の引き立つ形態が、インテリアに豊かで上質な雰囲気をプラスします。
シリーズ名の「KISARAGI(如月)」には草木が更生するという意味があります。「この家具が、進化する国産スギ材活用の門出となるように」との思いが込められていて、2014年にグッドデザイン金賞を受賞しました。
曲木技術でスギ材のデメリットを克服
柔らかいという弱点を克服する糸口は、飛騨産業が脈々と受け継いできた曲木技術にありました。
曲木とは、木材を蒸煮することで柔らかくした後、曲型(かながた)にはめて固定し、乾燥させ曲面に形成した部材のこと。
優雅で美しい曲線を作り出すことはもとより、木目を通すことで強くしなやかな形状を作り出すことができます。さらに削り出す加工に比べ、木材を無駄なく利用できるという利点も。
彫刻家 三沢厚彦氏とのコラボレーションモデル「SHINRA」
木から家具を作るには、十分な直径の太さや長さが必要です。
そのため、径の小さなや早生樹、端材など「小さな木材」は家具の材料には適さないとされ、その有効活用は長い間課題となっていました。
この「SHINRA(森羅)」シリーズは、こうした「小さな木材」を製材・接着して1つの大きな塊にし、最新の3Dデータを駆使して削り出すという、従来の家具づくりとは異なるアプローチで生み出された家具。
これまでの角材・板材では再現が難しかった、体全体を包み込むような形状が特徴的です。
デザイナーは、動物の木彫「Animals」シリーズで知られる彫刻家の三沢厚彦氏。彼の作品同様に削り出されたフォルムには命が吹き込まれ、まるで生きた動物のような生命力と躍動感が感じられます。
チェアとラウンジテーブル、スツールも揃うので、空間全体をコーディネートすることも可能です。
木肌に触れ、座ることで、森との繋がりや一体感をぜひ感じてみてください。
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