天然木の特徴を知ることで広がる、家具の選び方
「天然木」とひと口にいっても、その木目や色味、表情は実にさまざま。
新連載となるこのコラムでは、木工のプロフェッショナルである
「飛騨産業」の河井さんに天然木との付き合い方について教えていただきます!
材種別の特徴や使われている技術、メンテナンス方法などを知って、日常の家具選びのヒントを探してみてください。
【関連記事】
第2回:ホワイトオーク材とは?
第3回:ウォルナット材とは?
第4回:スギ材とは?
飛騨産業でも根強い人気を誇る、ビーチ材の魅力
はじめまして。「飛騨産業」の河井です。
普段は飛騨産業の直営店「HIDA」東京ミッドタウン店の店頭に立ち、お客様へ家具のアドバイスを行っております。
初回となる今回は、HIDAでも根強い人気の木材「ビーチ材」についてご紹介します。
「ビーチ」と聞くと馴染みが薄いかもしれませんが、日本語で言うと、「ブナ」のこと。白神山地のブナの原生林などは世界遺産にも登録されており有名かと思います。
大正9年、飛騨産業の前身である中央木工株式会社が最初に家具づくりを始めた時に着目したのが、当時飛騨地方に豊富にあったブナ(ビーチ)材でした。その特徴はやはり、きめ細かい木目。
全体的な色味は、薄いピンク色を帯びた乳白色ですが、厳しい自然環境のなかで育った証として、黒筋や波状の木目、材色の濃淡など、天然木ならではの表情も見られます。
(左から)黒筋、波状の木目、材色の濃淡
また、粘りがあり、割れにくい性質を備えているため、曲木加工に適しています。さらに堅くて衝撃にも強いということで、家具をはじめ、建築、木製玩具、食器などにも幅広く使われています。
HIDA「AWASE TABLE」、「AWASE OPEN CABINET」
飛騨産業の「AWASEシリーズ」にも、ビーチ材が使われています。
やさしい色目と木目、そしてなめらかな手触りが好評のシリーズで、背には一本の木材を曲げた「一本曲木」を使用しており、強度と意匠性を叶えています。
現在、国内のビーチ材は採れる量が限られているので、飛騨産業の家具は主にヨーロッパ産のビーチ材を使用しています。
ビーチ材の家具が合うインテリアとは?
ビーチ材を使った家具は「北欧モダンなインテリアや明るくナチュラルな雰囲気の空間を作りたい」という方におすすめです。
先ほどご紹介した「AWASE」は、17世紀から時代を超えて愛されている名作「ウィンザーチェア」をベースに、できるだけシンプルに軽快な印象を探求したシリーズ。
「AWASE」というネーミングには西と東の文化慣習が合わさったり、今までのものに新しい価値が合わさったりと、二つ以上のものを一つにする「合わせ」という考え方を、今とこれからの暮らし方に取り入れたいという願いが込められています。
コラム「【2022年4月新商品】キナリモダンでつくる“心地よいくつろぎ空間”に合わせる家具・小物カタログ」より
テーブルとサイドテーブルをあわせることで使い方の幅が広がるなど、これまでにはない新たな価値観を提案しています。
天然木の家具に込められた職人のこだわり
HIDA「CRESCENT CHAIR」
家具はさまざまな工程を経て形になります。
ビーチ材の家具は乾燥が充分でないと、ねじれやそりを起こす可能性が高くなるため、飛騨産業では工場で充分乾燥させたあと、ポリウレタン樹脂塗装を施して表面を塗膜で保護します。
その際にこだわるのが木肌の触り心地を損なわないように仕上げること。
完成後でもできるだけ、天然木の温もりを感じていただきたいという思いで丁寧に加工しています。
天然木との付き合い方。ひと手間を惜しまないことが大切
天然木の家具と長く付き合うための秘訣は、ちょっとした気づかいです。
少し手がかかるかもしれませんが、以下日常のちょっとした気づかいで家具はとても長持ちします。
・水分のあるものは直接置かない
・熱いものは直接置かない
さらに、お手入れすることで自分だけの家具に育てることも。
ビーチ材の家具は、経年変化で少し黄みがかった濃い色に変化していきます。
また、「AWASE」にも施されているポリウレタン樹脂塗装は、塗装面は比較的硬くキズがつきにくいのが特徴ですが、長年お使いいただくなかで汚れや大きなキズなどがついてしまった場合、弊社工場での再塗装修理(有償)が必要となります。
木材の種類と特徴を知って、最適な家具選びを
ビーチ材についてご紹介しましたが、家具は素材や仕上げによって大きく印象も、付き合い方も変わります。
天然木ならではのやさしい手触りを楽しみながら、明るくナチュラルな雰囲気のお部屋を作りたい方にはビーチ材の家具がぴったりかもしません。
木材の種類と特徴をしっかりと知って、自分に合った家具を選んでみてくださいね。
【木と暮らす】の記事一覧を見る
HIDAのアイテム一覧を見る