2021.12
猛暑や厳しい寒さが続く日々が当たり前になっている昨今。自宅で過ごしていても熱中症やヒートショックなどの健康リスクが高まってきています。これらのリスクを低減させるためには、窓を断熱し、熱の流出入を抑えることが大切です。特に、体調を崩しやすい小さなお子様や高齢の方とお住まいの場合は、おうちの窓の見直しをおすすめします。お部屋を快適な空間にする夏・冬それぞれの断熱方法を解説します。
猛暑・厳しい寒さ対策に窓の断熱が大切な理由
参考:(一社)日本建材・住宅設備産業協会 省エネルギー建材普及促進センター
「省エネ建材で、快適な家、健康な家」より
住宅への熱の出入りは、開口部からが半分以上を占めています。壁や屋根、床の対策も大切ですが、開口部(窓や玄関ドアなど)の断熱対策は特に重要なポイントです。断熱対策をすることで熱の流出入が抑えられ、お部屋の中が快適になることや、冷暖房効率が上がることで省エネにつながります。また、家の断熱化をすることで私たちの健康にもうれしい影響があることがわかってきました。
断熱対策で期待できるメリット
■のどの痛み、手足の冷え、気管支喘息、アレルギー性皮膚炎などの改善に貢献
■結露を軽減し、カビやダニの発生を抑制
■室内活動時間が増加し、体を動かすことで生活習慣病の発症や認知症などのリスクを軽減
■夜間頻尿などの過活動膀胱の症状有無を軽減
グレード3:断熱性〈省エネ等級3相当〉
グレード4:断熱性〈省エネ等級4相当〉
グレード5:断熱性〈省エネ等級4以上の高断熱住宅〉
出典:近畿大学 建築学部 岩前研究室
出典:一般社団法人日本サステナブル建築協会 断熱改修等による住居者の健康への影響調査 中間報告(第3回)資料より抜粋
●断熱改修(または非改修)の前後2時点の656軒・1281人の前後の就寝前室温データに基づき、1〜2年後の症状の有無に関して分析
※1
就寝前室温とは、各々の就寝時刻3時間前の居間の室温平均を意味する。室温維持群とは、前調査と比較して平均の差が±2.5℃以内の者とし、2.5℃以上上昇を上昇群、低下を低下群とした。
※2
投入したものの有意とならなかった項目:年齢、性別、BMI、喫煙、飲酒、塩分摂取、就寝前室温
(前調査時点)、夜間外気温(前調査時点)、夜間外気温変化(前調査時点からの変化)
※3
投入して、有意となった項目:就寝前室温変化、世帯収入、前調査時点の過活動膀胱有無
出典:一般社団法人日本サステナブル建築協会
断熱改修等に因る住居者の健康への影響調査中間報告(第3回)資料より
猛暑・厳しい寒さが原因で起こるおうちリスク
断熱対策ができていないと、夏は室外の熱が部屋の中に入りやすく、冬は室内の熱が外に逃げやすくなります。その結果、夏は暑く、冬は寒く、お部屋の中が不快になるだけでなく、健康上のリスクが高まってしまいます。
1熱中症
<熱中症の発生場所>出典元:総務省消防庁令和2年10月報道発表資料より
「住居」は「住居(敷地内全ての場所を含む)」数値を使用
<住居で熱中症が発生した年齢別割合>出典:東京消防庁令和2年5月報道発表資料より
近頃は30度以上の真夏日が増え、35度以上の猛暑日も珍しくなくなってきました。このような気温の高い日が続くことで、熱中症のリスクが高まっており、年間約65000人が緊急搬送されています※。実は、熱中症が最も起きている場所は「家の中」!実に全体の4割を占めます※。体温調節機能が十分に発達していない子供や温度に対する感度が鈍くなりがちな高齢者は特に注意が必要です。
※「総務省消防庁令和2年報道発表資料より」
家の中での熱中症リスクを低減させるポイントとしては、快適な室内環境(温度・湿度)を維持することと、こまめな水分補給をすることが挙げられます。具体的には下記の対策が有効です。
■室温を28度以下にキープする
■湿度は40〜60%を目安にする
■日差しは窓の外側で遮る
■室内の空気を循環させる
■のどが渇いていなくても、こまめに水分補給をする
2ヒートショック
※1
2013年度ヒートショックに関連した入浴中急死に至った人数推計
約19,000人と、2013年度の交通事故による死亡者数
約4,400人の比
※2 出典:厚生労働科学研究費補助金
入浴関連事故の実態把握及び予防対策に関する研究平成25年度総括・分担研究報告書より
※3 出典:警察庁交通局調べ
ヒートショックとは、暖かい部屋と寒い部屋との温度差による急激な血圧変動が原因で心筋梗塞や脳卒中などを起こす健康リスクのことです。寒い脱衣所や浴室から、熱めのお湯に浸かることで起きやすく、ヒートショックの死亡リスクは交通事故の4〜5倍といわれています。ヒートショックを抑制するためには、脱衣所や浴室をヒーターなどで暖かくすることや、窓の断熱を強化し室内の熱を外に逃がさないようにすることが大切です。
また、浴室の他に廊下やトイレも室温が下がりやすい空間です。窓がある場合、そこから冷気が侵入しているのかもしれません。断熱対策を検討してみてはいかがでしょうか。
3健康リスクの増加
出典:英国保健省2009年次報告書
イギリスの住宅に関する指針によると室温が18度未満のお部屋で過ごしていると、健康リスクが高まるとされています。室温が16度くらいの環境になると呼吸器系疾患に影響を与え、9〜12度の環境では血圧上昇や心臓血管疾患リスクが上がるとの報告も。
お部屋の熱は開口部から逃げやすいので窓の断熱対策をし、暖房効率を高め、熱を逃がさない工夫が大切です。キッチン、脱衣所、お風呂、寝室など家のどの場所も断熱をし、部屋間の温度差を小さくすることも快適・健康のポイントです。
また、暖かい部屋にすると室内活動時間が増えることが報告されています。寒い冬でも家の中でアクティブに体を動かすことで、生活習慣病の発症や認知症等のリスク低下につながると考えられています。
夏の猛暑対策に!簡単にできる窓の遮熱・断熱方法とは
夏は、熱をお部屋の中に入れない対策が重要です。特に窓の外側で日射を遮ることで熱の侵入を大きく減らすことができます。具体的な方法についてみていきましょう。
1日よけのシェードやよしず・すだれを設置する
屋外側で日差しをカットすることが熱を部屋に入れない一番のポイントです。日よけのシェードやよしず・すだれを窓の外側に設置することで、カーテンやブラインドなど室内側の対策よりも熱の流入量を減らすことができます。
例えばLIXILの外付け日よけ「スタイルシェード」は太陽の熱を83%カットすることができます※1。シミュレーションでは、スタイルシェードを使用するだけで室内の温度が最大3.4度ダウン※2。床も熱くならず快適です。
また、紫外線カット効果もあり家具の日焼け対策にも役立ちます。メリットの多いおすすめの対策です。
※1一般複層ガラスの窓にスタイルシェードを使用した場合の性能です。関連JISなどに基づき計測および算出した値であり、保証値ではありません。※2「窓の省エネ効果算定ガイドライン」のモデルにてシミュレーション■熱負荷計算プログラム「AE-Sim/Heat」にて算出■2階建て/延べ床面積:120.08u■4人家族■エアコン■冷房27℃・60%(就寝時28℃・60%)■冷房運転:間歇運転■拡張アメダス気象データ2000年版の東京を使用■住宅断熱仕様:平成25年省エネ基準適合レベル■窓:サーモスL一般複層ガラス■室温計測住居:寝室■室温計測日:8月10日
2雨戸・シャッターを閉める
雨戸やシャッターを閉めることも遮熱対策に効果的です。お部屋の外で日射を遮ることができるので、直射日光が当たるお昼の時間帯や西日のきつい夕方の時間帯のみシャッターを閉めるだけでも太陽の熱をカットでき、冷房効率を高めることができます。
なおLIXILでは、閉めたまま採光・採風ができるタイプの雨戸やシャッターも扱っております。直射日光を遮りつつお部屋の中にほどよい光と風を取り込めるので、昼間にシャッターを閉めても快適に過ごせます。
※一般複層ガラスの窓に採風タイプ(フラップスラット全開)を使用した場合の性能です。当社想定モデルにて関連JISに準拠して算出した値であり、保証値ではありません。
3カーテンやブラインドを遮熱タイプや遮光タイプに交換する
日中にカーテンやブラインドを閉めることも、部屋の温度上昇軽減につながります。カーテンの種類を遮熱カーテンや遮光カーテンにするとさらに遮熱効果アップ。ただし、日射が部屋の中に入ってしまっているので、室外で日射を遮るシェードやシャッターに比べると効果は劣ります。
4ガラスに断熱フィルムを貼る
断熱フィルムとは、窓から熱が流出するのを防ぐフィルムシートのことです。熱の侵入を防ぎつつ、冷暖房効率を上げることができます。夏用であれば、遮光、遮熱、UVカット効果が付いているものも。手軽にできる反面、シェードやシャッターに比べて遮熱・断熱性能が高くないものもあるので、他の遮熱・断熱対策と組み合わせることをおすすめします。
※断熱フィルムは熱を吸収するため、ガラス表面の温度差が大きくなりガラスが割れる(熱割れする)可能性が高まる場合があります。断熱フィルムの施工をお考えの際は、専門業者に相談することをおすすめします。
冬の厳しい寒さ対策に!簡単にできる窓の断熱方法とは
冬は、部屋の中の熱を外に流出させないことが大切です。家の断熱性が低い場合、最も熱が逃げてしまうのは窓やドアなどの開口部といわれています。暖房をつけていても寒さを感じる時は、窓やドアなどから熱が逃げてしまっているのかもしれません。暖かい空気は逃がさず、冷たい空気は中に入れないよう窓やドアの断熱対策が重要です。
また、各部屋間で極端に温度差が出ないようにすることも快適な空間づくりのポイントです。部屋ごとの温度差が大きいと、体温を一定に保つために急激な血圧変動が起こり、心筋梗塞や脳卒中を引き起こすヒートショックのリスクが高まります。リビングや寝室だけでなく、廊下やトイレ空間などの断熱も考えてみてはいかがでしょうか。
さっそく冬にできる窓の断熱方法をみていきましょう。
1カーテンの仕様を変える
冬に使うカーテンは、レースよりもドレープ(厚手カーテン)がおすすめです。断熱効果が高まり、部屋の中の熱が外に逃げにくくなります。
また、カーテンと壁、カーテンと床の間にできる隙間をなくすことも室内での冷気の広がりを軽減させるのに有効です。カーテンボックスを設置すればレール部分の隙間を埋めることができます。また、窓全体を覆うようにカーテンの巾丈を広く長くすることもよいでしょう。
2雨戸・シャッターを閉める
冬に雨戸やシャッターを閉めることは窓から逃げる熱の量を低減させる効果があります。
シャッターや雨戸を閉めることで冬の冷たい空気と窓の間に空気の層ができ、冷気の侵入を抑えることができます。雨戸においてはパネルに断熱材を注入し保温効果を高めた製品も販売されています。夜、シャッターや雨戸を閉めることは、防犯以外に寒さ対策としても有効なので、すでに雨戸やシャッターがあるお家ならすぐに実践してみましょう。
3断熱フィルムを使用する
断熱フィルムには、気泡緩衝材付きのものや、冬用のアルミ素材のものがあります。はさみでカットするなどしてサイズを調整できるので、小さな窓や大きな窓にも使用でき便利です。貼りつけるだけで、結露の軽減や断熱効果が期待できます。なお、脱衣所や浴室は曇りガラスや凹凸ガラスが多いので浴室専用のフィルムを選ぶようにしましょう。
※断熱フィルムは熱を吸収するため、ガラス表面の温度差が大きくなりガラスが割れる(熱割れする)可能性が高まる場合があります。断熱フィルムの施工をお考えの際は、専門業者に相談することをおすすめします。
4建付け調整をする
引違い窓から隙間風が入ってくる場合、いくつかの原因が考えられます。代表的なものとしては「気密パッキンの当たりが弱くなっている」「サッシの建付けがズレている」「サッシの性能値以上の環境にある」の3つです。
下記LIXILのQ&A(よくあるお問い合せ)のページにて、部位ごとに対処法を解説しています。ドライバー1本でできる場合や、隙間テープを使うだけで改善することもありますので、
専門業者に修理を依頼する前に、一度お試しください。
5窓の下に暖房器具を設置する
冬は、室内の温かい空気が冷たい窓面で冷やされ、部屋の床面に冷気が流れてくる「コールドドラフト」という現象が起きやすくなります。コールドドラフトが起こると、実際の室温よりも体感温度が低くなってしまいます。暖房をフル稼働させているのに、足元だけ冷える場合は、コールドドラフトによる底冷え状態になっているのかもしれません。
コールドドラフトは隙間風ではありません。外から冷たい空気が入ってくるのではなく、室内で発生するものなので、
窓の断熱性能を上げ、窓付近の空気が冷えないようにすることが大切です。
今すぐできる対策としては、冷気が床面に留まらないように窓の下に暖房器具を設置することや、サーキュレーターを活用し、部屋の高い位置に留まりやすい暖かい空気を循環させる方法がおすすめです。
夏も冬も快適に過ごそう!
内窓(二重窓)を設置して断熱効果をアップ
今ある窓の内側にもう一つ窓を設置する断熱方法です。今ある窓と新設された内窓(二重窓)との間に空気の層ができるので、断熱効果がうまれます。結露を軽減する効果もあるため、掃除の手間やカビのリスクも低減できます。浴室や脱衣所に設置すれば冬場の不快な寒さを和らげます。内窓の設置は遮音効果や侵入抑止効果など、断熱効果以外のメリットも期待できます。
【内窓(二重窓)を設置するメリット】
■断熱効果がある
■今ある窓の内側に新しい窓を取り付けるだけなのでリフォームしやすい
■マンションにも設置できる
■結露を軽減できる
■冷暖房費が節約できる
■紫外線をカットできる※Low-Eガラス使用時
■空気の層が防音壁となり遮音効果がある
■窓が二重になることで、侵入抑止効果がある
■インテリアになじむ枠色やデザインガラスも!室内の雰囲気を変えられる
■窓リフォームの補助金を利用できる場合がある
夏も冬も快適に過ごそう!窓を「高性能窓」に
リフォームすればさらに断熱性能がアップ
今ある窓の断熱性能が低い場合、窓そのものを断熱性能に優れた「高性能窓」へ取り替えることが効果的です。今ある窓の断熱性能を簡単に見分けるポイントは、窓サッシの材質と窓ガラスの構成枚数です。断熱性能を高めることで、外気の影響を受けにくく、室内の温度を一定に保ちやすくなります。窓辺に近づくと急に冷気を感じるといった温度差による不快感を軽減できます。また、冷暖房効率も高まるので、光熱費の節約にもつながります。
LIXILの取替窓
「リプラス」なら壁をこわさずに窓を取り替えるのでリフォーム工事も約半日※で完了。窓の種類を変えることもできるので、換気対策にもおすすめです。
※施工時間は、現場の状況により異なります。
【高性能窓にリフォームするメリット】
■断熱効果がある
■結露を軽減できる
■冷暖房費が節約できる
■紫外線をカットできる※Low-Eガラス使用時
■窓を新しくすることで開閉しづらかった窓もスムーズに
■窓の種類を変えて気密性アップ!隙間風をシャットアウト
■窓の種類を変えて「開かない窓」を「開けられる窓」に!
通風・換気が可能に
■窓リフォームの補助金を利用できる場合がある
【窓の断熱性能を簡単に見分けるポイント】
窓の断熱性能を簡単に見分けるポイントは窓サッシの材質と、ガラスの構成枚数の違いの2点です。サッシの材質が金属製か、樹脂製か。またガラスは1枚構成(単板ガラス)か2枚構成(複層ガラス)かの違いが窓の断熱性能を判断する目安になります。
例えば、今のサッシの材質が金属(アルミやスチール)の場合は、樹脂とアルミのハイブリッド窓である「リプラス」に取り替えると断熱のグレードアップが期待できます。
また、ガラスが1枚構成(単板ガラス)の場合は、2枚構成(複層ガラス)の製品へ交換すると、熱の伝わりが抑えられ、優れた断熱効果が得られるでしょう。
ガラスの種類 | 1枚構成(単板ガラス) | 2枚構成(複層ガラス) |
---|---|---|
イメージ図 |
暑さ・寒さが気になる部屋の窓について確認いただき、断熱性能が低い窓であれば内窓(二重窓)の設置や高性能窓へ取り替えをぜひご検討ください。
<<シミュレーション条件>>
■使用ソフト:Flow
Designer / 株式会社アドバンスドナレッジ研究所
■自立循環型モデル住宅でシミュレーション
■気象条件:拡張アメダス気象データ2000年版(標準年)の東京を使用
■住宅断熱仕様:昭和55年省エネルギー基準VI地域適合レベル
■室温:20℃
/
外気温:1.7℃ エアコンOFF後5分間での冷気の発生状況
■15℃以下の冷気を可視化
窓を断熱してお部屋の中を快適に!
夏は室外からの熱の7割超が窓などの開口部から流入し、逆に冬は、室内の熱の6割が開口部から流出するといわれています。
また、夏と冬の気候の差が大きい日本では、季節ごとの気温の変化により血圧にも影響があるため、夏涼しく、冬暖かく、部屋間の温度差の小さくする高断熱の住まいづくりはとても重要です。
LIXILでは、断熱性能の違いによる冬の室内温度の感じ方の違いや、夏の猛烈な陽射しの対処方法などを学んでいただける体験型ショールーム「住まいスタジオ」を公開しています。実際に体験していただくことで、ご自宅の断熱対策を考えるきっかけになるはずです。新築や窓のリフォームを検討している方は、ぜひ一度お越しください。