ハードに使って育てる「リネン(亜麻)」の魅力【PINTの愛用品】第2回

ハードに使って育てる「リネン(亜麻)」の魅力【PINTの愛用品】第2回
中地大介
中地大介
雑貨店「PINT」代表

輸入雑貨代理店への勤務後、2012年にプロダクトブランド「PINT」を立上げ。「日本の風土に合っている、伝統ある素材と技術を今の暮らしのシーンに本当にフィットさせたもの」をテーマにオリジナル製品の企画をしている。雑貨店やホテル、飲食店への製作卸のほか、WEBサイト運営と京都の実店舗での販売を行う。
・HP:http://pint.mn

こんにちは、PINT代表の中地です。

今回の愛用品コラムで取り上げるのは、リネン素材のキッチンクロス。
まずはそもそも、リネンとはどういった素材なのか簡単に紹介していこうと思います。

リネンとはどんな素材? 

みなさんは”リネン”について、どんなイメージを持たれていますか?

「吸水性と速乾性が高くて、夏っぽい素材。硬くて、ごわつきがあって、シワになりやすい」「知っているけれど、そんなに使ったことはないし、あまり馴染みはない」

そんな方が多いかもしれません。

リネンは日本語に直訳すると「麻」ですが、麻の中でもさまざまな種類のうちの1種のことを指します。

具体的には、フラックスという植物の繊維から作られる「亜麻=リネン」のこと。
これが今、一般的にリネンと呼ばれ使われているものになります。

そのほかにも「麻」の中には、「苧麻(ちょま)=ラミー」「黄麻(こうま)=ジュート」「大麻=ヘンプ」などの種類があります。

リネンの原料、フラックス畑




リネンの原料であるフラックスの畑。このフラックスの繊維からリネン糸が作られます。

北海道のフラックス畑

リネンとひと口にいっても、糸の太さ、品質、織り組織や加工方法によって、いろいろな特徴がありますが、共通して言えるのは「吸水性」と「速乾性」に優れていること。

それが最も活躍するのが水回りです。
PINTがブランドとして、一番最初に作ったのがリネンのキッチンクロスで、特に思い入れの強い素材と商品のひとつです。

高い吸水性と速乾性。季節を問わず使いたい、リネンのキッチンクロス

リネンのキッチンクロス
PINT「シャトルリネンHD キッチンクロス

キッチンクロス。その名のとおりキッチンや食卓で使うクロスで、拭くのも敷くのも使う人の自由ですが、今回は食器拭きとしての用途でご紹介します。

リネンの糸は高い吸水性を持った構造をしています。さらにこのキッチンクロスは糸量をかなりたっぷり使っているので、たくさんの食器を拭いても最後までしっかりと水を吸ってくれるんです。

実はバーのグラス拭きに使われるのもリネン素材とも言われています。
最初のうちは使用後に少し毛羽が出ますが、その後は毛羽立ちにくく、食器拭きに適した繊維なのです。

拭き終わった後は、そのままクロス自体を流水ですすいで絞って、吊るしておきます。
我が家では夜に食器洗いをすることが多いですが、朝には梅雨や夏の湿度が高い時期でもカラカラに乾いています。

これはリネンの高い速乾性があってこそ。
ほかの素材ではなかなか乾ききらず、生乾きの状態になることも。
乾ききらない状態は雑菌が繁殖するとも言われるので、短時間で乾くリネンなら衛生的に使えます。

リネン素材の糸

日本の高温多湿な気候には、麻の速乾性は魅力的なポイント。

ほかの素材でも糸の量を増やしたり、マイクロファイバーのように繊維を細かくすることで吸水力を高めることはできますが、吸水性と速乾性の両方を持ち合わせていることはリネンの強みです。

だからこそ夏物の洋服に使われることが多く、「リネン=夏素材」というイメージをお持ちの方が多いのだと思います。

夏に活躍することは間違いないのですが、
キッチンクロスやタオル、ハンカチなど季節を問わず、吸水性と速乾性が必要となるアイテムには年中使える素材です。

リネンの原料(フラックス)の主な原産地でもあるヨーロッパでは、季節に関わらずさまざまなシーンで使われています。

リネンは上品な見た目ながらも頑丈な繊維

リネン生地の繊維

吸水性と速乾性のほかにも、リネンをおすすめしたい理由が「繊維の強さ」です。

生地が最も摩耗するのは、洗濯時の水と摩擦。リネンは糸自体の堅牢度が高いうえに、水に濡れた時にその強度が増すと言われています。そのため、昔は軍事用の生地や、ヨーロッパで代々継がれるイニシャル刺繍入りのクロスなどにも使われていました。

デリケートで上品な印象のあるリネンですが、実は道具として気兼ねなく使える素材なんです。

経年変化したリネンのキッチンクロス

また、経年変化が美しいのもポイント。
使ううちに柔らかくこなれてきて、シワもつきにくい豊かな表情に育ちます。レザー製品を使い込んで、自分らしい味わいが出て楽しくなる感じに似ています。

ちなみに、ホテルやレストランのテーブルクロスやシーツでは、アイロンがビシッとかけられていますが、普段使いだったらアイロンはせずに洗いざらしでもおすすめ。

洗いざらしの生地の風合いも素敵で、個人的にはアイロンがけした表情よりも好みです。

気兼ねなく扱える素材として、洗いざらしでハードに使ってみてください。
使うたびに育つので、次に使うのが楽しみになります。

取扱いで気を付けるのは、漂白剤や蛍光増白剤などは使わないこと。
風合いが損なわれて白けたり硬くなったりして、吸水力や質感も変わってしまうことがあります。

それ以外は特に気にせずお使いください。

リネンは機能的な素材。毎日の定番品として

リネンのキッチンクロス(PINT)

いろいろと書きましたが、リネンの特徴をまとめます。

・高い吸水性と速乾性で、水回りでもっとも機能を発揮。
・洗いざらしで、気兼ねなく、ハードに使える屈強な生地。
・使うほどに柔らかくなり、風合いが増す。長く使って経年変化を楽しめる。
・夏のイメージが強いが通年活躍できる。

こうしてみると、道具としての機能に優れた、日常的に使うのにぴったりな素材ですよね。毎日使う定番素材として、まずはキッチンクロスのような小さな道具から試してみてください。

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