使い手と作り手でつくる「みんなのどうぐ」【PINTの愛用品】第5回

使い手と作り手でつくる「みんなのどうぐ」【PINTの愛用品】第5回
中地大介
中地大介
雑貨店「PINT」代表

輸入雑貨代理店への勤務後、2012年にプロダクトブランド「PINT」を立上げ。「日本の風土に合っている、伝統ある素材と技術を今の暮らしのシーンに本当にフィットさせたもの」をテーマにオリジナル製品の企画をしている。雑貨店やホテル、飲食店への製作卸のほか、WEBサイト運営と京都の実店舗での販売を行う。
・HP:http://pint.mn

こんにちは、PINTの中地です。

今回は、PINTで開催している「みんなのどうぐ」という取り組みについてご紹介します。

「みんなのどうぐ」とは、使い手のみなさんと一緒に使い続けられる道具を考える、というプロジェクト。これまでにこんな製品たちを生み出してきました。

▼「みんなのどうぐ」から誕生した製品
毎日使える拭き漆の器 拭き漆|茶
朝食の時間を愉しむ木のプレート 栃 24cm
たがる包丁
四季を味わう木の器 栃 (大)(小)
ブレッドバッグ(パンなリネンバッグ)

PINTの定番品をいくつも作り上げた取り組みですが、実はブランドを立ち上げるうえでの原点ともいえる考え方が詰まっています。

PINTが目指したのは「現代の民具」

雑貨店PINTの商品棚

PINTを立ち上げたのは2012年のこと。
それまで私は北欧雑貨やキッチンツールを扱う輸入代理店に勤めていて、大きな販売店との取り引きも多く、作り手と使い手の間にものすごく大きな距離があることを疑問に感じていました。

その当時は、今ほど小規模なものづくりの選択肢はありませんでした。なので当然、経済や流通の規模や形にフィットした商品が優先される。結果的に似たようなモノがたくさん生まれ、トレンドとされていました。

ECサイトでの販売も広がって、昔とは比べ物にならないほど商品を選ぶ選択肢が増えたのに、似ているモノが多く、選ぶ楽しさは増していない……。

メーカーや企業の目指すところとその道筋が同じである限りは、これからも繰り返され続けるのかなと思っていました。

民族資料館の民具

そんなもやもやを感じていたときに、地方の民族資料館を訪ねました。並んでいたのは、農家が冬の農閑期に自ら使うために作ったもの。素材には身近に取れる稲わらだったり、植物のつるが使われた、売るためでも、見せるためでも、飾るためでもなく、自分が使うもの。

“粗さ”と言われる要素もあるかもしれませんが、静かに強く、美しいものでした。
作り手と使い手が同じという、最短距離のもの。言葉の定義と解釈には幅がありますが、売るために考えたものが「商品」とすれば、「民具」は売らず、単に使うために考えたものだと言えます。

PINTの漆塗りのうつわ

「現代の民具」を作ることができないか。この思いがPINTを始めるきっかけとなりました。

ただ、分業が進んだ今の世界では、今は作り手と使い手が同じになることは難しいのが現実。そこで、作り手と使い手の間に入る流通や販売に関わるところを取り除いてみるのはどうかと考えました。

使い手と作り手の距離感を近づけ、かつては自分で作っていた「民具」の作ることだけをプロに任せる。この形を「現代の民具」として、小さくとも新しいものづくりのかたちを作ってみよう。

こうして、PINTがスタートしました。

PINTの原点となった「みんなのどうぐ」プロジェクト

PINTの「みんなのどうぐ」プロジェクト

PINT立ち上げのきっかけとなった、「現代の民具」という考え方。
それを体現しているのが「みんなのどうぐ」という取り組みです。

「みんなのどうぐ」とは普段は消費者である使い手に、道具を考えてもらうというプロジェクトです。

具体的にはこんな流れで進めています。

まずは大枠の作る道具のテーマを決めて、参加者を募集します。
この段階でのテーマは、例えば「毎日使える打ち刃物の包丁」「毎日使える拭き漆の器」など抽象的なモノですね。

募集する時点で素材と作り手、製法は決まっていますが、細かな仕様などは決まっていないので、参加者の方たちが企画メンバーとして製品を完成させるというイメージです。

募集人数は最大10名まで、短期間(3ヶ月から半年ほど)で合計3~5回ほど集まって、ひとつの製品を完成させるプロジェクトチームとして動きます。実際に製品を作るのは、PINTのオリジナル製品を普段から依頼している作り手です。

職人による工房での勉強会
雑貨の製法の勉強会

チームとしてまず行うのは自分たちの使いたい道具を考えてもらうこと。

ただし、欲しいものや使いたいものの企画を持ち寄るだけでは、単なるアイデア募集になってしまいます。それならオーダーメイドを受けたり、WEBなどで広く意見を募集する方が適しているので、「みんなのどうぐ」では素材と製法をかなりみっちり勉強し、その長所や短所を知るところからスタート。

包丁でりんごを剥く
PINTのたがる包丁

素材と製法を頭に入れた後は、参加者それぞれがどんなシーンで、どのように道具を使っているかを共有します。日々の暮らしの中から、欲しい道具のヒントを探すという感じです。

それらを踏まえて、仕様を考えます。
テーマは毎回異なりますが、仕様を考えるうえで基本的にはよい天然素材と伝統的な製法を知って、それを今の暮らしの中でいかに日常的に使える形に落とし込むか、使用頻度高く、長く使えるかを重視しています。

製品は完成後、PINTの定番品として継続的に販売されます。

作り手視点に立つことで変わる、道具の見え方

PINTの「みんなのどうぐ」プロジェクト

「使い手目線からものを生み出すことで、暮らしの中で使われ、その製品が作り続けられる循環が生まれる」。これがPINTの理想と考える、新しいものづくりのかたちです。

「みんなのどうぐ」を通して、ものの見え方や使い方が変わったという声をいただきます。製品を作り上げるのもひとつの目的ですが、個人的には、それ以上に嬉しく、大事なことのように感じています。

もちろん「みんなのどうぐ」にはフィットしない素材や製法もあるので、PINTのオリジナル製品や、作り手自身の商品も扱っています。

ただ、あくまでセレクトというよりも「みんなのどうぐ」の考えがベースにあり、これに共感してくれる使い手や作り手たちと一緒に仕事ができているのは本当に幸せなこと。

そして、その中で生まれた商品やものづくりの周りの話を、お客さんに伝えられることがなにより楽しいです。WEBサイトやSNSではなかなかお伝えしきれないので、機会がありましたら、ぜひ京都の店にもお越しください。


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