TORAFU's TILE LAB 連載記事

焼き物としての個性的な表情からタイルの活かし方を探る

素材自体が持つ背景や特徴、そして存在感を見つめ直して空間のデザインに活かすトラフ。タイルでは最先端の加飾技術によって生まれる表現がある一方で、昔ながらの製法でつくるタイルが持つ独特の表情や特性も好まれて使われている。トラフの鈴野浩一氏は現在、どのような点に注目するのだろうか。鈴野氏がタイル工場を訪れ、工程をつぶさに観察した様子を紹介する。

鈴野氏が訪れたのは、LIXILに多くの種類のタイルを提供する、愛知県常滑市の由松製陶所。湿式によるタイル製造が特徴の工場で、粘土を押し出して成形し、還元焼成といわれる焼き方でタイルをつくり続けている。

由松製陶所の村田由嗣氏は、自社で行う湿式のタイル製法について次のように説明する。

「数十年の間で製造機器は更新してきましたが、基本的な製法は変わっていません。約10の銘柄をブレンドした土から、粘土細工のように成形します。人が触ったなりの柔軟な形ができ、土の色と質感が出ることが最大の特徴です」。

製造ラインに主に流れるのは「二ツ割りタイル」で、ブロック状につくったタイルを、中央に設けた穴のラインで割って2つにするもの。鈴野氏は、製造過程から生まれる形状や表情にも注意を向ける。

「こうしたタイルの裏面にある凹凸は製造のプロセスで生じることを、先日初めて知りました。生産現場で実際に見ると、『厚み』や『物質感』が伝わってきて、魅力的ですね」。

そして由松製陶所で特徴的なのは、還元焼成によってつくり出される、タイル表面の深みのある色合いや質感である。村田氏はこの表情を生む仕組みについて、説明する。

「酸化と還元のうち、還元の原理を利用しています。窯で焼成するときに酸素不足の状態にして、タイルの素地や表面の釉薬に含まれる金属酸化物から酸素が奪われるようにするのです。窯の中では、並べられたタイルのうち酸素のあるところに向かって、火が生き物のように動いていますよ。最高温度を1150℃から1250℃の間で設定することで、色の幅を調整しています」。

タイルを入れる窯は、全長65mほど。トロッコに載せられた成形品は長い距離をゆっくりと進み、焼成された後にはゆっくりと冷やされ、40時間ほどで窯から出てくる。

デザイナーズ・タイル・ラボにラインナップされている「窯しずく」も、ここで製造されるタイルだ。工程に工夫を凝らしてサイズや厚みを調整し、ひと粒ごとに異なる風合いを引き立てている。鈴野氏は還元焼成による特有の表情に触れて、口にした。

「まさに、焼き物の味わいですよね。タイルの色ムラも、さまざまな条件のもとに現れた個性として感じられます。物質感や色合いを活かせるようなディテールや空間のデザインができるといいですね」。

インクジェットによる加飾タイルと、湿式の還元焼成によるタイル。性格の異なる2つのタイル製造現場に触れた鈴野氏は、発想の原材料と工程ともいえる情報を得たようだ。トラフのデザインアプローチが加わるとき、どのような化学反応が起こるのだろうか。次回は、現在工事が進行している店舗の現場で、タイルのあり方と効果を検討する様子をお伝えする。