TORAFU's TILE LAB 連載記事

顧客体験を高めるための壁面タイルを工事現場で検証する

仕上げ工事が進む店舗の現場で、実際に導入するタイルを持ち込んでディテールと効果を検討するトラフ。床ではボーダータイルを使い、ヨーロッパの街路の雰囲気を踏襲しながらも新たな表現と意味をもたせる試みを前回は紹介した。今回は壁にタイルを用いることで店舗の特徴を強め、来店した際の体験を深めるためのアイデアを紹介。実現するためのポイントは、どこにあるのだろうか。

〈パパブブレ 表参道店〉の計画でトラフは、前面の通りから店舗のやや奥にあるキッチンカウンターまでの部分を、街路を引き込んだ「路地」として設定。床にはボーダータイルを中央に目地を大きく取りながら敷き込むことで、ひと味違った空間体験を生み出す狙いがあった。

店舗内の壁でも路地という設定は同じくしながら、タイルをまた異なる目的で用い、壁で特別な効果を引き出そうとしている。

「路地スペース両側の壁には、外壁で使われるアクリル系仕上げ材を全面に塗ります。壁の上部には外部用のブラケットライトを設置するほか、商品の陳列棚などを木枠で囲み、外壁に現れる窓のようにしています。そして小さなタイルを使って、グラフィカルな絵を壁にあしらうことを考えています」。

海外の路地を散策していた中で、壁にあしらわれたタイル絵が印象に残っているという鈴野氏。グラフィティアートのように、タイルをピクセル状に組み合わせて絵柄を表現するという。

路地スペースの片方の壁には店舗奥を指し示す矢印のマークをあしらい、もう一方の壁にはさくらんぼのマークをあしらう予定。このさくらんぼは、〈パパブブレ〉でつくるキャンディのうち人気の柄の一つだという。

来店する人にとって、絵柄を適度に判別できる絵の大きさや、ピクセル感を残しながら絵柄をスムーズに再現できるタイルの大きさはどれほどか。事務所で用意してきた出力紙とモザイクタイルの現物を工事現場に持ち込み、鈴野氏はスタッフと壁にタイルを当てながら確認。

「タイルの色ツヤは、店舗で扱うキャンディを連想させるもので想定どおりでしたね。絵柄をうまく表現できているかは、もう少し考えどころです。当初は50mm角のタイルも検証しましたが、現場で当ててみると25mm角のほうがスムーズに見えます。マス目を厳密に守ってタイルを張るよりも、若干崩したほうがいいかもしれません」。

2つのタイル絵に加えてもう1つ、奥のキッチンカウンターと対面する壁には、ロリポップ(棒付きキャンデー)のタイル絵を高い位置にあしらう予定。何回か来店するか、長い時間滞在すれば気づくくらいの存在感を狙っているという。

そして、キッチンカウンターの最奥部の壁には、青い約200mm角のタイルを張る予定。周囲の袖壁に施す塗装の色合いとともに、タイルそのものの表情を引き立てることを狙い、鈴野氏は微妙な色の取り合わせ加減を粘り強く検討した。

タイルの表情や特徴を引き出しながら、ブランドの背景や商品の魅力とリンクさせて来店者に驚きと高揚感を抱かせ、店舗全体で世界観を体感させる。トラフの店舗デザインアプローチの一端を、この現場では見ることができた。これからも彼らの紡ぎ出す空間とタイルの使い方から、目が離せない。