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―タイル名称統一100周年企画「世界のタイル」―イスラム文化と共に育まれたタイルの魅力

INAXライブミュージアム 世界のタイル博物館に空間再現されたドーム天井。

INAXライブミュージアム 世界のタイル博物館に空間再現されたドーム天井。

宗教、文化的背景を色濃く反映したタイル

古代エジプトで生まれたとされるタイルは、7世紀以降にエジプトを含む北アフリカを支配したイスラム帝国の影響により、中東を中心として文化的に花開いていきます。ここでは銅やコバルトなどを原料とした青色を始め、様々な顔料を焼き付けて多彩な色合いを表現した他、立体的なレリーフを用いたタイルが主に作られていきました。イスラム教では偶像崇拝が禁止されているため、人物や動物を描くことができず、幾何学の形状、植物や文字を模様化し描いたのもイスラム圏のタイルの特徴です。

13〜14世紀のイランで作られたタイル。星型や十字型の形状、タイルの多彩な模様の組み合わせにより、複雑でありながら荘厳な世界観が作り出されていった

13〜14世紀のイランで作られたタイル。星型や十字型の形状、タイルの多彩な模様の組み合わせにより、複雑でありながら荘厳な世界観が作り出されていった

例えば、13世紀頃の宗教施設を始めとするイスラム建築に用いられたタイルを見ると、複数の幾何学模様の形状をしたタイルを組み合わせ、空間全体を覆うような使い方がされています。その1枚1枚にも細かな模様が描かれ、タイルが空間の細部から全体の荘厳な雰囲気を作り出しています。

特殊な技法により、独特の金属光沢で輝く表情を生み出したラスター彩タイル

特殊な技法により、独特の金属光沢で輝く表情を生み出したラスター彩タイル

また、9世紀から15世紀にかけて作られた「ラスター彩」は、英語で「輝き」を意味する言葉“luster”に由来し、表面に金属的な光沢を持つ特殊な陶器や、その加飾技法を指します。ここでも植物や文字を使った模様が多く描かれましたが、当時、イスラム教の偶像崇拝に対する制約が緩やかであった宗教建築以外では、人物や動物、魚といったモチーフを描いたものも使われ、タイルの形状や模様共に様々な装飾が生まれていきました。

多様な文化が融合されながら発展していくタイル

一方、14世紀から17世紀にオスマン・トルコの窯業地として栄えたイズニックでは「イズニック・タイル」と呼ばれる、中国(当時の明)の青花(せいか)磁器の影響を受けた、白地に青色で描いた唐草模様のタイルが作られ始め、その後「トマト赤」とも称される鮮やかな赤色の表現も生まれました。

イズニック・タイル
イズニック・タイル

中国の青花磁器の影響を受けて発展したイズニック・タイル。青だけでなく、鮮やかな赤、イスラム教において神聖な色である緑など、多彩な色の表現が生まれていった。

このイズニック・タイルの影響を受けたシリアやパキスタンでは16世紀頃から、ダマスカス手と呼ばれるタイルなど、イズニック・タイルの青色や唐草模様、幾何学模様を組み合わせた、より多彩な表現がなされ、1枚のタイルに人物や物語を描いた絵画のようなものも登場しました。

油性の顔料で輪郭を描き色釉で塗りつぶした、鮮やかな色彩と模様が特徴的な「クエルダ・セカ」と呼ばれるタイル。

油性の顔料で輪郭を描き色釉で塗りつぶした、鮮やかな色彩と模様が特徴的な「クエルダ・セカ」と呼ばれるタイル。

これらイスラム圏で発展した、タイルの装飾的な表現は、一時期ウマイヤ朝が勢力を広げたスペインを通じて、ヨーロッパにも広がっていくことになります。繊細で美しいイスラムのタイルの表現は、単なる装飾ではなく、宗教や文化と密接に結びついて生まれてきたものと言えます。一方で、現代の日本のタイル文化に目を移すと、機能性を重視した使い方が一般的になっています。質の高い生活を送る上で、快適な空間をつくる建材としてのタイルは欠かせませんが、同時に、いつも身近にあって、自分らしさを表現する手段としての装飾的なタイルの使い方を見つめ直してみるのも良いのではないでしょうか。

※令和4年4月12日、それまで様々に呼ばれていた陶製の建築資材が「タイル」と名称を統一されて100周年を迎えます。

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