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―タイル名称統一100周年企画「タイルを創る」Vol.3―伝統的な釉薬、その魅力とは?

釉薬の歴史は古く、壺や甕(かめ)などの焼き物の耐久性を向上させたり、光沢や色などの装飾を施したりする目的で、千年以上前からさまざまな技法が生み出されてきました。今回はそのなかから、タイルと関係の深い伝統的な釉薬を4種、ご紹介します。

灰釉(かいゆう)~自然釉から生まれる

日本の焼き物の歴史を見ると、5世紀ごろの古墳時代に、より高温で焼くために“窯”が使用されるようになりました。窯に木をくべると、土器の表面に自然と灰が降り注ぎ、火の中で灰が溶けて、ガラス質のものに変わっていきます。これが自然釉の始まりです。自然釉でコーティングされた陶器は、水を通しにくく、耐久性が大きく向上しました。
平安時代になると、灰を調合して「釉薬」をつくる技術が生まれ、後に「灰釉(かいゆう/はいゆう)」と呼ばれるようになりました。灰釉は、陶器の耐久性を上げるとともに、多様な表情を生み出しました。
その後、日本六古窯(古来の陶磁器窯のうち、中世から現在まで生産が続く代表的な6つの窯、すなわち越前、瀬戸、常滑、信楽、丹波、備前の総称)を初めとして、千年以上にわたり、釉薬の技術が醸成されていきました。
焼き物の世界では、「一窯、二土、三細工」という言葉があります。同じ土を使い、同じ装飾、同じ施釉をしたとしても、最後の“窯”の中で表情はまったく違ってきます。火の当たり具合、火の通った道など、人間の手ではどうしようもない“窯の仕業”によって、“ゆらぎ”という魅力が生み出されるのです。つまり、釉薬はそれ単体ではなく、火や土と掛け合わさることでより深い味わいが生まれると言えます。

灰釉を施した徳利(信楽焼)

灰釉を施した徳利(信楽焼)

自然釉の掛かる土管

自然釉の掛かる土管

塩釉~“塩焼き”の特長と欠点

釉薬の始まりとして「灰」を紹介しましたが、「塩」を使った釉薬技術も近代に海外からもたらされました。
明治時代に建てられた北海道庁は、赤煉瓦で有名ですが、土台の部分には、真っ黒い「塩釉煉瓦」が使われています。煉瓦を焼くときに窯の中に食塩を入れると、塩化ナトリウムが揮発して充満します。これが土と反応することでガラス化し、丈夫で黒い塩釉煉瓦ができます。
この作り方は“塩焼き”と呼ばれ、水を通しにくいことから主に土管に用いられましたが、耐摩耗性も上がることから、外床タイルとしても使用されてきました。「塩釉」は丈夫な上、濃い飴色のような表情がとても魅力的です。しかし、“塩焼き”は窯をひどく傷めてしまうほか、大気中に塩素の真っ黒い煙を吐き出してしまうという欠点があり、現代において塩釉タイルの魅力を再現するためには、この欠点の克服が必須となっています。

表面を“塩焼き”したクリンカータイル

表面を“塩焼き”したクリンカータイル

白と光沢へのあこがれ

「白い焼き物」は、昔から人々のあこがれでした。その代表が「磁器」で、日本では17 世紀ごろ、有田で初めて石(陶石)を砕いて原料とした白い磁器が焼かれました。このころ西洋では、白い磁器を日本に求め、高価な有田焼の壺を自国に持ち帰ることもあったようです。
一方、粘土を原料とした陶器においては、白い釉薬を施すことで「白さ」を表現することができました。この「白さ」は、光の反射による「光沢」の違いにより、その表情が大きく異なることから、個性的な光沢をもつ「白さ」を追求する陶芸家も多くいます。
工業製品であるタイルでは、いくつかの種類の光沢をもつタイルを混合することで、壁面としての「白さ」の魅力を表現することができます。

乳白釉を施した器(志野焼)。凹凸のある光沢。

乳白釉を施した器(志野焼)。凹凸のある光沢。

黒といぶし銀の味わい

焼きものの世界では、「黒」もまた、あこがれの色です。お茶の世界では、「利休黒」と呼ばれる黒の茶碗がもてはやされたり、鉄釉を施して高温で焼いた後に水に浸して急冷する「引き出し黒」と呼ばれる技法が生み出されたりしました。
黒を出す方法は多種多様ですが、そのひとつに「いぶす」というやり方があります。焼いた後に「いぶす」工程を加え、黒煙(黒い炭素)を焼き物の素地の中に取り込んでいきます。いぶせばいぶすほど表面に多くの炭素がつき、やがて、黒色がキラキラと銀色に見えるくらいの表情になります。これが「いぶし銀」です。
「いぶし銀」の代表的なものに、「いぶし瓦」があります。表面についた炭素は、時がたつと落ちてきて色が変化しますが、「いぶし瓦」はこのエイジングの味わいも魅力となっています。

時を経て味わいが増す、いぶし瓦の屋根。

時を経て味わいが増す、いぶし瓦の屋根。

伝統の釉薬の魅力を再現したLIXIL「火色音 釉もの」

LIXILでは、湿式タイルの歴史を受け継ぎ、土ものの素材感に伝統的な釉薬の魅力を掛け合わせた「火色音(ひいろね) 釉もの」を発売しました。「灰釉」「塩釉」「乳白釉」「いぶし釉」の4タイプを用意。ご紹介したような古くからの釉薬の技術を現代風にアレンジし、その魅力を表現。たとえば「塩釉」は、欠点のある“塩焼き”ではなく、生地に独自の成分を混ぜる新しい技法を採用しています。
伝統的な釉薬の魅力は、焼き物らしい“工芸品”の魅力であり、人間の力の及ばない、火と土と技(釉薬)による複雑な“ゆらぎ”の魅力とも言えます。LIXIL「火色音 釉もの」は、現代の技術によって表情豊かな“ゆらぎ”を再現。工業製品らしくない色や質感の“幅”を持たせ、それが深い味わいとなるよう商品設計されています。焼きものらしい大きな色のバラツキが特長のタイルですので、ぜひ、直近のタイルをサンプルでご確認ください。

「火色音 釉もの」灰釉タイプ

「火色音 釉もの」灰釉タイプ

「火色音 釉もの」塩釉タイプ

「火色音 釉もの」塩釉タイプ

「火色音 釉もの」乳白釉タイプ

「火色音 釉もの」乳白釉タイプ

「火色音 釉もの」いぶし釉タイプ

「火色音 釉もの」いぶし釉タイプ

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