室温が体に影響を与える『ヒートショック』とは?
症状や対策、なりやすい人

2022.01

室温が体に影響を与える『ヒートショック』とは?症状や対策、なりやすい人

高齢者の入浴中の事故は、11月〜4月の寒い時期を中心に多く発生しています。冬場の入浴中の事故には「温度差」が引き起こすヒートショックの影響があるといわれており、暖房器具の設置や、家の高断熱化など適切な対策をとることが大切です。また、いざというときのために症状や対処法を知っておきましょう。

ヒートショックとは

ヒートショックとは

ヒートショックとは暖かい部屋と寒い部屋との温度差による急激な血圧変動が原因で、心筋梗塞や脳卒中を引き起こす健康リスクのことです。急に体温が下がると血管を縮ませて血圧が上がり、逆に体温が上がると血管が広がることで血圧が下がります。心臓や血管に大きな負担がかかるため、身体に影響を与えてしまうのです。

「脱衣所とお風呂場」「寝室と廊下」「リビングとトイレ」など、温度差が大きくなりやすい場所を行き来する際にヒートショックのリスクが高まります。例えば、冬場、お風呂に入るときに衣類を脱ぐとブルっとするのも温度差が体に負担を与えるヒートショックの症状です。

ヒートショックは身近に潜む危険です


入浴中の死亡事故と発生時期

※1 2013年度ヒートショックに関連した入浴中急死に至った人数推計 約19,000人と、2013年度の交通事故による死亡者数 約4,400人の比 ※2 出典:厚生労働科学研究費補助金 入浴関連事故の実態把握及び予防対策に関する研究平成25年度総括・分担研究報告書より ※3 出典:警察庁交通局調べ

入浴中の死亡事故と発生時期

※東京消防庁「救急搬送データ」を基に作成

入浴中の死亡者数は年間19,000人程といわれています※1。この数には転倒等も含まれるため、ヒートショックで死亡している人数と同じではありませんが、気温が下がる冬場、入浴中の死亡者数が他の時期と比べて増加傾向にあることがわかっています。「温度差」が引き起こすヒートショックの影響があると推測されます。

また、令和元年の交通事故の死亡者数は3,215人※2、 熱中症の死亡者数は令和元年で1,224人※3。それらと比較しても決して低い数字ではないため、身近なリスクであるといえます。入浴中の事故が多い時期は、11月から4月なのでしっかり対策をしましょう。

※1 厚生労働省 入浴関連事故の実態把握及び予防策に関する研究についてより   ※2 警察庁 交通事故死者数についてより   ※3 厚生労働省 熱中症による死亡数 人口動態統計(確定数)より

ヒートショックの症状と起きたときの対処方法

ヒートショックの症状と起きたときの対処方法

ヒートショックの症状には軽度のものから重度のものまであります。震えや立ち眩み、ちょっとしためまいなど意識していないだけで、実はヒートショックが起きていたというケースもあるので、症状と対処法を確認しておきましょう。

  • 軽度の症状

    めまい、立ち眩み

    軽度の症状では「めまい」「立ち眩み」が起きます。寒い場所から暖かい場所に移動した際に起きやすいです。症状が出たら、その場にゆっくりしゃがむか、可能であれば横になり、血圧の変動が落ち着くのを待ちましょう。無理に動こうとしたり、立ったままの状態でいたりすることは、足のもつれや失神などで転倒する恐れがあるため危険です。家族を呼べるようなら助けを呼びましょう。ゆっくりと深呼吸をし、水分をとれるようなら少しずつ口に含み、リラックスを心がけてください。

    ヒートショックは事前の対策が何より大切です。寒さが気になるお部屋があれば、お部屋の温度を上げる、断熱リフォームをするなどヒートショック対策を検討しましょう。暖房器具を設置し、お部屋の温度を上げることと、内窓(二重窓)や高性能窓(取替窓)を取り付け、断熱効果を高めることで暖房効率が高まり、安心で快適な空間をつくることができます。

    窓の断熱方法はこちら

  • 重度の症状

    呼吸困難、嘔吐、意識の消失 など

    重度では「心筋梗塞」や「脳卒中」を引き起こす場合があります。10℃以上の温度差がある場所は、ヒートショックのリスクが上がるという報告もあることから、特にお風呂に入るときは注意が必要です。

  • ヒートショックと思われる症状がでたら

    激しい胸の痛みや吐き気、頭痛など、心筋梗塞や脳卒中が疑わしい症状が現れた場合は、すぐに家族や救急に助けを求める必要があります。大声が出せない場合は、壁を叩くなど大きな音を出し、周りに知らせましょう。特にお風呂に入るときは、携帯電話を脱衣所に持ち込むなど、手の届くところに置いておくと安心です。防水タイプの呼び出しボタンも販売されているので、事前に取り付けしておくこともおすすめです。

    また、一人暮らしの方や、高齢夫婦のみの世帯は、見守りサービスを導入することも安心につながります。プランによってはボタン一つで駆けつけてもらえ、救急車手配をサポートしてくれるサービスもあるようです。検討してみてはいかがでしょうか。

  • 救助に当たる方は

    1. 浴槽の栓を抜く。大声で助けを呼び、人を集める。

    2. 入浴者を浴槽から出せるようであれば救出する(出せないようであれば、蓋に上半身を乗せるなど沈まないようにする)。直ちに救急車を要請する。

    3. 浴槽から出せた場合は、肩を叩きながら声を掛け、反応があるか確認する。

    4. 反応がない場合は呼吸を確認する。

    5. 呼吸が無い場合は胸骨圧迫を開始する。

    6.人工呼吸ができるようであれば胸骨圧迫30回、人工呼吸2回を繰り返す。できなければ胸骨圧迫のみを続ける。

    出典:消費者庁 冬季に多発する
    高齢者の入浴中の事故に御注意ください!より

    救急に連絡した際は焦らず、落ち着いて状況を伝え、指令室員からの指示に従って応急処置をしてください。いざというときに備え、救命講習を受けるなど、応急手当を覚えることもよいでしょう。

ヒートショックを起こしやすい人

■65歳以上の高齢者である

■高血圧、糖尿病、動脈硬化の持病がある

■不整脈がある

■太っている、肥満気味である

■浴室や脱衣場に暖房設備が設置されていない

■一番風呂や熱めのお湯が好きである

■食事後にお風呂に入る習慣がある

■飲酒後にお風呂に入ることがある

高齢者や持病のある方は特にヒートショックに注意が必要です。若い人でも食事後・飲酒後にお風呂やサウナに入ってしまうとヒートショックのリスクが高まります。

気温差に影響される血圧の変化は、年齢に関係なく誰にでも起こります。高齢者だけでなく若い人もヒートショックになる可能性があるのです。「自分は元気だから大丈夫」ではなく、「自分にも起きるかもしれない」と意識することが大切です。

ヒートショックが起きやすい場所・タイミング別の対策

ヒートショックはお家のあらゆる場所で起きる可能性があります。ポイントはやはり「温度差」。暖かい部屋と冷えた部屋では10度以上も温度差がある場合もあり体に大きな負担がかかります。ヒートショックが起きやすい場所やタイミングについてみていきましょう。

  • 朝、目が覚めて布団から出るとき


    朝、目が覚めて布団から出るとき

    出典:断熱改修等による居住者の健康への影響調査中間報告(第3回)を参考に作成

    空気の冷たい冬の朝、暖かい布団から急に起き上がることは避けましょう。体が急激に冷やされることで血圧が上がり、ヒートショックを引き起こす危険があります。手の届く範囲に羽織れるものを用意しておくことや、暖房器具をタイマーセットし、朝方、部屋が暖かくなるようにすることがおすすめです。家を暖かくすることで起床時の血圧が低下するという研究結果もあります。

  • 寝室からリビングに移動するとき


    朝、寝室からリビングに移動するとき

    ※ 2015年 10月の改定で 21℃の記載がなくなり、全室 18℃が最低推奨温度に改定
    英国保険省イングランド公衆衛生庁「イングランド防寒計画( Cold Weather Plan for England )2015.10」

    冷え込んだ朝は寝室だけでなく、家全体が冷たくなっています。寝室から出たときにも寒さに曝されることになるのでご注意ください。WHO(世界保健機構)では、冬の住宅の最低室内温度として18℃以上を勧告しています。また、英国保険省の冬季住宅内室温指針でも18℃を許容室温に。18℃未満で血圧上昇・循環器疾患の恐れ、16℃未満で呼吸器系疾患への抵抗力が低下するとしています。

    断熱リフォームをすることや暖房器具を使用することで、家を暖かく保つことと、部屋間の温度差をなるべく小さくすることが大切です。その他今すぐできる対策として、体を冷やさないよう家の中を移動する際は何か厚手のものを羽織るようにしましょう。足裏も床から冷えが伝わりやすいので、スリッパや靴下をはくのもおすすめです。

  • ゴミ捨てなどちょっとした外出をするとき

    ヒートショックは10度以上の温度差がある場合、特にリスクが高まるといわれています。そのため、暖かい家と寒い外を出入りする際もヒートショックが引き起こされる危険があります。玄関を開けた瞬間、寒さで鳥肌が立つ、胸がドキドキするなど、体の反応を感じることはありませんか?ちょっとした外出でも薄手の服装は避け、コートなどを羽織ってしっかり防寒対策を行いましょう。

    また、手首や足首、首は皮膚が薄く冷えを感じやすいといわれています。この部位をなるべく温めましょう。手袋や長めの靴下、マフラーをするのもおすすめです。

  • お風呂に入るとき


    入浴するとき

    出所:栃原 裕 九州芸術工科大学(現:九州大学芸術工学研究院)

    特にヒートショックに注意が必要なのが入浴時です。リビングなど暖房で暖まった部屋ですごしたのち寒い脱衣所で衣服を脱ぎ、浴室に入ることで血管が縮み、血圧が急上昇。逆に熱いお湯に浸かることで血管が広がり、血圧が低下します。こういった血圧の乱高下が心臓に大きな負担をかけることになるのです。

    暖房器具を置くことや、お風呂の蓋を開けるなどして、入浴前に脱衣所や浴室を暖かくしておき、部屋間の温度差を小さくすることが大切です。また、熱めのお湯に浸かるのもヒートショックのリスクが高くなるので、お風呂の温度は41度以下、湯につかるのは10分までを目安にするとよいでしょう。

    お風呂の前後には水分を摂ることもポイントです。お風呂に入ると汗をかきます。汗をかくことで体の水分が失われ、血液が濃縮された状態になり、心筋梗塞・脳卒中などのリスクが高まります。

    【入浴中の事故を防ぐための行動】

    1. 入浴前に脱衣所や浴室を暖めましょう。

    2. 湯温は 41 度以下、湯に浸かる時間は 10 分までを目安にしましょう。

    3. 浴槽から急に立ち上がらないようにしましょう。

    4. 食後すぐの入浴や、飲酒後、医薬品服用後の入浴は避けましょう。

    5. 入浴する前に同居者に一声掛けておき、気にかけてもらえるようにしましょう。

    出典:消費者庁 冬季に多発する
    高齢者の入浴中の事故に御注意ください!より

    高齢者や基礎疾患を持っている方は、血圧はまめに測り、体調が悪いときには入浴を控える判断をすることも重要です。

    LIXIL減災プロジェクト
    “厳しい寒さ(ヒートショック)の減災を知る”を読んでみる

  • 夜間、トイレに行くとき

    トイレは家の北側に位置することが多く、また暖房器具がないことが多いため、リビングからトイレへ移動する際に、身震いするような寒さを感じるケースがよくあります。また、衣服を着脱するために冷えを感じやすく、ヒートショックのリスクが高まります。特に冬の時期の夜中や早朝は、温度差が極端になりがちなので注意が必要です。

    トイレ内に暖房器具を置くことや、おしりがヒヤッとしないよう暖房便座を導入すると快適さを保つことができます。LIXILのトイレには、「部屋暖房」という温風を吹き出し、トイレ空間を暖める機能がついた製品もラインナップされており、おすすめです。

    また、寒さで血圧が上がっているところに、排泄のためにいきむと さらに血圧上昇を引き起こす可能性があるので注意が必要です。また、立ち上がる際に血圧が低下し立ち眩みが起こることもあります。ゆっくり立ち上がるようにし、めまいがした際にとっさにつかまれるよう手すりを設置しておくと安心です。

窓を断熱することでヒートショックリスクを軽減

暖かい住まいで持病が改善した!

参考:(一社)日本建材・住宅設備産業協会 省エネルギー建材普及促進センター「省エネ建材で、快適な家、健康な家」より

ヒートショックのリスクを軽減させるには、部屋を暖かくすること、部屋間の温度差を小さくすることと共に、お部屋の中の熱を逃さないことも重要です。

「冬、暖房をつけていてもどうしても寒い!」という場合、それは熱が外へ流出してしまっていることが原因かもしれません。家の断熱性能が低い場合、最も熱が逃げてしまうのは開口部(窓や玄関ドアなど)といわれおり、日本建材・住宅設備産業協会の調べによると、 家の中の熱は開口部から58%流出していることが報告されています。

重ね着などの防寒対策や暖房器具を設置することにあわせて窓の断熱対策をすれば、暖房効率が高まり、お家全体を快適な温度に保ちやすくなります。

窓の断熱方法はこちら

ヒートショックから家族を守りましょう

ヒートショックは誰にでも起りうる現象です。ヒートショック対策を始めるにあたって、まずは、お部屋の各所に温度計を設置してみてはいかがでしょうか。寒いと感じる部屋の温度はどのくらいなのか知ることが大切です。そしてヒートショックから家族を守るために、できる限り家の中を暖かくし、部屋間の温度差を小さくする対策をしましょう。具体的には、脱衣所やトイレなど温度が低くなりやすい場所に暖房器具を設置することや、内窓を取り付けて熱を逃しにくくすることが有効です。

また、お風呂やトイレに行くときは家族に一声かけておき、同居者に意識してもらうようにすると安心です。若い人もヒートショックを起こす可能性があります。食事後・飲酒後・喫煙後の入浴は避けるようにしましょう。

LIXILでは、断熱性能の違いによる冬場の室内温度の違いを学んでいただけるショールーム「住まいスタジオ」を公開しています。暖かい住まいにすることで人の身体に良い影響があることもわかってきました。実際に体験していただくことで、ご自宅の断熱対策を考えるきっかけになるはずです。

新築や窓のリフォームを検討している方は、ぜひ一度お越しください。

「住まいスタジオ」の詳細を見る

暖かい住まいで持病が改善した!

※出典:伊香賀俊治、江口里佳、村上周三、岩前篤、星旦二ほか 健康維持がもたらす間接的便益(NEB)を考慮した住宅断熱の投資評価、日本建築学会環境系論文集 Vol.76 No.666 2011.8

暖かい住まいで血圧が下がった!

※出典:健康長寿住宅エビデンス取得委員会作成資料

暖かい住まいで夜間頻尿が減った!

※出典:一般社団法人日本サステナブル建築協会 断熱改修等による居住者の健康への影響調査 中間報告(第3回)資料より

暖かい住まいでコレステロールも!

※出典:一般社団法人日本サステナブル建築協会 断熱改修等による居住者の健康への影響調査 中間報告(第3回)資料より

※住宅の断熱性能、住宅の使用条件、気象条件、居住者の状況等により試験結果は異なります。

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