三ヶ島真由美さん 水と暮らしの関わりを
インタビュー!

わたしの仕事は
豊かな暮らしを整える
お手伝いだと思っています

三ヶ島真由美(みかしままゆみ)株式会社IRIDARE代表取締役

三ヶ島真由美さんインタビュー後編

家の中のデザインを考えることが大好きだった少女は、手探りで将来の進む道を決めてきました。インテリアのコーディネイトやデザインの仕事に携わって 28年。「良くも悪くも」と自身が語る数多くの経験は、三ヶ島真由美さんの力となり、暮らしに豊かさをもたらす空間を生み出しています。

インテリアコーディネーターとして中途採用された職場では、9月になってもその席は空かず、三ヶ島さんは不本意ながら不動産課に配属されることになった。興味のない業務に辟易としながら過ごす日々の中で、唯一、不動産業者を招待するパーティだけが、彼女の力を発揮できる場だった。名簿を見て驚くほどの暗記力でゲストの顔と名前を覚え、パーティ会場では初対面でも名前を呼んで接客。社内のパーティを円滑にとり持つ人材となる。「初めてお会いする年配の方と話す経験を頂き、鍛えられました」。今、年齢を問わずお客様とお話できるスキルはその時の賜物だと言う。

思い通りにいかない場で、最善を尽くす

次に配属されたリフォームの部署では、営業、設計、現場管理を任される。古いマンションのリノベーションや屋根の点検、シロアリの駆除まで、幅広い業務を担当。持ち前の好奇心から、「不便と思っていることも、お客様によって全く違うことや、自分の常識ではない常識があることも知りました」。新築より、リフォームのほうが難しいだけにやりがいがあると感じた。精一杯頑張り、2年が経つ頃には、顕著な営業成績を残すまでに。

思い通りにいかない場で、最善を尽くす イメージ1

思い通りにいかない場面でも最善を尽くす姿勢は、その後、満を持してインテリアコーディネーターを担当した部署でも、さらに難関を通り抜けて採用された次の会社のインテリアコーディネーターの業務でも、緩むことはない。特に子育てと両立しながらの働き方は尋常ではなかった。「新築マンションを担当していたので、同時に抱えるお客様が80人くらいいた時もありました」と当時の苦労話を交えて言う。

「水への意識が変わりました」

自宅を建てたのは18年前。優先したのはキッチンだと明言する。当時、3歳と0歳だった子供たちは、大学3年生と高校3年生に。彼らが成長する時間の中で、この場所が家の中心、家族の集まる場所だった。料理が好きでキッチンに立つことは自らの楽しみでもあり、ダイニング越しの外の景色も含めてプランを考えた。今は家族みんなで料理をする。インテリアのデザインもさることながら、置かれている雑貨や家電もよく計算されている。ダイニングに並んだソーダサーバー、スロージューサーは全てブラック。キッチンのチャコールとリンクして美しい統一感が生まれている。

「水への意識が変わりました」 イメージ1

最近取り付けたタッチレス浄水栓は、そんな空間に馴染むマットブラックを選択。以前は浄水栓と水道のふたつの蛇口が並んでいた。クロームの水栓金具特有のギラギラした存在感だったことに改めて気づいたと言う。「今は1本になったこともあるかと思いますが、マットブラックになってオープンキッチンの空間がすっきりしました」。黒は一見強い印象があるように思うが、エクステリアで手すりや窓枠に使った黒が、フレームとなって景色を切り取るのではなく、目の錯覚のようにその存在が消えるという現象と共通しているのかもしれないと。

気になる使い心地も上々の様子で、「食器洗剤、ハンドソープ、水栓が、すべてタッチレスになって、衛生面でもすごく良いです」。フルスペックタイプは「普通の水道と浄水を、流し続ける時とちょっと洗うときと、使い方によって切り替えられるのが良い」と付け加える。

「水への意識が変わりました」 イメージ2

「実は、コロナ禍で体を動かさなかったせいか、昨年尿管結石になり、この1年半で水への意識がすごく変わりました」と話す三ヶ島さん。もともと水分をあまりとらなかったが、医者から1日2.5リットルは飲むように言われ努力をしている。「サウナでも汗をかかないくらいだった」と苦笑いするが、水を飲むようになって代謝が上がったのだとか。「浄水はきれいな素直な水という味がします。金属や消毒の匂いがなくなって、全然違うと子供達も喜んでいますよ」。パスタを茹でたり、スープを作ったり、野菜を洗うなどにも浄水を使っている。

思いを引き出し、整えて、
ちょっと冒険させる

三ヶ島さんは3年半前に独立をして、自宅に仕事場を構えた。「以前お付き合いのあったお客様のご親戚を紹介していただいたのが、最初の仕事でした」。軽井沢の別荘を手がけ、そこから評判が広まり、その親戚や近所の方からの依頼が舞い込んできた。年齢層が高いのが特徴で、とにかくお客様の話に耳を傾け、その要望に寄り添うことをモットーにしている。人生の先輩である方々の話から自分が知識として得ることもある。その上で「私の仕事は、住む人の大切なものを引き出して、整理して空間にデザインすること。ちょっとワクワクしたり冒険してもらえるような、未来の暮らしをつくるお手伝いだと思っています」と。目指すのは「五感で気持ち良さを味わえる、豊かな暮らし」。彼女の人柄と仕事に取り組む姿勢、何より「家のデザインが大好き」という気持ちが、これまでのインテリアデザイナーとしての道を確立し、これからも支え、導いていくのだろう。

思いを引き出し、整えて、ちょっと冒険させる イメージ1
撮影/名和真紀子 取材・文/山根佐枝 取材日/2021年8月10日
土屋由美

三ヶ島真由美みかしままゆみ

株式会社IRIDARE代表取締役
デザイナー・二級建築士
大手ハウスメーカー、デザイン会社を経て独立。
個人邸を中心に、これまで2000件以上のインテリアデザイン、コーディネイトに携わり28年。主にマンション、戸建、別荘を手がけるほか、企業の企画等に参画するなど、多岐に渡って活躍。プライベートでは、大学生の息子、高校生の娘と5歳になる黒いラブラドールレトリバーの母。