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ものづくりLAB

―タイル名称統一100周年企画―
ツバメアーキテクツ×LIXILやきもの工房
ツバメとつくるタイル 第二回

ツバメのオフィスに芦澤さんが来た

3月末、東京・早稲田のツバメアーキテクツのオフィスに第2弾の試作サンプルとともに芦澤さんが来訪。★

汚れ防止のコーティングを検討する

初回の試作で確認した3種類のタイルの課題に対して、ツバメはさらに一歩試作を進めた。「といタイル」「水たまりタイル」は今後の案件などに向けて検討していくことにして、いったん採用を見送った。
「偶然性があらわれたタイルにしたい」という4人は、「みたらしタイル」にさまざまな可能性を感じていた。課題は素地の汚れ防止だ。とくにドーナツ店のキッチンでは必要だろう。「でも、柄の凹凸感とざらざらした素地のテクスチャーは残したいよね」と山道さん。芦澤さんの回答は「柄を施釉した上から全体に、素地の質感を残すくらいに軽く透明釉薬でコーティングすれば凹凸感も残せると思います」というものだった。そこで、サンプル第2弾はコーティングの透明釉薬の量を3段階にしてつくられた。化粧材料はツバメが常滑でのサンプルから2種類を選んだ。泥のみを掛け、マットな色と凹凸感が出るケースと、泥に多めの透明釉薬を混ぜ、透明感・光沢感が際立つケースである。コーティングすることでどんな反応が起きたのだろう?

流し掛けとディップ合わせ、12種類のサンプルがラインナップされた。微妙な違いを楽しみつつ「どれがいい感じ?」★

コーティングの量が少ないほうが、柄の凹凸感がはっきりするようだ。コーティングの量が多いほど、柄の部分と馴染み、凹凸感が弱まる傾向がある。★

泥の流し掛けに、透明釉薬を一番多くコーティングしたサンプル。汚れに最も対応できるが、素地と柄の質感の差異が少ない。★

防汚性とテクスチャーのせめぎあい

透明釉薬のコーティングは少量・中量・多量の3段階。透明釉薬が少量の場合は、防汚しつつテクスチャーを残すぎりぎりのバランス。中間量は少量の2倍で防汚性が上がる。多量は少量の4倍で防汚性はいちばん大きい。「少量コーティングの場合、素地がちょっとだけざらざらしていて、マットともつやつやともちがう質感がめずらしく、魅力的です。中間量の場合も柄の立体感はまだ残っているので、これもいいかもしれません。多量のコーティングはきらきらとしてきれいなんですけど、柄の凹凸感が少なくなりますね」と西川さんはまとめた。コーティングを採用するならば少量か中間量でという結論にいたった。

コーティングの比較サンプル。右の1個はコーティングなし。左列のディップ、中列の流し掛けは、すべて泥のみの化粧材料で少量のコーティングが施されている。素地のざらざら、凹凸感もコーティングなしとあまり変わらない。化粧の色はコーティングしたことで少し変化している。★

コーティングの比較サンプル。右の1個はコーティングなし。左列のディップ、中列の流し掛けは、すべては泥+多めの透明釉薬の化粧材料で、少量のコーティングが施されている。素地のざらざら感はあまり変わらないが、コーティングなしの右の1個に見られる、柄と素地の際に出ている滲みのような現象は、コーティングすると消えてしまう。ツバメはこの滲みがひときわかわいいと感じていた。★

かわいらしさに心惹かれた「水たまりタイル」。連続させると素地の周辺部の素地が気になることから第2弾のサンプルでは周辺まで釉薬を掛けてみた。色も茶色とブルーグレーなどを試験。今回の採用は見送ったが、ツバメアーキテクツの他のプロジェクトで採用し、現在制作中である。★

取材・文/清水潤  撮影/梶原敏英、白石ちえこ(★) イラストレーション/ニッパシヨシミツ 編集/アイシオール

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