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ものづくりLAB

―タイル名称統一100周年企画―
ツバメアーキテクツ×LIXILやきもの工房
ツバメとつくるタイル 最終回

場所ごとに、どのタイルをどう並べたの?

施工中の現場でエントランスまわりに設けたベンチの天端にタイルを張ることにした。どんな感じになるか置いてみている。左からドーナツ屋「洞洞」の佐藤七海店長、山道さん、鈴木さん、西川さん。(★)

ベンチが完成。「みたらしタイル」の「ディップ」の手法によるタイルを張った。模様の色合いが微妙に異なるのがいい感じ。色の差は焼成窯の中のわずかな温度差による。

屋外のベンチに楽しい模様と色味を選ぶ

現場が進むなか、道路からエントランスへの高低差の部分に擁壁をつくることにし、その上部に腰掛けられるように天端をタイル張りで仕上げた。外部の明るさのなかでも色味の違いが見て取れる濃い目の色で、模様のバリエーションが楽しい「ディップ」の手法のタイルを選んだ。外部なので雨掛りなどに考慮し、透明釉薬でコーティングしたタイプを使用。

施工中のドーナツ屋のメインカウンター。最初に入口付近のA工事(躯体工事)の部分の天端にロングサイズを張った。(★)

完成したメインカウンター。手前1列がA工事部分。ほかはB工事で造作し、タイルを張った。光に反射して表情が浮かび上がる。ドーナツの器も同じタイル。

メインカウンターは防汚を考慮しつつ、反射が美しいタイルを選択

「LIXILやきもの工房」から現場に8種類のバリエーションをもつオリジナルタイルが届いてから、「どこに何を張るか、タイルを見ながら、現場で決めていきました」と西川さん。L型のメインカウンターには透明感のある薄い色で、「流し掛け」の模様が映えるロングサイズを張った。「1階は半地下で暗いこともあり、光を奥まで呼び込むように、光沢のあるタイルを当初の想定より大きな面積に張ることにしました」。キッチンではドーナツを揚げて、グレーズやトッピングを施していく。油や液体がタイルの素地に染みこむのを防ぐ意味で、透明釉薬でコーティングが施されている。「流し掛け」の表情を横切ってカットすることで、ランダムに配列すると模様のずれがおもしろくなる。施工は流れの天地方向を揃える方針だけを斉藤タイル工業の職人さんに伝え、丁寧に張ってもらった。

2階のキッチンの壁面。タイル職人さんが施工中。腕とセンスが良く、ランダムな表情のディップのタイルを楽しんで張ってくれた。(★)

ショートサイズのタイルの目地がすっきりと仕上がった。水まわりなのでコーティングを施したタイプを選択した。方位、張る部位によって色味や反射率が変わって見える。

2階のキッチンの壁面にランダムな表情を選ぶ

窓から入る光を受けて、壁面にさまざまな模様が浮かび上がることから、色が薄めの「ディップ」のタイルを選択。手作業でつくられたタイルに現われた表情はいろいろで、模様の上下の方向に注意しながら張った。

内部の仕上げ工事が進むなかで、2階の腰壁に張るタイルを相談中。現場の環境で手元にあるタイルを見ながら判断するのは新鮮。「カタログから選ぶのとは、自由度と楽しさがまったく違う」と言う。(★)

2階のトイレのドアを挟んだ腰壁。濃いめの色の「ディップ」で、コーティングなしのタイルを選択した。

2階の腰壁に、色の変化がかわいいタイルを吟味して配列

油や水が掛からない腰壁には「ディップ」のコーティングしていないタイルを選んだ。濃い目の色のタイルは、試作のときよりも色に差が生まれた。「LIXILやきもの工房」の芦澤さんは「生産時は試作よりも多く焼くため、同じ窯のなかでも下段の方は黄色味が、上段のほうは微妙に温度が高くグレーがかっています」と解説。その色差がかわいいとツバメのメンバーたちには好評だ。並べ方は他の場所と異なり、設計者が色と表情のバランスを考えながらタイルを選び、組み合わせ、その配列のままに張ってもらった。

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