―タイル名称統一100周年企画―
ツバメアーキテクツ×LIXILやきもの工房ツバメとつくるタイル 第二回
東京・下北沢のBONUS TRACK近くに3階建てビルを設計中のツバメアーキテクツ。
1階ではドーナツ屋をオープンさせ、2、3階はツバメのオフィスになる。
これらの空間にオリジナルタイルを使おうというプロジェクトは、2022年1月から6月まで
数々のディスカッションと3回の試作を重ねた。タイルの「沼」で最後に辿りついたタイルとは?
再び常滑へ! 待望のサンプル第一弾ができた
最初の試作タイルを前にして、一気にテンションが上がるツバメアーキテクツ。右から山道拓人さん、鈴木志乃舞さん、「LIXILやきもの工房」の芦澤忠さん、西川日満里さん、千葉元生さん。
オーダー前のイメージ共有が肝心!
試作に向けて動き出した2022年1月。「昨年12月に訪ねた常滑では、まちの風景や、<INAXライブミュージアム>の見学から、タイルという素材がもつ特性や背景について理解を深めることができたので、現地での発見やインスピレーションを生かしてアイデアを考えました」と西川日満里さん。「4人で話し合う中で、共通して気になっていたテーマが<偶発性>です。タイルの試験サンプルの人の意図が介入しない良さや、花壇瓦が茶道具に転用されたことで偶然が左右する施釉の魅力が再発見された例などが、とても印象的でした。今回も実験したり、議論する中で気づく発見から、アイデアをふくらませていきたいと思います」。
まずは「素地の奥行きを工夫する」「押し出し成形を分割する」「釉薬の掛け方に偶然性をもたせる」という3つのアイデアから試作イメージを描き、常滑の「LIXILやきもの工房」とZOOMで共有。さらにこのイメージから「水たまりタイル」「といタイル」「みたらしタイル」について、メールと電話でやりとりし、チャレンジしたい施釉手法、色や形、テクスチャー、寸法などをまとめた。そして、2月末に最初のサンプルができあがった。4人は再び常滑へ。生まれたサンプルに目を輝かせつつ、魅力や課題などを語り合った。
3つのイメージシートとそれぞれの試作タイル
「素地の奥行きを工夫する」というアイデアから生まれた「水たまりタイル」。上/右上の絵画的なレリーフタイルから着想を得て、抽象的な形状の中に釉薬のたまる深さを段階的に設定した。下/ブルー系の釉薬の透明感に魅かれ、みんなで「かわいい!」と連呼。テストピースのような印象が好ましい一方で、連続させる使い方の場合は外周の白さが気になった。
「押し出し成形を分割する」というアイデアによる「雨とい」形の「といタイル」。上/「LIXILやきもの工房」で見た押し出し成型後に二つ割りにする製法から、円筒を分割することを考えた。両面使いの可能性も追求して、両面に施釉してみることになった。下/建築にもプロダクトにも多様に使えそうだが、緩やかな曲面をつくるには大きな径の円筒が必要となり、その円筒を押し出し成形する金型の製作が難しいことが課題に。
「釉薬の掛け方に偶然性をもたせる」というアイデアによる「みたらしタイル」。上/施釉の偶然の美しさをもつ花壇瓦を茶道具に転用した例や、タイルの色を試験するサンプルの意図しないかわいらしさからイメージ。下/化粧泥の掛け方で意外なおもしろさが生まれる可能性がある。左は流し掛け。右はディップ(浸ける)。掛かっていない素地の露出部分が汚れやすいことが課題に。