断熱等級とは?
新設された等級はどう違う?
等級が高い住宅の特徴も解説

2023.04

断熱等級とは?新設された等級はどう違う?等級が高い住宅の特徴も解説

住宅性能のなかでも近年、注目が集まっている「断熱性」。そんな断熱性の高さを表す「断熱等級」とはどのような指標なのでしょうか。2022年に新設された等級5・6・7の詳細や自宅の断熱等級の調べ方についても解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

断熱等級とは

正式名称は「断熱等性能等級」といい、住宅の断熱性能がどのくらいかを示します。国土交通省が制定した「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」において設けられました。

等級は1〜7の7段階あり、数字が大きいほど断熱性が高いことを示します。等級を満たすには、それぞれの基準を満たすように断熱材や開口部などの建材を選ぶ必要があります。

  • 2022年に3つの等級が新設

    断熱等級は1980年に「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」により定められた省エネ基準が反映されており、その内容は制定以降、改正が重ねられています。さらに近年では品確法で、2022年4月に等級5が、同年10月に等級6・7が新たに設けられました。
    これは、気候変動問題の解決に向けて世界規模で取り組んでいる「2050年カーボンニュートラル」という目標を実現するための取り組みのひとつです。住宅の断熱性能を上げることで排出する炭素量を減らし、将来的な脱炭素化を目指しています。

各断熱等級の違い

等級 施行 概要
等級7 2022年
10月
・「HEAT20」G3と概ね同等(※1)
・「平成28年 省エネ基準」よりも、暖冷房にかかる一次エネルギー消費量(※2)を概ね40%削減できる
等級6 ・「HEAT20」G2と概ね同等(※1)
・「平成28年 省エネ基準」よりも、暖冷房にかかる一次エネルギー消費量を概ね30%削減できる
等級5 2022年
4月
・「ZEH水準」の断熱基準と同等
等級4 2000年
4月
・「平成28年 省エネ基準」と同等
【等級5が新設される以前の最高等級】
等級3 ・「平成4年 省エネ基準」と同等
等級2 ・「昭和55年 省エネ基準」と同等
等級1 ・「昭和55年 省エネ基準」未満

※1…5地域の基準値はHEAT20の断熱性能水準とは異なります。地域区分についてはこちら
※2…一次エネルギー消費量とは、冷暖房機や家電、照明など、住宅で使用する各設備機器が消費するエネルギーの量を熱量に変換した合計値のこと。

2025年度以降は全ての新築住宅に等級4以上が義務化されるため、2022年3月まで最高等級だった等級4は実質、最低等級になることが予定されています。さらに、2030年には省エネ基準の水準が引き上げられ、断熱等級5が最低等級になる予定です。

  • ZEH(ゼッチ)水準とは

    ZEH水準とは、ZEH住宅とするための外皮の断熱性能と一次エネルギー消費量の基準を定めたものです。

    ZEHとは「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略のことです。年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した住宅を指します。具体的には、住宅の断熱性能の向上と高効率な設備システムの導入により、大幅な省エネルギーを実現したうえで、再生可能エネルギー等の導入を行います。

    住宅の外皮とは

    住宅の外皮とは、屋根、天井、壁、床、窓、ドアなど住宅の内外の境界になる部分のことです。外皮性能とは、この住宅の外皮の断熱性能や日射遮蔽性能等を表す用語で、外皮性能が高いほど、住宅内外で熱の出入りが起こりにくくなります。

  • HEAT20とは

    2009年発足の「一般社団法人20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」の略で、同時に同団体が設けた建築物の省エネルギーと室温の2つを指標とした外皮性能水準を指します。「豊かなくらし」実現のために、理想的な室内の温熱環境を目指して考案されました。ZEH水準よりも厳しい、G1・G2・G3の3段階の住宅外皮水準を制定しています。

    昔の家(昭和55年基準)>> 今の家(平成28年基準) >> これからの家(HEAT20 G2グレード) 昔の家(昭和55年基準)>> 今の家(平成28年基準) >> これからの家(HEAT20 G2グレード)

断熱等級を決定する要素

地域区分 1 2 3 4 5 6 7 8
等級7 UA 0.20 0.23 0.26
ηAC 3.0 2.8 2.7
等級6 UA 0.28 0.34 0.46
ηAC 3.0 2.8 2.7 5.1
等級5 UA 0.40 0.50 0.60
ηAC 3.0 2.8 2.7 6.7
等級4 UA 0.46 0.56 0.75 0.87
ηAC 3.0 2.8 2.7 6.7
等級3 UA 0.54 1.04 1.25 1.54 1.81
ηAC 4.0 3.8 4.0
等級2 UA 0.72 1.21 1.47 1.67 2.35
ηAC

断熱等級は「UA値」と「ηAC値」という2つの数値で決定されます。この2つの数値はどちらも住宅の外皮性能を構成する指標です。さらに、気候ごとに分けられた「地域区分」によって達成すべきUA値とηAC値の基準値が異なります。

  • 地域区分

    地域区分

    地域ごとの気候差を考慮して定められたのが「地域区分」です。気候条件に応じて国土を8つに区分し、区分ごとにUA値・ηAC値の基準値が設定されています。

  • UA(ユー・エー)値

    単位温度差当たりの「外皮総熱損失量」÷「外皮総面積」

    UA値は「外皮平均熱貫流率」のことで、室内と外気の熱の出入りのしやすさを示す指標です。住宅の外皮(外壁や天井、床、窓など)を通って内部から逃げる熱量を、外皮の単位面積当たりで算出した値のため、数字が大きいほど熱が出入りしやすいことを表します。つまりUA値が小さいほど住宅の断熱性は高まり、断熱等級も上がります。

  • ηAC(イータ・エー・シー)値

    単位日射強度当たりの「総日射熱取得量」÷
    「外皮総面積」×100

    ηAC値は「冷房期の平均日射熱取得率」のことで、太陽からの日射熱の室内への入りやすさを示す指標です。住宅の外皮を通って室内に侵入した日射熱の量を、外皮の単位面積当たりで算出した値のため、値が大きいほど熱が入りやすいことを表します。つまりηAC値が小さいほど遮熱性能が高まり、夏季の一次エネルギー消費量を削減できます。

断熱等級を確認する方法

断熱等級を確認したい場合は、住宅性能表示制度の活用を工務店や担当の建築士に相談しましょう。

注文住宅の場合、300u未満の新築住宅であれば、建築士から建築主(施主)へ省エネ基準(断熱等級4)の適否を説明するよう義務付けられています。省エネ基準を超える断熱性能(断熱等級5以上)は住宅性能表示制度を利用することで確認可能です。
確認した結果、希望の性能に達していない場合は、設計変更などを打ち合わせの早い段階から相談しましょう。

分譲住宅や中古住宅などの竣工後の建築物の場合は、不動産会社などに相談して住宅性能評価書を取得することで把握できるケースがあります。断熱等級を上げるためのリフォームを検討した方が良い場合もあるので、購入を決める前に確認しましょう。

現在の省エネ基準に満たない住宅は約90% ※2021年国土交通省 社会資本整備審議会 建築分科会 資料より

2021年の国土交通省の資料によると、日本の既存住宅において、その約90%が断熱等級3以下といわれています。十分な断熱対策がなされていない住宅は、電気代や住み心地だけでなく、健康や建物の劣化にも影響を及ぼす恐れがあります。
特に中古物件を購入する場合は必ず事前に断熱等級を確認し、リフォームの要不要を検討しましょう。

断熱等級が高い住宅の良いポイント

「断熱性能」の高さに基づいて分類される断熱等級ですが、断熱等級を高めることで具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。実際に暮らすうえで実感できるポイントを5つご紹介します。

  • 快適な室内環境になる

    室内の上下温度差の比較 吹き抜けがあってもあたたかい 室内の上下温度差の比較 吹き抜けがあってもあたたかい

    UA値、ηAC値がともに小さくなり、外気の影響を受けにくいため、冬は暖かく、夏は涼しい室内環境で過ごせます。エアコンを効率的に使用できるので、冬は暖まりづらく、夏は日差しの影響を受けやすいといわれる吹き抜けや高天井の間取りでも、快適な暖かさ・涼しさを保ちやすくなります。

    断熱性能と知的生産性の関係(マインドマップテストでの有効回答数比較) 部屋が寒いと仕事も勉強もはかどらない 断熱性能と知的生産性の関係(マインドマップテストでの有効回答数比較) 部屋が寒いと仕事も勉強もはかどらない

    また断熱性能はテレワークや勉強などの知的生産性にも影響を及ぼします。部屋が寒くて集中できなかったり、暖房の室温を高く設定しすぎて頭がぼーっとしてしまうなどの事態を防ぐためにも、断熱性能を高めることが大切です。

    断熱性能と知的生産性の関係の詳しい解説はこちら

  • 健康改善が期待できる

    住宅の高断熱化による健康改善効果

    高断熱化により、のどの痛み、手足の冷え、気管支喘息、アレルギー性皮膚炎等の症状が改善される傾向にあります。また、過活動膀胱症状の抑制や、室内活動時間の増加による生活習慣病、認知症のリスク軽減等にもつながります。室内環境を快適にすることで、健康にも良い影響があるのは非常に嬉しいポイントです。

    断熱性能と健康改善の関係の詳しい解説はこちら

  • ヒートショックのリスクの軽減につながる

    血圧上昇量の年齢別比較(暖房室から非暖房室に移動した際の血圧上昇量) 年配の方ほど血圧上昇量に大きな差が! 血圧上昇量の年齢別比較(暖房室から非暖房室に移動した際の血圧上昇量) 年配の方ほど血圧上昇量に大きな差が!

    住宅全体の温度を一定に保ちやすくなるので、ヒートショックのリスクを抑えられます。
    ヒートショックとは、部屋ごとの気温差などにより血圧や脈拍が急激に変動することで起こる、心臓や血管の疾患です。特に脱衣所や浴槽内での発生が多く、場合によっては心筋梗塞や脳卒中にもつながります。

    外気の影響を受けにくい住宅づくりを行うことで、ヒートショックの原因となる部屋ごとの気温差を緩和できます。

    ヒートショックの詳しい解説はこちら

  • 節電・節約できる

    年間の電気代 断熱アップが電気代を大幅に削減 年間の電気代 断熱アップが電気代を大幅に削減

    外気の温度の影響を受けにくく室内環境を一定に保ちやすくなるため、エアコンの設定温度を弱めにしても十分な暖かさ・涼しさを感じられるようになり、これにより節電・節約につながります。断熱等級を上げるためには初期コストがかかりますが、毎月発生する光熱費を抑えることが可能です。また節電は、電気をつくるために必要な化石燃料の使用量削減にもつながるので、地球環境にもやさしいといえます。

  • 新築・リフォーム費用について補助金を受けられる可能性がある

    都道府県や市町村によっては、断熱対策を施した住宅を建てることで補助金を受けられます。これは国が進める「2050年カーボンニュートラル」の実現に向けた取り組みの一環で、断熱対策を含む省エネ対策された住宅が対象です。
    補助金の種類はいくつかあり、「既存住宅における断熱リフォーム支援事業(環境省)」のようにリフォームに対する支援を行っている場合も。ただし条件や期限があるケースが多いので、事前に工務店や建築士と連携し、よく確認しましょう。

断熱等級が高い住宅の心配なポイント

断熱等級が高い住宅は住みやすい一方で、心配に感じるであろうポイントもいくつかあります。断熱対策を行う前に理解しておきましょう。

  • コスト(初期費用)が高くなる?

    断熱対策を施すためには、高い精度での設計や施工が求められるので、断熱対策をしない場合と比べて、コストが高くなる傾向にあります。また、断熱等級が高くなるにつれて必要な断熱材の種類や厚さなども変化するため、材料コストも大きくなると考えておきましょう。
    ただし、断熱対策された住宅は光熱費を節約できたり、補助金や税控除などの支援措置を受けられる場合もあるため、初期費用だけにとらわれず、毎月の出費も踏まえたうえで検討することが大切です。

  • 空気がこもりやすい?

    断熱対策を施した住宅は室内外の空気が出入りしにくいため、換気が悪くなると思われるかもしれません。換気ができていないと、エアコンによって温度調節された過ごしやすい空気だけでなく、ハウスダストも部屋にとどまってしまい、人によってはアレルギーや喘息の症状が出やすくなることも考えられます。
    しかし、今の住宅には換気システムの設置が義務付けられているので、換気口の定期的な掃除やメンテナンスを行い、正しく使用していれば問題はありません。

今後の新築は断熱等級6以上を検討しましょう

2025年以降、断熱等級3以下の新築は建てられなくなり、2022年3月まで最高等級だった等級4が実質の最低等級となることが予定されています。そこで、断熱等級4を目指せばよいかといえばそうではありません。2030年にはさらに省エネ基準の水準が引き上げられ、断熱等級5が最低等級になると見込まれています。
家族の健康維持や、毎日の快適性に加え、地球温暖化に伴う猛暑日の増加、将来的な建物の資産価値も考えると、今後、新築物件を建てる場合は、等級6以上である「HEAT20」G2レベルを目指した方がよいといえます。

LIXILの新築工法に関する詳細はこちら

すでにお住いの場合も断熱性は窓や壁、床、天井などの断熱改修で改善できます。なかでも窓は比較的簡単にリフォームできるので、新たに断熱対策を始めようと考えている方におすすめです。

LIXILで断熱改修を検討したい方はこちら

断熱等級を理解して
住む人にも地球にもやさしい住宅に

断熱等級は「暖冷房にかかる一次エネルギー消費量をどれだけ削減できるか」をもとに分類されており、等級が高くなるほど、住みやすく地球にやさしい住宅であることを示します。外気の影響を受けにくい構造にすることで、ヒートショックのリスク軽減、節電・節約につながるなど、住みやすい住宅には欠かせない対策です。

2050年の脱炭素化に向けて、2022年には新たに3つの等級が新設されるなど、住宅の断熱性能に求められる水準は、時代の変化に伴い高まっています。今後、新築を建てる予定の方は、住宅性能と費用のバランスをみながら住宅仕様を検討しましょう。

LIXILでは、断熱性能の違いによる室内温度の感じ方を体感できる体験型ショールーム「住まいStudio」をご用意しています。健康的で気持ちの良い家とはどんな家か、実際に体験していただけるので、断熱の効果を肌で感じられるはずです。東京・大阪に施設がございますので、ご予約のうえぜひお越しください。

住まいStudioについて詳しくはこちら

あなたの大切な人に伝えませんか?

  • Facebook
  • Facebook
  • LINE