耐震等級1〜3とは?
違いや調べ方など、
地震に強い家のポイントを解説

2023.08

耐震等級1〜3とは?違いや調べ方など、地震に強い家のポイントを解説

耐震等級は、地震による建物の倒壊リスクを知るための基準となるものです。耐震等級について理解することは、地震に強い家を選ぶための大切なポイントになります。等級1、2、3それぞれの違いや調べ方、耐震性を決める要素、耐震等級を上げる方法まで詳しく解説していきます。新築を検討している方やご自宅の耐震性が気になる方は、ぜひご覧ください。

耐震等級とは

耐震等級とは、建物の耐震性能を表す指標です。地震に対する建物の倒壊・損傷しにくさを基準に、耐震等級1、耐震等級2、耐震等級3の3つのレベルに分けられています。等級の数字が大きいほど耐震性能が高いことを表しており、各等級はそれぞれ、「耐震基準」と呼ばれる基準の1倍、1.25倍、1.5倍の地震の力に耐えられるよう定められています。

耐震等級は、2000年4月1日施行の「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づく「住宅性能表示制度(※)」の評価項目の一つです。

※住宅の性能を客観的に評価・表示するための共通ルールとして、国土交通大臣によって定められた制度です。住宅性能表示制度による評価を受けた住宅であれば、その性能について相互比較ができます。

  • 耐震基準と耐震等級の違い

    耐震基準とは地震による建物の安全性を確保するための最低基準です。国民の命や財産などを守る目的で、すべての建物に求められています。関東大震災の翌年1924年に初めて明文化されて以来、複数回にわたって見直しが行われてきました。直近では1995年の阪神・淡路大震災を受け、2000年に改正されています。

    耐震基準は住宅の耐震性能を表す最低基準として、耐震等級の基盤になっています。各住宅の性能を評価する際に使用されるのはあくまで耐震等級です。

    耐震・免震・制震の違い

    耐震等級における「耐震」と似た言葉に「免震」「制震」があります。耐震・免震・制震はすべて、地震から命や財産を守るための建物への措置を指しますが、それぞれ地震の揺れによる損傷・倒壊を防ぐための建物構造が異なります。

    耐震は、建物の強度を増すための建物構造です。揺れに耐えるために強度を上げ、地震に備えます。免震は建物と地盤を切り離すことで、地震の揺れを建物に伝えにくくする建物構造です。揺れそのものを軽減し、建物内・外の被害を最小限に抑えます。制震は特殊な装置を使用することで、地震の揺れを吸収する建物構造です。揺れを熱エネルギーに変換することで、吸収しています。

各耐震等級の基準

耐震等級1、耐震等級2、耐震等級3は、それぞれ「倒壊防止」「損傷防止」の二つの観点から基準が定められています。以下、それぞれの等級について解説します。

  • 耐震等級1【耐震性の最低基準】

    建築基準法で定められた「耐震基準」と同等の基準です。これから建物を建てる場合、最低でも耐震等級1を満たしていなければなりません。

    具体的には、「数百年に一度程度発生する規模の地震による力(東京における震度6強〜7相当)に対して、倒壊・崩壊しない」、「数十年に一度程度発生する規模の地震による力(東京における震度5強相当)に対して、損傷を生じない」程度を基準としています。

    注意すべきは、基準の範囲では損傷について許容されていると解釈できることです。地震が起こった後に補修が必要になったり、大きな損傷があった場合には建て替えが必要になることも考えられます。

  • 耐震等級2

    耐震等級1の1.25倍の耐震性があることを示します。災害時の避難所として使用される学校などの公共施設は、この基準を満たしていなければいけません。

    具体的には、「数百年に一度程度発生する規模の地震による力(東京における震度6強〜7相当)の1.25倍の力に対して、倒壊・崩壊しない」、「数十年に一度程度発生する規模の地震による力(東京における震度5強相当)の1.25倍の力に対して、損傷を生じない」程度が基準です。

  • 耐震等級3

    耐震等級1の1.5倍の耐震性があることを示します。現行の耐震性の最高基準です。警察署や消防署などは、この基準に当てはまるよう設計されています。

    「数百年に一度程度発生する規模の地震による力(東京における震度6強〜7相当)の1.5倍の力に対して、倒壊・崩壊しない」、「数十年に一度程度発生する規模の地震による力(東京における震度5強相当)の1.5倍の力に対して、損傷を生じない」程度が基準です。

    2016年4月に発生した熊本地震(最大震度7)では、住宅性能表示制度を利用した木造住宅のうち、耐震等級3に当てはまる建物に大きな損傷は見られなかったという調査結果も出ています。また住宅性能表示制度が創設されてからの木造建築の被害状況を比較しても、建築基準法レベル※で無被害だった建物が6割にとどまるのに対し、等級3では9割近くの建物が無被害でした。

    ※住宅性能表示未取得物件(平成12年6月〜)及び等級1のものを表します。

    (出典:国土交通省「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書

    各耐震等級の基準

    「耐震等級〇相当」とは

    耐震等級〇に相当する耐震性はあるが、正式な認定を受けていないものを指します。認定には、第三者機関「登録住宅性能評価機関」による住宅性能の評価が必要です。評価を受け認定された場合は、等級を証明する「住宅性能評価書」を取得できます。住宅性能評価書には住宅の性能に関する情報が記載されており、等級も明確に知ることが可能です。

耐震等級を考えるうえで知っておきたい特徴

住宅の耐震性は、安全な暮らしを確保するために重要な要素です。まずは、耐震等級についての基本的な捉え方を知っておきましょう。

  • 取得は必須ではない

    耐震等級を含む、住宅性能表示制度は任意の制度です。住宅性能表示制度に基づく、住宅性能評価書を取得していなくても、建築基準法を満たしていれば建物を建てることはできます。特に住宅性能表示制度が制定された2000年以前の建物は、証明書を取得していないケースがほとんどです。

  • 等級は自分で決められる

    住宅を建てる際は、施工主自身が希望の耐震等級を設定できます。ただし、建築基準法を満たす基準「耐震等級1」以上であることが前提です。より上級を目指すかどうかは、希望する予算や間取りなどと照らし合わせて自分で決められます。耐震等級を上げるうえでの注意点については、以下で解説していきます。

  • 等級を獲得することで地震保険料の割引を受けることができる

    耐震等級 割引率
    耐震等級3 50%
    耐震等級2 30%
    耐震等級1 10%

    耐震等級を取得することで、地震保険に対して最大50%もの割引を受けられます。ただし割引を受けるには、認定通知書、設計内容説明書など、住宅が各耐震等級を保有していることを示す書類の提出が必要です。詳しくは損害保険会社にご相談ください。

耐震等級を上げる際の注意点

耐震等級は、高いほど住宅の安全性を高めることにつながります。ただし、等級を上げる際にはいくつか注意点もあるため、しっかりと押さえておきましょう。

  • コストがかかることが多い

    等級を上げるためには、より高い耐震性が必要です。補強のために耐力壁や耐震金物を追加すると、その分コストがかかります。建物の面積等によってもコストは変化するため、建築会社と相談しましょう。地震保険料の割引も受けられる場合があるので、バランスをみて検討するとよいでしょう。

  • 間取りの自由度が下がる可能性がある

    耐震性を高めるにはさまざまな方法がありますが、その一つが建物内に壁や柱を増やす方法です。吹き抜けやLDKなどの広々とした間取りを実現させたい場合は、採用する建材を見直すなど重視する部分を明確にし、優先順位をつけてプランニングする必要があるでしょう。理想の住まいと安心・安全な暮らしのバランスを取ることが重要です。

耐震等級を決める主な要素4つ

耐震等級を決める主な要素は以下の4つです。それぞれのバランスによって各等級に分類されます。

  • 建物の重さ

    建物の重さは木造、鉄骨、鉄筋コンクリートなどの構造によって変化します。建物が重くなればなるほど、地震による揺れ幅や、その衝撃は大きくなり、逆に建物が軽ければ、その分小さくて済むと考えられるでしょう。特に瓦屋根のような重い屋根は地震の影響を受けやすいといえます。軽量屋根材金属サイディング(外壁材)を使用するなど、建物全体の重さを軽くすることが大切です。

  • 耐力壁や柱の数

    耐力壁とは、地震や暴風などによる水平方向からかかる力による変形に抵抗する壁を指します。通常の壁は柱、梁、土台で構成された四角形の枠ですが、耐力壁は補強材を斜めに渡した「筋交い」を入れたり、「構造用合板」を張ったりすることで強度を高めています。
    耐力壁に対し、柱は垂直方向にかかる力に耐えるためのものです。耐力壁や柱の数が多いほど建物は強固になるといえるでしょう。

  • 耐力壁の配置

    耐力壁は多ければよいというわけではなく、どのように配置するかも重要です。配置に偏りがあると、逆に耐震性を下げてしまう場合もあります。隅を固めるだけでなく、方角や向きに偏りなく配置することが必要です。また2階建ての場合は、1階と2階の耐力壁の位置を合わせるように設置すると、地震の際に2階にかかった力を1階の耐力壁に効率よく分散することができます。

  • 基礎・床の耐震性

    耐震性を上げるためには壁だけではなく、建物の基礎や床部分も重要です。
    基礎は建物にかかる力を地面に伝える役割があります。上の構造がどんなにしっかりしていてもこの基礎が脆弱な建物は壊れやすいです。また、床の強度も重要です。例えば吹き抜けを設けた場合など、床に必要な強度が足りていないと、地震の際に大きく変形する恐れがあります。
    基礎・床いずれも建築段階で補強することが大切です。

自宅の耐震等級・耐震性の調べ方

今お住まいの建物が、どのくらいの耐震性があるのか気になる方も多いでしょう。ここでは耐震等級の調べ方を解説します。

  • 住宅性能評価書を確認する

    既に住宅性能評価書を取得している場合は、そちらを確認することで耐震等級を知ることができます。品確法が制定された2000年以降に建てられた建物は、すでに住宅性能評価書を取得している可能性があるため、管理会社や不動産業者、建築会社などに問い合わせましょう。一方、2000年以前に建てられた建物の場合、そもそも建築時にまだ住宅性能表示制度がないため、評価書を取得していない可能性が高いです。その場合、住宅性能の評価を受けるステップから行う必要があります。

  • 第三者機関より住宅性能の評価を受ける

    管理会社や不動産会社に問い合わせても評価書がなかった、そもそも取得していなかったという場合は、国土交通省が認定した第三者機関「登録住宅性能評価機関」により評価を受けることで耐震等級を調べられます。
    評価書の取得にかかる費用はおおよそ10〜20万円ほどです。依頼する機関によって多少異なるので、事前に価格を確認したうえでどこに依頼するか決めましょう。

  • 耐震診断を受ける

    住宅性能評価とは異なりますが、建築基準法に基づく耐震性能のみを調査したい場合は、専門家による耐震診断を受けましょう。耐震診断には「自分でセルフチェックを行う」、「専門家による一般診断を依頼する」、「補強工事を前提とした精密診断を行う」という3つの方法があります。

    優先度としては、専門家に依頼する前に、まずセルフチェックをしてみましょう。住宅のどのような部分に地震に対する強さ・弱さのポイントがあるかのイメージがつきやすくなるはずです。

    耐震自己診断を行う

    LIXILではリフォームを検討されているお施主様向けに、既存の建物を断熱性能・耐震性能・劣化状況の観点から調査する「お住まい診断」を実施しています。ぜひお気軽にご相談ください。

    LIXILのお住まい診断について詳しくはこちら

  • 「既存不適格建築物」にご注意!

    既存不適格建築物とは、施工当時は建築基準法の基準を満たしていたものの、法改正により、現行法に対して不適格な部分が生じた建築物のことです。法律では特例により、既存不適格建築物は現行の規定の適用を除外すると定められていますが、建て替えを行う際は、現状の法基準を満たす形に修正する必要があります。

    2000年の耐震基準改正よりも前に建てられた住宅にお住まいの方は、現在の耐震基準および耐震等級1も満たしていない可能性があります。セルフチェックで済まさず、必ずプロによる耐震診断を受けましょう。

耐震等級を上げたいときの依頼方法

地震に強い家を建てたい、今の耐震等級では心配という場合、等級を上げることもできます。「新築注文住宅の場合」「建売・中古住宅、既存住宅の場合」をケース別に解説します。

  • 【新築注文住宅の場合】設計時に希望の耐震等級を伝える

    新築注文住宅の場合は、設計時に希望の耐震等級を伝えることが可能です。事前にどの等級にするかを決め、しっかりと要望を伝えましょう。耐震性を上げるためには、コストがかかる、間取りの自由度が制限されるなどの注意点もあります。住宅を建てるにあたっての優先順位や希望の条件などを洗い出すことで、自分に合った等級が決まってくるでしょう。

    LIXILが提供する耐震等級3相当の家づくりの詳細はこちら

  • 【建売・中古住宅、既存住宅の場合】耐震性を強化する

    建売・中古住宅、既存住宅の場合、まずは自宅の耐震性を確認しましょう。耐震性を知るためには、住宅性能評価書を確認・取得したり、耐震診断を受ける必要があります。現在の等級を知ったうえで、さらに等級を上げる場合は、希望の等級を決め、その基準を満たす内容のリフォームを行いましょう。

    自宅でできる地震対策の詳しい解説はこちら

耐震等級は安全な暮らしに大切な要素

耐震等級は建物の耐震性を表す指標であり、1〜3に分けられます。等級を決めるポイントは建物の重さや耐力壁などの数、配置、床の強度などです。自宅の耐震性が気になる場合は、住宅を購入した不動産会社や建築会社などに相談して「住宅性能評価書」を取得するか、専門家に依頼して耐震診断を受けましょう。耐震性の高い住宅にするためには、希望の等級に合わせた新築を建てる、希望の等級に合わせてリフォームするなどの方法があります。

地震に備え、耐震について考えることは、大切な自宅・家族を守ることにつながるでしょう。もちろん地震だけでなく、暮らしの中にはさまざまなリスクが潜んでいます。自宅や家族を守り、豊かな暮らしを送るために、まずはどのようなリスクがあるのか、どのような対策があるのかを知ることが大切です。

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