蔭山充洋さん 小麦から作るパン屋「充麦」オーナー 素材を大切にしたパンに感銘を受けて小麦作りを始めました

素材を大切にした
パンに感銘を受けて
小麦作りを始めました

蔭山充洋さんパン屋「充麦」オーナー

蔭山充洋さんインタビュー前編

材料となる小麦を、種をまくところから作る
三浦のパン屋さん「充麦(みつむぎ)」。
ひと口で、味の違いに驚かされてしまうパンの秘密は、
もとDJというユニークな経歴をもつオーナー、蔭山充洋さんの素材、そして「食」に対する真摯な思いにありました。

三浦半島、国道134号線。畑の風景を横目に車を走らせると、古い木枠のガラス戸の店、「充麦」がある。2008年にオープン。三浦半島で食や文化に感度の高い住人が多いと言われる、鎌倉、逗子、葉山で「充麦のパン」といえば、「ははーん」と納得の声が上がり、誰もがその味を思い出して口元が緩んでしまう。ここは世界でもあまり類を見ない「材料の小麦を種から育てる」パンの店。営んでいるのは、横須賀で生まれ育った蔭山充洋さんだ。

「ライブ」で見て味わうパンから伝わるもの

「ライブ」で見て味わうパンから伝わるもの

店先には4畳ほどの売り場があり、その奥がオープンなパン工房。戸を開けて一歩入ると、目の前には焼きたてのパンが並び、スピーカーからは大音量のブラックミュージックが流れる。ビートに合わせて職人がテキパキと仕事をしているのを見ると、パンを選ぶ気持ちがいっそう高まる。蔭山さんはこの場を「ライブハウス」だと言う。「オーケストラを見ながら演奏を聞くように、パンを作るのを見ながら味わってもらえれば、より伝わるものがあるのではないか」と思っている。

「充麦」のパンの魅力の源は、蔭山さんの物に向き合う哲学にあるらしい。音楽の専門学校に通っていた学生時代、横須賀ドブ板通りの米兵相手の店でバーテンダーを務め、DJとしても活動していた。その後「昼間に働きたい」、「モノを作るのが好き」という理由でパン屋での修業、そしてヨーロッパ放浪の旅を経て、小麦作りを始めてしまったという。

フランスで出会ったパン作りに感銘を受けて

フランスで出会ったパン作りに感銘を受けて

「もともとパン屋をやろうとは思っていなかったんです。修業はしたものの、世の中にパン屋は山ほどあって、自分がやる必要はないのかなと思っていました」。じゃあ何をやろうか?と思いつつ旅に出た。ドイツ、スイス、イタリアと巡り、フランス、アヴィニオンで市場へ行く途中の道で迷っていると、日本人の年配の男性が声をかけきた。聞けば、東京でバスの運転手を早期退職し、コルドンブルーで料理の勉強をしたのちに、フランスでお寿司屋さんをやっているという異色のキャリアの持ち主。蔭山さんが自らの話をするうちに、何かを感じ取ったのか「知り合いがパン屋をやっているから」と田舎道を1時間半も運転して1軒の店へと案内してくれた。

フランスで出会ったパン作りに感銘を受けて

「そこのパンは隣の農家が作った小麦を製粉して焼いていて、ただ美味しいというよりも、単純に『すごいなぁ、そうやって出来ているんだ!』とワクワクしました」。素材を大切にしたパン作りに感銘を受け、日本に戻りすぐに小麦作りに取り掛かる。

小麦に導かれて、パン屋を始めた!

小麦に導かれて、パン屋を始めた!

帰国した10月は、11月の小麦の種まきにギリギリ間に合う時期。幸い妻の実家が農家だったため使っていない畑を借りることができた。近隣では小麦を作る農家がなく、神奈川県の農業普及部や農業技術センターに相談しつつ、一からの小麦作りが始まったのが2005年晩秋。まだパン屋をやるつもりではなく、小麦を作ることだけを追いかけていた蔭山さん。翌年6月には、300kgの小麦を収穫することができた。けれどその先に思わぬ落とし穴が。

小麦に導かれて、パン屋を始めた!

「収穫した小麦は、乾燥機にかけて脱穀したら穀物タンクで保存しなくてはなりません。何も知らずにビニール袋に入れて軒下に置いておいたら、みるみるカビてほとんどをダメにしてしまったんです」。脱穀したあとの小麦の特性を知らなかったと反省し、次のシーズンは穀物タンクを買い、保存スペースも備え、作付け面積も増やすことで収穫量は800kgに。種として使う50kgを残しても相当な小麦が保存できる。「製粉機も買ったのですが、小麦粉として売る販路もないし、どうしようもなくて、やっぱりパン屋をやるか」と、小麦に導かれるように決意をした。

撮影/名和真紀子 取材・文/山根佐枝 
取材日/2019年5月27日

蔭山充洋(かげやま みつひろ)

蔭山充洋(かげやま みつひろ)

1975年 横須賀生まれ。
高校を卒業後、音楽の専門学校に通いながら横須賀の飲食店でバーテンダーとして勤務。DJとしても活躍。その後、パン屋で修行をしたのちに、ヨーロッパをバックパックで旅する。2005年より小麦を育て始め、2008年に三浦パン屋「充麦」をオープン。収穫した小麦はパンの素材として使うほか、横須賀ビールや地元の製麺所に卸している。パンの販売は、各地の朝市やイベントなどへの出店もしている。

三浦パン屋 充麦

神奈川県三浦市初声入江54-2
TEL 046-854-5532
7:00〜16:00 ※売り切れ次第、終了
火、水定休
http://mitsumugi.web.fc2.com/

全国のリクシルのショールームで、
実際にご覧いただけます。

リクシルのショールームは、買う予定がなくても、プランが未定でも、
お子さま連れでも見学可能です。
納得いくまで何度でも、自由に見学してください。

浄水器内蔵キッチン水栓 トップページ