空間を一変する手洗器のチカラ

空間を一変する
手洗器のチカラ

手洗器が空間を一変する。「そんな大げさな」と思われるかも知れません。でもお洒落なレストランやホテルなどで、「これいいな」と思う手洗器に出会うことがありませんか?そんなアイテムは驚くほどトイレ空間のクオリティを上げてくれているのです。最近では、自宅のトイレもお洒落に仕立てたいと思われる方が、タンクレストイレを選ばれ、それと一緒にゆったりとした手洗器をご要望される方が増えています。だから、より上質なトイレ空間を実現する美しい質感のある手洗器が必要、とINAXは考えました。そこで開発に着手したのがワイド手洗器。薄く張りのある端正な製品を世に送り出すまでの数々の知恵と工夫をご紹介します。

日本の美を感じる仕掛け

「1:√2」、これはなんの数字かご存知でしょうか。日本で古来から寺社建築や日本絵画に用いられ、日本人が美しいと感じると言われている「白銀比」という比率です。ワイド手洗器ではその縦横比をこれになぞらえています。ほかにも、薄く張りのあるエッジの繊細さや、盃や器をイメージさせる高台と呼ばれる脚元部分も表現され、日本の美を感じさせる仕掛けがいくつも込められています。また丸でも四角でもない、ゆったりと穏やかなシェイプは、INAXらしさを表すカタチとして、タンクレストイレにぴったりと響き合って、毎日の暮らしに豊かさをもたらしてくれるデザインです。この美しいデザインをお客さまにお届けするためには、実は原材料から作り方まで、この手洗器だけのためのセラミック生産の技術が必要だったのです。

日本の美を感じる仕掛け

挑んだのは薄さと強さの両立

ワイド手洗器を作る難しさの一つは、「薄く張りのあるエッジ」部分にあります。洗練を感じさせる「薄さ」に対し、普段使いにしっかりと耐える「強さ」を備える必要があり、その両立に挑んだのです。課題となったのがカタチを作るための原材料、泥しょうの開発でした。これまでにも薄くつくられた手洗器はありましたが、ついうっかりモノを落としたときの衝撃や長くご使用いただいた時の劣化には不安があるものでした。この弱点の克服のために、焼き上げる際に変形する要因を見つけ、取り除きながら割れにくい強度を持つ材料を開発。そこにたどり着くには、これまでの経験や知見を持ってしても約3年の時間を費やし、試作は実に800回にもおよびました。

挑んだのは薄さと強さの両立

炎をあやつる技から生まれる美

焼きものである「ワイド手洗器」は、1200度を超える炎で20時間以上をかけて焼かれることでその姿になります。しかもこの高温の中の少しのズレが、形状や強度に影響をしてしまうため細心の注意と知見が必要になります。まず、窯の中でも最適な温度帯となっているところだけに積み込むこと。そのため、人の手でていねいに窯入れされていきます。また、全体に丸みを帯びた形状は、お皿同様に平らに置いて焼かなければなりません。窯の中で異物がつかないように、被いをかぶせるという配慮もなされています。
さらにしっかりと焼かれて強度も出ているか、一つひとつ検査をします。その時製品を傷つけるわけにはいかないため、サンプルピースというものを同じ窯で焼き、その組成をプロの目で見ることで、製品の出来栄えを確かめています。まさに炎を知りつくしたセラミック技術あってこその、お客さまの暮らしを豊かにする、美しく強いカタチなのです。

人の手によるものづくり

衛生陶器も皿や壺などと同じ焼きものです。陶芸家の手づくりのものであれば、高価な陶芸品を思い浮かべられるでしょう。工業製品では今や安定した生産を行うためにコンピュータや機械による製造が欠かせませんが、高品質な手洗器は、まだまだ人の手がかかってこそ製品になります。そこには熟練の職人技、70年以上に渡って磨かれてきたINAXの熱意と研鑽が込められているのです。日本の美を日々の暮らしに感じられるようなトイレ空間を届けたいという想いから始まり、「人の手によるものづくり」から生まれた上質なワイド手洗器にぜひ一度、触れてみてください。

人の手によるものづくり