新スパージュ開発に隠されたストーリー
2021年5月、スパージュが生まれ変わりました。“湯を愉しむ。時を味わう。”という初代からのコンセプトを引き継ぎながら、開発者たちは何を目指したのか。そこにはバスルームの概念を覆すというストーリーが隠されていました。
7年ぶりにスパージュをモデルチェンジするにあたり、プロジェクトチームは改めて“入浴の価値とは何か?”を問いただすところからスタートしました。たどり着いたのは、“お湯を愉しんでリラックスしてほしい”というシンプルな想い。「実は初期のスパージュとコンセプトは変わっていないんですよね」と、プロジェクトチームのメンバーは笑顔を見せます。
初代スパージュも、節水や断熱といった機能性を高めつつ、“お風呂に入って気持ちいい”を求めて開発されました。そして今回、「“気持ちいい”に対して、まだまだ取り組めることがあるのではないか。お風呂場を“当たり前な場所”から“価値のある空間”に改めて仕立て直すことで、賛同を得られるのではないだろうか? ぐるっと悩んだ結果、初代スパージュと同じく“湯を愉しむ。時を味わう。”をさらに前進させるという答えにたどり着いたのです」
体を洗うお風呂場から、人生を豊かに潤すバスルームへ。自宅という日常の中で、お風呂場をついつい行きたくなるような、気持ちを整えてくれる部屋に進化させることが、今回のミッションです。そのためにプロジェクトチームは、バスルームという空間そのものを見つめ直しました。「お湯を主役として考えた場合、空間が背景として存在します。引き立たせたいのは”お湯”ですから、“背景”が主張しすぎるとノイズになってしまう。背景に求めたのは、緊張感の抑制と自然の中に溶け込むような感じですね」
リビングや寝室を思い浮かべると、くつろぎを目的とした空間に、ピカピカとした鏡面性の高い建材を用いることは少ないと思います。今回、プロジェクトチームが求めたバスルームの理想形も同じだったのです。「素材のテクスチャー表現を追求し、凹凸のあるセラミック素材の壁やフローリングのような木目調の床、ファブリックを思わせる浴槽エプロンなど、落ち着ける空間を目指しました」
バスルームを視覚的な効果だけで仕立て直したのでは、まだ終わりとは言えません。“より気持ちいいと感じていただくために、機能面の価値とあわせてアプローチしたい”。そんな想いから取り組んだのが、初代スパージュで好評を得ていたアクアフィール“肩湯”の進化でした。
今回、新たにマッサージ効果のある水流を組み込んだ“肩ほぐし湯”“腰ほぐし湯”を開発。「この水流の設定が難しかった」と、プロジェクトチームのメンバーは当時を振り返りました。「例えばマッサージを例に挙げると、指圧のような強めを好む方、オイルマッサージのようなやさしいタッチを好む方など、人の好みはさまざまです。水流も同じなんですね」
そこでアドバイザーとして保健医療学博士に試作段階から参画いただき、水の触感を数値化。肩に当たってからきちんと流れるといった“水の技術”をどんどん伸ばしていきました。「今回のスパージュはお湯の出方にこだわったこともあり、通常の開発期間の3倍かかりました。その出来栄えに、きっとご満足いただけると自負しています」
スパージュのある、おうち時間。休日の午後、まるで温泉やスパに行くかのように、お風呂タイムをたっぷりととる。入浴へ思いを馳せながらドリンク、アロマ、書籍などを吟味。時間をかけて湯を愉しみ、お風呂上りには温かな身体をやさしくケア。そんな極上のリラックスタイム、新たな入浴の価値を実感していただくために、プロジェクトチームはスパージュを生まれ変わらせたのです。
「スパージュをご購入いただいたお客さまから、“ついつい長湯するようになった”などと聞くと開発者冥利に尽きますね。具体的にどこをというよりも、空間としてスパージュの良さを感じてほしい。ゆっくりと考え事をしたり、思いにふけったりと、特別な時間をスパージュとともに過ごしていただければ嬉しく思います」